誰にも認めてもらえない君へのお礼の言葉

ありがとう、頑張ってくれて。

中小企業に新卒で入って頑張ろうと息巻いていた君は入って早々に全上司から無視されるということをされているな。二時間もあれば読み終わるマニュアルを渡されて一週間以上放置されたっけ。
自分に何か問題があるのかと自問自答をしていたが、どうやらそこの支店長は新人クラッシャーとして有名だったらしい。より良い仕事を提案したら、「新人のお前が何言っている?次、同じことをやったら始末書を書かせる」と言われたこともあって心が砕けそうになったこともあったな。

途中から直属の上司になった人は頼れる人だったな。頑張れば頑張った分褒めてくれたし、至らないところは叱ってくれた。毎日、死ねって言われていたっけ。頑張ってデータを出したら、翌日までに全店舗のデータを作れって言われたな。誰もいない事務所で2時か3時まで必死こいて仕事してたこともあったっけ。評価には一切関わらなかったけど、頑張ったよ君は。

営業の研修の時は何も教わらないまま放り出されて仕事を何も見てもらえないまま、成果が上がらない日が続いたな。そんな日が何週間か続いたらあの新人クラッシャーに「お前、ダメすぎない?」と言われたっけ。そうそう、その時まで目標も何もなくただ放置されていたんだったな。あれは辛いよ、大変さ。でも、頑張ったよ君は。

工場研修の時はまだ楽だったよな。放置されていたけど手は動かすことができた。パートのおばちゃんはみんな優しかったしあの時は楽しかったな。将来の不安に押しつぶされそうだったのはご愛嬌だ。なんの研修もなしに店舗にも立たされたっけ。あれはひどかったな。きつい仕事だったよ。

毎月のレポートを出すのは楽しかったな。ビジネス書を読んでレポートを書く指示が出されたんだ。できるだけ精神論の本じゃなくて、統計的なことが書かれていたり根拠があるような本を読んで必死こいて書いていたな。新人クラッシャーは全部無視していたけど。

なあ、新卒一年目の君。大変だったな、本当に。
残念ながら翌年からも全く状況は改善しないんだ。状況が少しだけ良くなるのは、だいぶ先の話だ。それまでは将来の不安に押しつぶされそうになりながら、恐怖と戦うだけの日々さ。今、君が抱えている悩みさ。大丈夫なのか俺は?と思いながら低年収でスキルもろくに身に付けることができない環境で危機感だけが募っていく毎日だよ。

でもな、君は頑張っているよ。

努力してるよ。

ありがとうな。

今は俺もなんとかやっているよ。
将来の不安はいまだに消えないし、このままでいいのかと潰れそうになる時はたくさんあるよ。中年になったのにな。

でも、なんとかやれているんだ。周りともうまくやっていけてるんだ。
色々な事情があって出世コースからは外れているけれども、それはそれと受け入れられるぐらいの仕事のスキルは身についてきているよ。

ありがとうな、あの時に君が頑張ってくれたからなんだ。
君が諦めなかったからなんだ。今の俺からは考えられないよ。
「大丈夫」なんて言葉をかけられるほどまだ安定はしてないからさ。
俺は君にありがとうを何回でも伝えるよ。

ありがとう。

なあ、辛いことがたくさんあるよな今は。
それでも朝起きて仕事に行ってくれたよな。
知っているよ、その後仕事をサボってずっと車の中で寝てる時もあること。
ひょっとしたらちょっとしたうつ病かもしれないな。
でも、それでもドロップアウトしないようになんとか頑張っていたな。

ありがとう。

何回でも言うさ。
戦っているんだよ君は。
勝てない戦いに何回も何回も毎朝、出かけていくんだ。
辛いよな。
世の中を見れば勝利しているやつらの声がたくさん聞こえる。自分がとても惨めに思える。それでも毎日、戦いに行くんだもの。

ありがとうな、本当にありがとう。

今はなんとかやれているんだ。
全部、君のおかげなんだ。
無駄なことばかりやっている。何も身にならない日々が続いている。そんなふうに思っているよな、わかるよ。でも、君が頑張ってくれたから今の俺があるんだよ。君が頑張れていないと思っていても、俺から見たら君は頑張っているよ。

ありがとう。

成果が出ていないよな。新卒一年目で華々しい活躍をしている同期もいるよな。劣等感に押し潰されそうになっている。
よく、仕事してくれている。続けてくれている。それだけで、もう俺は君に感謝の言葉しか出やしないよ。そのお陰で今の俺があるんだもの。

ありがとうな、頑張ってくれて。

ありがとうな、生きていてくれて。

ありがとうな。




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