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早いもので、2021年の第2セメスターももう11週目になります。今、私が担当している科目の、2つ目の課題の採点をしているところです。

課題は、もちろん分野や科目にもよりますが、大抵エッセイや、小論文形式のものが多いです。字数は、学部生だと多くて1500字位まで、修士課程になると2000字から2500字になるものもあります。課題数は、1学期1科目につき3つが平均だと思います。

1. Assessment Criteria

課題を採点していて、よく感じる事は、「何を採点基準としているかをよく見ていないなぁ…」ということです。どの課題にも採点基準(assessment criteria)というものを提示しています。例えば、私が今採点している科目の2つ目の課題のassessment criteriaは以下の通りです。ちなみに課題はGlobal material market trend report(建築・建設分野)です。分量の目安は1000ワード。

Assessment Criteria

- Selection of correct materials - 20%

- A clear understanding of the key trends and backgrounds - 40%

- A demonstration of analytical and research skills - 30%

- A clear structure, good expression and referencing using the Harvard style of referencing -10%.

ご覧のように、どういう事柄に何%比重があるかいうことを書いています。例えば20%だったら、100点満点のうち20点がこの項目を占めると思ってください。要は学生が課題に取り組むときにどういう事を重視すれば高得点につながるかということを書いているわけです。もちろん、配分点が高い項目はより重要ということになります。ちなみに、この科目は学部2年生あるいは3年生向けのものです。修士課程になると、もう少し分析スキルや知識の比重が高くなりますし、より高い専門性を求められます。

このassessment criteriaを、明確に提示することは義務になっていますし、私も提出日が近くなると、再度学生に見せて強調します。しかし、課題を採点している限りにおいて、必ずしもこれを参考にして課題に取り組んでいる学生は多くないように見えます。とてももったいない事のように思います。私が学生の時は(日本の大学)、まだそこまで厳しくなかったというのもありますが、このようなassessment criteriaや配点を、明確に示された覚えはありません。今思うと、当時先生はどういう基準で採点していたのだろうかと思います(もちろん基準はあったと思いますが)。こういった基準が明確に示されているメリットは、学生側にとってはこの課題が何をゴールに求めているかがよりわかりやすいということと、教員にとってはもし学生が自分の採点に不満・疑問があった時に、説明がしやすいということです。もしこのブログを読んでくださっている学生さんがいらっしゃったら、ぜひ課題に取り組むときはこれらの基準を徹底的に頭に入れて、課題に取り組んでください。そしてもし、先生からもらった採点に納得がいかなければ、ぜひ遠慮せずに先生にコンタクトして質問してください。

2. Moderation

さて、担当教員による採点が終わったらそれでおしまいかというとそうではありません。Moderationといって、その科目のその課題の採点が、すべての学生の提出物に対して、同じ基準でコンスタントに行われているかをチェックするプロセスがあります。教員も人間ですから、その時の気分や体調などによって同じものを見ても違うように感じることもあります。このプロセスはそういったことがないように第三者の目(同じ分野の教員)によって採点が公正に行われているかをチェックするものです。例えば、似たような基準とクオリティーの課題に対しては似たような点数になっているかとか、同じクオリティーなのにあまりにも違いすぎる点がついているものについては厳重に見直します。このプロセスを経て、必要であれば一度つけた点数を修正し、それで最終のものとなります。この点数が学生に通知されることになります。

3. なくならない不正行為

非常に残念なことに、学生の不正行為というのはなくなりません。一番多いのが、インターネットで見つけたサイトで見たものをそのままコピーアンドペーストするパターン。これに、例えば参照したサイトの詳細をつけていればまだ良いのですが、もし付けていたとしても全くのコピーアンドペーストではいけません。最近はこういったいわゆる「コピペ」を探知してくれるソフトウェアが大学のシステムに登載されていますので、学生も事前に自分の参考文献の記入漏れを防ぐことができるし、教員もこれを参考にすることができるので、非常に便利になりました。といっても、こういうソフトがなくても、教員は専門分野ですから、だいたいどこから「コピペ」したかはすぐ分かります。

次に多いのが、学生が自分が過去に提出した課題を、そのまま内容を変えずに違う科目の課題として提出することです。専門分野ですから、似たような内容のものを書くように言われることもありますし、自分が過去に書いたものを使ってはいけないというものではありません。しかし、その場合にはまず担当教員に相談すること、そして自分が過去に書いたものをきちんとリファレンスとしてあげること、そしてどの部分が、今回の課題ではオリジナルなのかをきちんと明確にすることが必要になります。3番目に多いのが、学生同士で一緒に勉強をしていて、例えば先に終わった学生がもう1人の学生に「見せて」と言われて、見せてしまい、もう1人の学生がそれをそのままコピーして自分のものとして提出するパターンです。これは、そもそも見せる行為自体も不正とみなされますので、2人の学生が不正をしたことになります。他にも色々と不正のパターンはあります。一時期、オーストラリアでは、留学生が、エッセイ代行業のようなものを使っていたことが大きな問題になりました。こういった業者は後を立たず、1課題につき1000ドルほどが相場であることもわかっています。

正直言って、このような不正は大抵の教員はすぐに見抜きます。長年の経験がありますから、鼻が利くといいますか…大体すぐにわかりますので、そういう場合は、当大学では、すぐに教育担当の副学部長に連絡をして副学部長の案件として処理されます。アルバイトが忙しい、かつ家族や友人関係のことでゴタゴタしている、などいろいろ事情があり、課題提出に間に合わないというプレッシャーはあると思いますが(特にコロナ禍では)、そういった場合にはきちんと課題提出の延期を求める手続きがありますのでそれに従ってください。不正行為は、学生のアカデミックレコードにも傷がつきますし。決して学問の場で(もちろんそれ以外の場でも)許されるものではありません。

長年教員をしていると、2度同じ学生を担当することもあります(例えば1年生の時に私の講義を履修していた学生が、3年生になって私の違う講義を履修するなど)。そういう場合、少なからず学生の成長を目にすることができます。1年生のときには、「この子はまだまだ、いろいろ勉強することがあるな。」と思っていた学生が、3年生になるとものすごく成長していて、学習への取り組みの姿勢に限らず、人間としても大きくなっていることを見ることができます。教員にとってこういった学生の成長を見ることが1番嬉しい瞬間です。大学の履修した科目の課題にきちんと取り組むというのは、その後の社会生活において大した事では無いかもしれませんが、これによって文章力そして相手が何を期待しているかといったことを考える力が身に付きますので、学生の皆さんにはぜひ真剣に取り組んでもらいたいと思います。そして、何よりも1番大事な事は、わからないことがあれば必ず質問してください。わからないことを絶対にうやむやにしないこと、それが学習している事の理解と成長への近道だと思います。

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