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ライドシェアと自動運転の未来

河野太郎大臣のXで、デジタル行財政事務局のポストを拝見した。

(3) Xユーザーのデジタル行財政改革会議事務局さん: 「本日 #デジタル行財政改革会議 (第4回)を開催しました。タクシー事業者以外の事業者によるライドシェア事業についての法制度の議論を進めます。また、国と地方が協力してデジタル基盤の効率的な整備を行うため、新たな連携の在り方を模索し、地方三団体の意見も聞きながら基本方針をまとめます。 https://t.co/7Dqq0ixKxb」 / X (twitter.com)

2023年12月20日のデジタル行財政改革会議において、日本政府は2024年4月から条件付きでライドシェアを解禁する方針を明らかにした。2024年2月22日のデジタル行財政改革会議(第4回)では、タクシー事業者以外の事業者によるライドシェア事業についての法制度の議論を進めたようだ。

タクシー事業者によるライドシェアは国土交通省が2024年3月までに詳細の制度設計を行い、4月から一部地域で実施する方針である。タクシー事業者以外がライドシェア事業を行うための法令制度についても、2024年6月に向けて議論されているが、今回の会議でもこの点について議論された。

法律的な問題はクリアされたとしても、一般人ドライバーによるタクシー業務である点を考えると、利用者側の不安は大きいかもしれない。海外でよくある個人タクシーによる犯罪をどうしても想像してしまうのは僕だけでないはずである。「日本人だから大丈夫」と思いたい反面、近年の犯罪の凶悪化などを目にすると100%大丈夫とは思えないのも本音である。

このライドシェアが打ち出された背景には、タクシードライバー不足があるが、コロナ禍前の2019年からおよそ20%減少している。運転手の高齢化に加えて、新型コロナによる収入の減少などで離職がさらに進んだためとみられている。外国人観光客も戻り、さらなる不足が懸念される中で、ライドシェアの解禁を求める声が上がっている。

海外でもライドシェアを導入している国はあるが、法整備がされていないなど手本になるものが見つからない。日本のライドシェアが成功することを願う一方、効果的に機能するのか疑問である。

ライドシェアと同様に、ドライバー不足の解決策として国が推し進めているものに、自動運転がある。
「ドライバーフリー」と呼ばれる自動運転レベル4の実装だ。レベル2である「ハンズフリー」は市販車にも導入されており、普及している。日産「ProPILOT2.0」、ホンダ「Honda SENSING Elite」、トヨタ「Advanced Drive」、スバル「アイサイトX」などがレベル2である。

しかし、レベル3である「アイズオフ」なると急にハードルが上がり、市販車への導入はホンダ「LEGEND」に搭載されるトラフィックジャムパイロットがあるが、高速道路渋滞時において最大時速50キロ以下の範囲での自動運転という限定的なもの。海外でもメルセデス・ベンツ、ボルボ・カーズ、BMW、ヒョンデなどがレベル3の実装を発表しているが、一部の地域を除いてレベル3による自動運転はまだできないのが現実である。レベル4はレベル3の上に位置するため、導入がどれだけ困難であるか想像できるだろう。

レベル4サービスの実用化というと、公道においては、米Waymoが米アリゾナ州で2018年12月、セーフティドライバーを同乗する形で有償の自動運転タクシーサービスを開始したのがはじまりである。翌年にはセーフティドライバーが乗車しない完全無人化を達成し、名実ともにレベル4を達成している。中国では、Baidu、WeRide、AutoX、Pony.aiなどの開発企業が北京や上海、深センなどの都市でサービスを開始しており、一部サービスでは無人化・有料化も実現している。

日本では、レベル4によるドライバーなしの運行を「特定自動運行」と定義し、従来の「運転」と区別する内容を含んだ道路交通法の改正案が2022年の通常国会で可決され、2023年4月に施行されている。この特定自動運行に関する運用ルールを細かに整備されたことで、レベル4の社会実装が可能になる。因みにこの法改正を受けて、福井県永平寺町で自動運転レベル4の移動サービスの展開が始まっている。無人を前提としたモビリティが移動サービスを提供しているが、電磁誘導線に沿って自動運転を行う「誘導型」の仕組みであるため、WaymoやCruiseと同水準のレベル4とはまだ言えないのが日本の現状である。

このような世界の動向を見ると、レベル4による自動運転がすぐにでも普及するように感じるかもしれないが、現実はそれほど甘くないのである。

・Googleの自動運転車が路線バスと衝突
・Uberの車両で部分自動運転モード中に死亡事故
・Uberの車両が自動運転中に歩行者と死亡事故
・TeslaのEVが2件目の自動運転モード中の死亡事故
・Cruiseが女性を下敷きにする事故

海外でもニュースに取り上げられる事故がいくつか起こっている。日本では、限定的な地域の実証実験レベルにはなるが、それでも

・BOLDLYの自動運転バスが都内で物損事故
・再起動忘れが原因で自動運転バスがガードレールに接触
・東京五輪の選手村でトヨタのe-Paletteが接触事故を起こす
・「日本初のレベル4」の移動サービスで接触事故が発生
・福岡市で実証運行中の自動運転EV「MiCa」が接触事故

と致命的な事故が起こっている。レベル3、レベル4ともにまだまだ実用化には程遠いと思える。自動運転というとサンフランシスコの完全無人タクシー(ロボタクシー)を思い出す人も多いが、導入されて一年余で、緊急車両の走行を妨害した数十もの事例が報告されている。特に衝撃的であったのが2023年8月14日の事件で、2台のロボタクシーが救急車の走行を妨害し、医療処置が遅れたことで、患者は近くの病院に運ばれてから20~30分後に死亡したという悲しい事件である。先日もサンフランシスコのロボタクシーが群衆に破壊され炎上したニュースがあったが、これは先の事件も含めロボタクシーに対する住民の不満から来ていると思われる。

ネガティブなことを述べてはいるが、まだ安全性に不安はあるものの、技術として自動運転レベル4の実装は、社会に必要なものだといえる。
LiDARセンサーだけでなく、Teslaのようにカメラによる機械的な「目」で人の目を補完するといった様々なアプローチで技術開発は進んでいる。

センサーで得たデータを瞬時に解析し実行するにはAIの力も必要である。AIもこの一年で急速に進化し、開発も進み、世界中の注目を集めている。2024年2月23日のNY株式市場でNVIDIAの株価が上昇し時価総額が300兆円を超えたが、生成AIの利用の急速な拡大が背景にある。

Intelの最新Core Ultraプロセッサーには、AIを高性能かつ高い電力効率で処理できるNPUが初めて内蔵されている。半導体業界の目線はAIに集まっている。世界の技術は偶然も収束しようとしているように見える。ライドシェアと自動運転、センサー技術、AIの需要、すべてが別々のベクトルを持っているはずが、まるでカオス理論のようにマクロ的視点では一つのまとまった流れになっているのが不思議であり、面白く思える。

お釈迦様の掌の上で逃げ惑う孫悟空のように、誰かの掌の上にいるかのようである。その掌の持ち主が、河野太郎デジタル大臣であれば、より面白いことになるのかもしれない。

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