そこに愛があるから
最近、書店が減少していると聞く。でも、私は書店という空間が大好きだ。何か落ち込んでいる時もやる気に溢れている時も、そこに書店があり、時間が許せば立ち寄って、なんとなく眺めた。リラックスできて、思いもしない本に出会えたりするのがいい。
しかし、今、私が住む街には残念なことに書店がない。幸い図書館が近いので活用しているが、それでも少し違う。
そんな折に、友人から隣町の書店を紹介されたので行ってみた。
みれば、3坪あるかどうかの縦長の細長い小さな古そうなお店で、どこにいても店主に見られている感じがある。
本棚は、長辺の両壁側と、そのスペースの真ん中に一つ。真ん中の本棚をぐるりと廻れるようになっているのだが、ひと一人通るのが精一杯の狭さ。奥では60代半ば風な男性の店主が静かに見守っている。その日、店内に流れていた謎の民族系の音楽は、なぜか音飛びがすごかった。
どうしよう。何か買わないといけないかな…。
と思いあぐねたところで、ふと、ラジオの韓国語のテキストが欲しかったことを思い出し、あるかどうか尋ねてみた。
すると、あいにくその日はなかったが、店主は前のめりで『すぐ入ります。次の週末には!取り寄せますか?』と目を輝かせてやる気満々。
お、おぉ。と少し気圧されつつ、ちょうど距離も近い(と言っても車でしか行けない)ことだし、注文することにした。
以来、私は毎月1回はそのお店に立ち寄り、韓国語テキストを購入するようになった。
というのも、店主が必ず私のためにテキストを取っておいてくださっているからだ。お店に行くと、もう有無をいわさず、店主の後ろの棚からすっと出てくる。
時々、大きな街に買い物に出た折に書店に寄ると、ついそこで買ってしまいそうにもなるが、そこはぐっと堪える。あの書店で、そっとテキストが売れ残り、それを売れなかった店主を思うとなかなかできなくて。
というのはもちろんあるが、実はその書店。狭い中にも精一杯の店主の愛が詰まっているように感じられるところがとてもいい。
セレクトされている本に意思があるように思えた。これを読んでほしいから、良い本だからおすすめしたい、そんな沈黙のメッセージが伝わってくる。地域を活性化するための本、暮らしを丁寧にするための本、癒やしのエッセイ、もちろん雑誌も各種ある。
意外にも子どものコーナーも充実しており、見えない奥にまで楽しい絵本が入っていたり、しかもちゃんと新しいものもある。さらに漫画の充実度がすごい。一番広い、窓のない壁側の本棚には、めいっぱいの漫画。地域の子どもたちのために揃えているのかな、と思うと微笑ましい。
私の子どもが行った時には、椅子まで勧めてくれ、堂々と本を読ませてくれた(閉じられて読めないものもあるが)。
これまで、ほかの子どもはもちろん、ほとんど他のお客さんに出会ったことはないけれど。
だからこそ、応援したくなってしまう。
大きなカフェのようなお洒落な書店も好きだけど、こういう街の書店にこそ、頑張ってほしい。続いてほしい。きっとそういう人たちに守られて、この書店はこのご時世まで存在しているのだと思うから。
おかげさまで(?)私はこの半年、韓国語の勉強が続いている。そして、先月買いに行ったときには、『韓国行けました!』と報告して、店主からも『それは!ますます勉強に身が入りますね!』なんて励ましてもらって。
そして、また今月も時期になったらあそこへ行くつもりだ。そのうち違う本も買ってみたい。
あとどれくらい、待っていてくれるだろうか。
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