警戒警報

いつも穏やかな森に、突然緊張が走った。

ヒヨドリがいつにも増して甲高い声をあげる。

呼応するようにヤマガラもシジュウカラも

ジー、ジー、ジー、ジーとあちこちで忙しなく叫ぶ。

スズメもメジロもそれぞれに鋭く短く鳴き散らし、

深緑を繁らすケヤキの低枝を飛び渡り落ち着かない。

我が庭先の茂みに続々と小鳥たちが集まってくる。

けたたましいほどの鳴き声。騒然とした空気。


なんだ、なんだ? 


上空、繁った葉陰に見えるのは猛禽の影。近い。

緊張の正体は、天敵接近に対する警戒警報。

“近くの仲間たちよ、警戒せよ、上空に猛禽襲来!”

”最寄りの低い葉陰に隠れて、声をあげて威嚇せよ!”


小さきものたちは皆、この警報の意味を理解して

身に迫る危機を共有し、一致団結して生き延びる。


数分後、

警戒警報が解かれ、森に静寂が戻る。

小鳥たちは落ち着きを取り戻し、

それぞれの場所に戻っていき

庭先の餌台では常連客のヤマガラが

ひまわりの種をついばんでいる。


新参者のわたしだけが、ひとり

しばし呆然と森を眺めていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?