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振れ幅

 大きな事柄を成し遂げる人は、大抵、ぼんやり生きていたら絶対味わわないであろう、ひどく過酷な時期を生き抜いていたりする。

 そういう人に出会うと、どこか恐ろしくもあり、羨ましくもあった。結局、すごくいいことあったんだから、いいじゃん!さすがだね!そんな嬉しいこと味わってみたいわ、と。

 一方、私は基本的に凡人なので、普段から振れ幅は大きくない。
 
 …ところが。

 今年は、憧れの人のミュージカルを観るべく韓国に行くこと2回。海外自体が10年ぶり以上だったし、近いとはいえ、過去の私の人生で、年に2回も海外に行くことなんてあり得なかった。それはもちろん、素晴らしく感動の連続で、最高の旅だった。こういうことが自分のコップを満たすのか、と初めて分かった気がした。

 そのあとだ。
 仕事で、日々のルーティン以外に、3年に一度のとある重要な計画策定という大仕事をすることになった。慣れない大量の数字に悪戦苦闘。
 それに絡み、次から次へと様々な仕事が降ってきて、今はかつてないボリュームの業務が私を支配していた。
 
 やむなく、どうにかこうにかやっている最中、今度は娘がインフルエンザになり、休みを取ったことで、さらに時間がないという追い打ち。

 で、やっと出勤してみると、来年早々に会計検査が来るかも、との知らせがあり、急遽調書を出さなくてはならなくなったのが先週のことだ。日がわずかしかない。

 もう半分泣きべそをかいていた。

 そして今朝。課長が『ちょっと』と私を手招きするので、相談室へ向かった。
 すると、課長がこう言った。
『◯◯さんが、辞めるそうです』。

 え??

 私の業務のあれこれをたくさんフォローしてくれていたパートナーの女性が、あとひと月ほどで辞めるというのだ!

 青天の霹靂とは、まさにこのこと。
 
 一瞬、悲しみを通り越して、なぜか笑えてきた。
 辞める理由は、彼女的に今後の所得や今の年齢のことを考え、転職がベストだと考えたからとのこと。薄々分かっていた。しかし、まさかそれが今とは。
 
 じわじわくる、今後への恐怖と不安。

 私は何をした??

 旅行行きすぎた?いい思いしすぎたのか?

 コップを満たしたかっただけなのに???

 そう、凡人にも振り幅は存在していたようなのだ。

 上にも下にも振れたところで、さて次は何が来るのだろう。もう何も考えられない。考えたくない。

 それでも今日は、ようやくnoteを書こうと思い立ち、結局出てきたのは、こんな話で。箸休めにもなりゃしない。
 
 とはいえ、今の私はなかなかどうして満たされないが、これを書ききった時だけは、他では得られない達成感がある。
 それを受け止めてくれるnoteさん、そして読んてくださるみなさんには、本当に感謝しかない。

 ‘’平凡に徹する人こそ非凡である‘’
 いつかの養老孟司さんがおっしゃっていたっけ。
 
 やっぱり、振り幅の大きい人をうらやましいだなんて、もう言わないよ、絶対。

 


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