本棚から:大崎善生『聖の青春』

こんにちは。ひつじのまさこです。
王将戦で、羽生善治九段(私のあこがれの人のひとりです)が藤井聡太六冠に敗れましたが、ある新聞に先崎学九段が「羽生君がいたから 頑張れたのさ」という寄稿をされていました。
とても心にしみる文章でした。

それで何度目かの再読をしたのが、『聖の青春』です。

映画化されたので、ご存じの方も多いでしょうが、簡単にご紹介。
幼いころから腎臓病と闘いながら、名人をめざした村山聖九段(死後追贈)のノンフィクションです。
世代としては、羽生九段と同じです。
名人になる――その一念で、広島から大阪へ出てきて、森信雄氏の弟子となり、「東の羽生、西の村山」と並び称されるまでになった彼は、まっすぐに自分の生きる道を将棋盤に描き出します。
しかし、病は確実に彼の体を蝕んでいました。
29歳という若さで、他界してしまったのです。
将棋界最高峰の、A級に在籍したまま。

村山さん。
あなたは今、羽生さんと藤井さんの闘いを、どう見ていますか。

あなたが入院中に食べた味のないカレーライス、私も実は食べたことがあるのです。
私の場合は、急性腎炎で入院していたときのことです。
無塩・無たんぱく食だから、カレーの色だけついているという代物ですよね。あれは見た目にだまされました。
つけあわせには、たぶん、これまた味のないほうれん草のおひたし(それをおひたしと呼んでいいのかはわかりませんが)。
昔のことなのに、読んでいるとすぐ思い出せます。

村山さん。
羽生さんも先崎さんも52歳だと、新聞を読んでいたら書いてありました。
52歳の村山さんを、見てみたかったです。

あなたの生きた年数を、私はいつのまにか越えてしまいました。
何回読み返しても、いつも思うのです。
私は、あなたのように、真剣に生きているのかと。
命がけで何かを求めているのか、と。

大人になる前から読んでいたこの本に、何度も、私は背中を押されました。
何度も涙を流しては、また読みました。
そのたびに、ちょっとは成長している…といいのですが、まだわかりません。
これからも、何度も読み返す本です。
たぶん、この世を去るまできっと、ずっと。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。またご覧いただければ幸いです。