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【新作】灯点し頃 20200902


小さな森に、妖精が住んでいます。
彼女はひとり、小さな小屋で暮らしていました。

ある日、夕焼けを見ました。
森で暮らしていれば、毎日夕焼けは目にします。
けれどその日の色は、彼女の心を打つものでした。
太陽は森の向こうに沈んでいて、橙色がほんのり空に残っています。
真上の空は濃紺を濃くし始めていました。
その二色の間は、綺麗な紫色をしていました。

彼女は思いました。
自分はひとりで暮らしているけれど、今この瞬間はわたししかこの場所からこの景色を見ていないけれど、美しさを残しておくことはできないかしら。

彼女は妖精です。
ほんの少しの魔法が使えました。
空の色を集めるように、両手を持ち上げました。
手のひらを空に向けて、ふんわりと色を集めるように。
妖精の粉がきらきらと光り、彼女の頭上で渦巻き始めました。

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3色の空の色に、妖精の粉がとじこめられた耳飾りが生まれました。空の色によく似たきれいな飾りが揺れています。

ゆらゆら、きらきら。

『灯点し頃』
彼女の見惚れた景色をお届けします。



20200902 一重梅 ichica

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