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太陽光発電の新規導入が低い日本〜FITからFIPへ

第30回「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」が3月22日に開催された。これは内閣府が目指す2050年カーボンニュートラル社会の実現に向けて、大きな鍵を握る再生可能エネルギーの主力電源化やその障壁となる規制等を総点検し、必要な規制見直しや見直しの迅速化を促す目的で開催されているもので、令和2年12月1日の第1回を皮切りに、3年余りで30回の開催を迎えた。

(15) Xユーザーの河野太郎さん: 「3月22日(金)15:00~17:00に第30回「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」を開催します。 議題:エネルギー転換を支える太陽光発電等の更なる導入促進について 会議は、内閣府規制改革推進室が運営する公式YouTubeアカウント「規制改革チャンネル」でライブ配信いたします。…」 / X (twitter.com)

今回の議題は「エネルギー転換を支える太陽光発電等の更なる導入促進について」であった。元来、再生可能エネルギーの議論では、効率化向上の技術躍進が主になることが多いが、「基幹系統の再給電方式(一定の順序)の導入」や「容量市場における蓄電池の取り扱い」などが織り込まれていたことが興味深かった。「基幹系統の再給電方式(一定の順序)の導入」では「送電線の利用ルールではメリットオーダーを追求するべきだ」という視点から新規電源接続時の取り扱いや再給電方式(一定の順序)による出力制御ルールが提示されたが、出力制御ルールでは9つの電源に関して明記されたものを見ると熟考されたことがよく分かるものであった。

「容量市場における蓄電池の取り扱い」では、容量市場における蓄電池の取り扱いにおいて、現状、発動指令電源にのみ区分されているが、これに加えて、一定規模以上の蓄電池も安定電源に区分されるように提言があった。開発技術が向上したことで安定電源にできるほどの性能をもつ蓄電池が生まれたこともあるが、何より災害などで発電ができなくなり電力供給に不具合が起こることを予想しての対応だと読み取れる部分があり、近年の地震などによる災害の影響がここにも現れていると感じた。

他にも、太陽光発電の導入拡大についての議論もされていた。
世界を見渡すと、太陽光発電の新規導入は年々増加し、2023年の新規導入量の総量は直流出力で375GW(ギガワット)と過去最高の新規導入量であったが、日本の新規導入量はというと毎年7〜8GWと横這いであり、2023年は6.5GWと全世界比で1.7%であった。

これだけ見ると、日本には太陽光発電に対する技術がないようにも思えるが、日本の太陽光発電の導入(技術)ポテンシャルは2380GWと国内の電力需要の2.5倍程度を賄える規模ということで技術は十分にあり、2050年までにポテンシャルの22%にあたる529GWが経済合理的に導入可能とする提言がなされた。

提出された資料に目を通すと、現行トレンドでは導入目標達成は困難とした上で、太陽光発電が2030年までにFITから自立した主力電源になることが達成すべき課題とされていた。

FITとは、太陽光発電などの再生可能エネルギーで発電した余剰電気を、電力会社が一定期間・固定価格で買い取ることを国が保証する制度のことで、現在の買取価格は8.9〜10円/kWhと事業用太陽光発電の平均単価12〜14円/kWhよりかなり安く設定されていることが太陽光発電が拡大しない要因であるとされた。太陽光発電は家屋の屋根などに発電パネルを設置し、余剰電力を売るシステムが一般的であり、導入コストが高額な為、リターンに見合うのかどうかが導入の妨げであった。買取価格が固定価格で、事業用太陽光発電より安価である現状では太陽光発電導入の拡大は難しく、拡大を促進する為には柔軟な価格設定を取り入れることが必要だとした上で、FITからFIPへの移行による電力市場の統合が提唱された。

FIPとは、再生可能エネルギーの導入が進む欧州などでは、すでに取り入れられている制度で、FITのように固定価格で買い取るのではなく、再生可能エネルギー発電事業者が卸市場などで売電したとき、その売電価格に対して一定のプレミアム(補助額)を上乗せすることで再生可能エネルギー導入を促進するものである。定められた「基準価格」と市場取引などによって発電事業者が期待できる収入分の「参照価格」の差を「プレミアム」として発電事業者は受け取ることになる。「参照価格」は市場価格に連動し、1カ月単位で見直される為、今の市場価値が価格に反映され易くなり、不当な低価格での売電を抑制できる。
日本でも2022年4月からFIPは導入されたが、未だに多くがFITのままであり、全面的にFIPに移行することで太陽光発電の導入拡大に繋がるというのが主旨であった。

太陽光発電において、日本は世界から遅れていることが分かる資料ばかりであったが、その遅れを取り戻し逆転する提言が多くされたようにも思える。FITのように制度が導入の妨げになっている現状を見ると、日本政府の力の入れようですぐにでも変わるのではないかと考えてしまう。
3年余りの短い期間に30回もの議論を重ねてきたことを見ると、日本政府も課題意識は十分に持っており、早急な対応が必要だと感じているに違いない。今回も内閣府からは特命担当大臣(規制改革)として河野太郎大臣が出席し、資源エネルギー庁、環境省、国土交通省、警察庁、金融庁からもヒアリング対象として多くの方が出席された。

様々な分野の方々が招集されていることで、課題解決の規模の大きさが窺える。資源のない日本にとってエネルギー問題の解決は急務であり、国民にとっても人ごとではない。日本には優秀な人材と技術が溢れている。あとは、これらを有効活用するだけである。それには個々の努力だけでなく政府としての力が不可欠である。今回出席された方々は現状を知り、問題意識がさらに高まった筈である。関係省庁が一丸となり、エネルギー問題を気にすることなく生活できる日本を作り上げる日を期待して待ちたい。

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