昔、好きだった人が先輩と付き合った。

 仲のいい職場の先輩に食事に誘われた。先輩は恋人ができたことを報告してくれた。歳はかなり離れているのに話しやすくて、仕事の悩みや恋愛のことも誰にも話さないこともすべて打ち明けられる先輩。だからすごく嬉しかった。と同時に情けなさ、悲しさ、いろんな感情が胸を締め付けた。

 先輩は言った。恋人は私が知っている人だと。共通の知り合いは職場にしかいないから誰だろうと記憶を辿る。でもそのほとんどが既婚者か恋人がいるからまったく思いつかない。

 先輩の恋人は私が昔、好きだった人だった。社会人のサークルで出会ったようだった。

 先輩の恋人とは学生時代のバイト先が一緒だった。学生が私とその人しかいなくて、シフトが被る日が多かった。距離が縮まるのに時間はかからなかった。お互いに恋人ができないことをからかいながら、クリスマスや大晦日を一緒に過ごした。

 だけどそれより先には進めなかった。それ以上の関係を求める自分と一気に壊れてしまうのを恐れる自分。2つの感情に揺さぶられながら、ついに告白すらできず大学を卒業した。社会人になっても忘れられず、連絡を取ろうと思うこともあった。でも忙しさを言い訳にして、自分の気持ちに蓋をした。

 その人のことも忘れかけていた3年近く過ぎたときに先輩とその人は付き合った。どうしてこうも神様はいたずらをするのだろうか。

 そして、これから先輩と今まで通り接することができるだろうか。

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