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夕張線廃止前日

夕張線が廃止になった前日、私は夕張にいた。
廃線当日はきっと激混みと想像し、前日の土曜に行くことにしたのだ。
私の最寄駅が属する室蘭本線から夕張までは乗り換え無しで行くことはできない。
どこかで石勝線に乗り換えなければならない。
それをどこの駅でするか。まずはここから。
使うと思われる時刻表は抜き出して前日プリントアウトして持ってきた。
新夕張までは地味に長い。
座りたいから始発になる千歳まで行くことにしようか。
念のため車掌さんに聞いた。
千歳まで行った場合、乗り継ぎの時間はあるだろうかと。
本来なら南千歳からの方が時間的余裕はあるのである。
そして石勝線の新夕張までの切符を発行してもらわなければならない。
兵動大樹似の車掌さんは親切だった。
「夕張に行くんですか?応援に僕の同僚も夕張いってるんですよ!今日と明日!」と嬉しそうに語る。
その時は感心したのだが、冷静に考えたらJR北海道の管轄はみんな同僚のような気がするが、自分の属する支社(支店?)の同僚という意味であろう。
私はなんとなく、愛想のいい車掌さんにあたって旅の幸先がいい気がした。
切符について車内で発行することもできるが、今日の切符は記念になる物なのでどうする?と聞いてくれた気がする。
頑張れば千歳で一度改札を出て切符も買える、と。
とりあえず新夕張までの切符を発行してもらったと思う。
乗り換えのホームも教えてくれた。
「楽しんで来てね。」的な挨拶とともに兵動大樹似の車掌さんは去っていった。
そしたら自分の斜め前の席の人が振り返りながら「夕張に行くんですか?」と話しかけてきた。
「そうなんです、最後に是非見ておきたくて。(あなたも)行くんですか?」
その方は自分も本当は行きたかったんだ、というようなことを言ってた。
でも今日は行かないんだって。
今日行く人だったらお友達になれるかと思ったのに。
ダイヤ読むのとか乗り換えとかちょっと自信なくてね、自分。
やっぱり一人で夕張に行かなければならない運命なんだな。

千歳には始発の普通列車はもう到着していた。
ホームも人で混雑している。
なんとか先頭車両に座れた。
どんどん人が増えてくる。
よかった、南千歳から乗るなんてとんでもないことだ。
これは千歳で正解だった。
密度が高い。
たまたま先頭車両だったわけで狙ったわけではなかったんだけど。
千歳から新夕張までこの列車の世話になる。
石勝線は初めて乗るのでみたことがない景色が広がっていて、とっても新鮮だ。
しかし止まるたびにバズーカのようなカメラを持った人々が降りては写真を撮り戻り、という事が新夕張までの全駅で行われてすごかったねぇ。
一人や二人じゃないんだ、結構な人数だったよ。
石勝線も廃線になるんだっけ?とちょっと思ってしまったくらい。
私は乗り鉄ですから座っていたいの。
北海道のローカル線にしては混んでて、生乾きの洗濯物の匂いをさせてる人が近くにいて正直吐きそうだった・・・あの匂い苦手なんや。
でも洗濯を失敗することは誰にでもあることだからな、仕方ないね。
出入りしてるから熱気で車内がどんどんムワッとしてきて尚更である。
隣の隣の中華圏のカップルは楽しそうにしてた。
先頭車両なので彼氏の方がデッキにでて先頭車両のみが撮影できる運転席からの眺めを撮影してる。
彼女は席に置き去りだった。
停車すると席に戻ってきてなにやら彼女に語っている様子。
彼はとっても楽しそうだ。
中華圏にも鉄オタっているんだねぇ。
鉄オタってワールドワイドなんやな。世界の車窓から。
彼らは夕張に行くんだろうか、それともトマムや新得まで行くのだろうか。
新夕張駅の降車でごった返しててどうしたのか見なかった。
新夕張駅から夕張までの乗り換えの待ち時間が結構あって。
なんにもないところに結構な人数の人間が置いてかれて、みんな途方に暮れてるっていうか戸惑ってる。
行くところなんて隣の道の駅しかないのである。
お腹がとても空いていたけど夕張駅の近くのホテルの火鍋の店で中華の定食を食べようと思っているのでパス。
会社の人のお土産と自分がほしい鉄道関係のグッズを買い漁る。
あとジムニーのガチャガチャが入り口にあったからやったんだが持ってるやつが当たった・・・そういうもんだよね。
夕張の炭鉱や鉄道の歴史の展示があったので、そこも堪能して、何なら箇条書きの表は写真をとらせてもらった。
鉄道も好きやけど炭鉱も大好物なのさ。
なかなか面白いよ、夕張メロード。
次来る時は車になるかな。
そうこうしているうちに夕張から折り返してきた列車が到着したようだ。
四人席の余り一席に滑り込んで座れた。
車内アナウンスが粋なことしてくれたので私はとっさにスマホの録音機能で録ってみた。
上手く録れてるかその時はわからなかったが、結構上手く録れてた(mp3にしてitunesに入れたけど、一度聞いたきり。案外聞かないものだよね。)。
車掌さんが夕張鉄道、夕張炭鉱とのあゆみをアナウンスで語ってくれた。
もしかしたら兵動大樹似の車掌さんの同僚かもしれないね。
流石に助っ人には列車に乗らせないかな?
車窓を眺めてると沿線にはカメラを構えた人々が見える。
なんなら崖の頂上みたいな所にまでカメラを構えている人がいて驚いた。
ゴルゴ13みたいだ。
みんな思い出を焼き付けようと集まった人々なんだ。
車内は混んではいたが朝9時頃の札幌地下鉄の南北線の札幌駅以北くらいの混み具合。たいしたことない。
廃線前日でもこの程度なのかと驚いたよ。
車両数だって4両くらいなもんですよ。
こんな晴れの舞台にでも日高線の車両が混ざるくらいJR北海道は車両がたりてないんだな。
なるべく電車に乗って貢献するからね。微々たる物ですが。
隣のボックス席では昔夕張線を使っていた方が当時のことを語っている。
当時の話が知らない人間同士を繋げる。
いいじゃない。
そうこうしているうちに夕張駅。
狙っていたホテルの火鍋はランチタイムのラストオーダーが終わっていた。
数分の差ですよ・・・こんなんばっか。
昼にありつけなかった私は夕張駅付近を徘徊する。
でも殆ど何もないんですよね。
屋台村みたいなところは満杯だし、おひとりさまにはハードル高め。
やっとのことで食堂にありついて臨時販売のお弁当を食べる。
ついてきたお茶が嬉しいね、昔、ホームで売ってたプラスチックの急須みたいなやつでさ。
あのプラスチック臭いお茶が大好きだ。
私の鉄道の思い出を蘇らせる。
粋だよね、嬉しくて思わず捨てずに持って帰ったね。
お弁当も美味しかったな。
知らない人と相席?っていうかでかいテーブルがどーんって感じのマジ食堂って感じ。
本当は日帰り温泉に入って帰ろうかと思ってたんだけど昼が思い通りにありつけなかったのが気持ち的にとても疲れたので、次の折り返しで帰ることにした。
帰りもまた4人ボックス席の余ってる一席にありついた。
家族づれで男の子がめっちゃ詳しく語ってて。
「ここでね南大夕張に行くの。こっちにあるの線路の跡じゃないかな。」とか熱心に語るも両親はあまり興味ない模様。
でも陰ながら私聞いてますからね。
私もおさらいしてきたんで多少は知ってるからね。
清水駅で双子のリリーズの実家の電気屋が見えるとか聞いたけどよくわからんかった。
自動車で電車と並走してる人もいた。
「ありがとう夕張線」って掲げながら。
途中で道路と線路は別れちゃうんだけどね。
なんか良かったなぁ。
みんなそれぞれのお別れの方向性で。
新夕張に着いたら私はなんだか疲れちゃって。
おおぞらに乗ったら車掌さん探して指定券買ってビール買って。
気がついたら爆睡しててびっくりして飛び起きたけど、まだ大丈夫でw
乗ったことのない路線だから景色だけじゃ今自分がどこら辺なのかさっぱりわからず。
南千歳で室蘭本線に戻って。さらに特急を乗り換えて。
なんだかとっても疲れて最寄駅についてから家までタクシーで帰っちゃったな。
歩く気しなくてw
乗り換えの待ち時間が長いと疲れるよね。
家ついたの四時くらいだったんじゃないかな。

どうだろうか?
夕張支線廃線の前日のことを出来る限り思い出して書いてみたんだけども。

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