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2015年3月の記事一覧
storm~建国の狼煙~2
少年ヤヒム
薄暗い蝋燭の明かりの中で、一心に祈り続ける大人達の背中を見て、少年ヤヒムは考える。
祈りは大事だ。祈りは、「イムワット」に捧げるもの。イムワットは豊穣の神、豊かな実りの印、暴虐と生贄の神、そして戦の神。
真夏は全ての水が干上がって、生物達の死滅する、フェルマ砂漠の中央に彼らの国は存在していた。
見渡すばかりの砂の海に突如現れるオアシスは、彼らの神が作ったもの。
この砂漠に存在
storm~建国の狼煙~
目を閉じると、彼の網膜にはいつも同じ光景が映し出される。
火だ。人を、家を、街を、舐めまわし燃やし尽くす麗しい熱。乾ききった木が内部から崩壊する破裂音、崩れ去る家屋、そして鈍く耳に痛い誰かの絶叫。死と空気が絡まりあって大地を揺らす音。風と火が踊り狂いながらその舌を天へと伸ばしていく様。それらが真っ黒な黒煙に手を引かれ星の瞬く夜空へ登っていく。エイデン皇国を見下ろす小高い丘の上で彼は燃え尽きていく