Nanami Yoshi

ヨーロッパ在住。日本語教師。英語のサイト:https://hitotsubu.subs…

Nanami Yoshi

ヨーロッパ在住。日本語教師。英語のサイト:https://hitotsubu.substack.com

最近の記事

ラーメン

ラーメン、 高校生の時福岡に住んでいた私にとってラーメンはもっと身近なものだった。そして、もちろん味噌でも醤油でもなく、とんこつラーメンの一択だった。 部活帰りにもラーメン、家の近所の、のちにカップラーメンにもなったらしい某有名ラーメン屋からの豚骨スープの匂いは店の煙突から1日とも絶えず町内に漂い、土日のバイパス沿いにあった大型ラーメン屋のお座敷席は子連れの家族客でいつも賑わいを見せていた。各テーブルの高菜と紅生姜は言うまでもなく、その店のカウンターには箱があって、その中

    • ホットワイン

      金色の無数の光の粒に縁取られた小さな店が立ち並び、 人々はその店の前に並べられた簡易なテーブルを囲んで、 店から漏れたオレンジ色の明かりの中、 笑い合いながら何か温かいものを頬張っている。 厚手のコートを着ても、ニット帽を被り、さらにマフラーや手袋をしていても、 今日は足から痛いくらいに冷える。 私はその広場の真ん中の、 眩しいくらいに黄緑色にピカピカと光を放つ回転ブランコの前で、 白い息をフーフー吐きながら熱いホットワインを飲んでいた。 子供達の笑顔を乗せてクルクルと回る光

      • snow

        雪が降っている日の朝は目覚めるといつも静寂に包まれていて、何もかもが落ち着き過ぎていて、自分の体も青い海の底に横たわっているかのように、ゆっくりと脈が流れているのがわかる。 そんな余韻に浸りながらも、ぼーっとした頭でコーヒーを淹れて、いつものようにメールを開いた。 生きていると不条理なこともあるもので、無縁であったであろう下衆な人間が否応もなしに向こうからやって来ることもある。そのメールがまさにそれで、無かったことにしてやり過ごすこともできたんだろうけど、その日の私は、受

        • Shimokitazawa_1

          昔は出口が北と南の二つしかなかったその駅も、何もかもがまっ白でピカピカに新調されて、降りたってみれば「全く知らない場所」だった。何一つ面影すら、ない。 ライブハウス、おじさんとおばさんがいつも笑顔で迎え入れてくれたチーズとんかつのうまい定食、よくイタリアのパスタやトマト缶を安売りしていた輸入食品専門店、通いつめた銭湯、カウンター席で鳥のどの部位も余すことなくおいしく提供してくれて狭い店内がいつもぎゅうぎゅうに混み合っていた焼き鳥屋さん、屋上にあって友達と夏にビール片手に生春

          Asakusa_Sensoji

          東京を1日で回ろうなんて無謀だった。忘れていた、東京がとてつもなく巨大だってこと。コリアンタウン、原宿、そして、浅草に着いた頃にはもう夕方だった。 それでも境内にはまだたくさんの観光客と、高いビルに囲まれた東京では稀に見るひらけたオレンジがかった空には、蝉の声が響きわたっていた。 きっと自分が日本に住んでいたらなかなか足を運ばないであろう場所。そこにあるのが当たり前すぎるとそれはどんどん透明度を増して、透き通って、いつしかスーッと視界から消えていってしまう。 夜は海鮮焼

          Asakusa_Sensoji

          Tokyo_Harajuku_Takeshita Street

          ギラギラと照りつける真夏の太陽を頭上に東京の人混みの流れに乗って目的地までひたすら歩く。暑さで頭の中は朦朧とし、水を飲んでは首筋をつたっていく汗を感じながら、歩いても歩いてもまったく先に進んでいる気がしない。隙間なくびっちりと立ち並んでいる店はどれも似通っていて、その店内は虹色の商品とお客でぎゅうぎゅうだった。今日も人はどこからともなくとめどなく湧いてきて、犇あってはまた散って、東京を巡りめぐる。 I kept walking towards my destination

          Tokyo_Harajuku_Takeshita Street

          Miyakojima_4

          台風_1日目  あんなに碧かった宮古島があっという間に灰色の渦に飲み込まれ、固定されていないものは何もかもが瞬く間に数十メートルにも先に吹き飛ばされてしまうほど強い風が吹き荒れて、私たちはこの「楽園」で丸2日間家に閉じこもらなければならないという選択を余儀なくされた。 「物資を運ぶ船が台風で欠航になると食糧不足になる」という情報を聞きつけてスーパーに駆け込むも、時すでに遅し。日持ちするカップラーメンや飲料水の棚にはペットボトルの6本パックを包んでいたであろうビニールや商品

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          海水浴_2日目  依然台風は近づいているものの夜から暴風域に入るなんて信じられない!くらい、私たちは幸運にも「宮古島の本気」を見ることができた。海は息を呑むほど青かった。  南国の波は生あたたかくて、体温にちかいせいか柔らかく、肌にすぐ馴染むような気がする。水の中はしんしんとしていて、コポコポと自分の呼吸が奏でる音が優しい。遠浅で海底の砂が白く舞う中、銀色に光る魚たちを追いかけては見失い、また追いかけてはと夢中になる。そんなことをどのぐらい繰り返していたんだろう、水面から

          Miyakojima_2

          海水浴_1日目 運の悪いことに台風が近づいているという。それでも、このどんよりとした曇り空の下でも、宮古島の海は本当に碧かった。それまで海が青いのは空の反射だとばかり思い込んでいた私には驚きだった。手ですくった水は透明で、底に広がる砂は白いのに、何がこの海をこんなに碧くしているんだろう。 帰りがけ、幸運にも晴れ間が見えたのでサンセットビーチによってみることにした。台風のせいで雲は多かったものの、金色にゆっくりと染まってゆく空を見ることができた。何もかもが一瞬静寂に包まれて

          Miyakojima_2

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          出発 インスタグラムで見てずっと行きたかった宮古島。まだ日本について3日目。しかも宮古島への飛行機は成田からの朝7時発、2時間前の5時にはチェックインをすませておきたい…ということで、最終で11時ごろに空港入りして、朝まで待つことにした。 早朝に出発する国内便が結構あるっぽく、かなり広々としたフードコートが私たちのような乗客のために解放されていた。たくさんのテーブルと無数の椅子が並べてあって、日本らしく給水所にはコップとテーブルを拭くためのフキンまでもがキレイに陳列されて

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