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旅の記録:やかげ郷土美術館と矢掛町

こんにちは、ひつじのまさこです。
5月の連休には、お出かけになった方も多いのではないでしょうか。
そろそろマスクを外して、ちょっと遠くへ行きたいなぁと思った方もいらっしゃったでしょう。

私も今回の連休は、珍しく休めたもので、小さな旅に出ました。

やかげ郷土美術館。

今回の旅の目的地です。

どこ?

私も実は知りませんでした。

岡山県矢掛町。岡山駅から山陽線、伯備線を経由して、さらに井原鉄道に乗り換え、矢掛駅下車。
山陽道の宿場町として栄えた街なのだとか。

目的は、その町の美術館。
私の書の師匠がかな書を学んだ師匠、田中塊堂先生の作品が展示されているのです。
私は直接教えを受けたわけではありませんが、あまりにも美しい写経、そしてかな書に、感銘を受けました。
塊堂先生の作品をもっと見たい。
ただそれだけで、旅の行き先としました。

岡山の市街地や倉敷は以前訪れたことがありますが、そこからさらにローカル線まで使って行く旅。

調べてみると、非常におもしろい町なのです。

宿場町として栄えた当時の建物、たとえば蔵などを今も活用しているのです。

なんなら、蔵に泊まれます。

蔵に!?

そう、蔵に泊まれます。

それで宿は決定。「矢掛屋SUITES & INN」という名前で出てきますが、なんとそこはいくつもの建物に分かれている不思議な宿泊施設なのです。
ですので、フロントに連絡…というときは、指定された電話番号に連絡。
追加の精算がなければ、鍵を指定の場所に入れて、チェックアウト完了。

私が泊まったのは、「KURABI」という建物。
見た目は明らかに蔵です。

あかつきの蔵 蔵INN KURABI外観
外観はどう見ても「蔵」な「KURABI」

中に入ると、スタイリッシュな内装。
外見からは想像しえないそのギャップに驚きました。
お風呂も、「湯の華温泉」という別建物でいただけます。
たまたま私の入った時間帯は、ほかのお客様がなく、とてもぜいたくな気分で過ごしました。

矢掛の町は、小田川の水害に幾度も苦しんだそうです。
水見やぐらをそのまま残した建物が、やかげ郷土美術館。

やかげ郷土美術館
やかげ郷土美術館では水見やぐらにも登れます

地元の人どうしが、あら久しぶり、なんて会話を交わせるような親しみやすさがあります。

お目当ての塊堂先生の作品は、特別展として展示されていました。

紫色の紙に、金字で書かれた般若心経。金で書くのは、ふつうの墨で書くよりも固まりやすいので難しいのです。均整の取れた、凛としているのにあたたかみを感じる文字。間近で見て、改めてすごさを知りました。
一方でかなの書は、大らかさと繊細さがみごとに両立した作品。

こんなすごい人に習っていた師匠、に習っていた自分。
なんと幸運なこと、としみじみかみしめます。

塊堂先生は、かなの書を独学で極められたのだとか。
自分の勉強不足、稽古不足を痛感しました。

外には、鯉の泳ぐ池もありました。餌をやる人たちもいて、とてものどか。

やかげ郷土美術館の池
鯉がたくさん泳いでいます

のんびり泳ぐ姿を見ていると、ふっと力が抜けた感じがします。

すぐ近くには、塊堂先生の書碑が建っています。

「後ろ手に人渉(かちわた)る春の水」


ベンチもあり、ゆっくり座ってゆるやかな時を過ごすことができ、これからの自分の書を考えるきっかけになりました。

矢掛の町には、商店が並んでいます。
おしゃれなカフェから、昔ながらのおせんべい屋さんまで。

その中でどうしても行きたかったのが、書道用品店。
訪ねていくと、少しお年を召したおかみさんがいらっしゃいました。
2階で書道教室を開いている先生は、毎月の競書の審査のためにご不在にされているとのこと。会派のお名前を聞くと、あっ、とわかるような有名な会派でした。

お店の中は、学童用の書道用品から、とってもかわいらしい水差しや珍しい筆までいろいろ。でも、品数はさほど多くはないように感じました。

不思議に思ってきいてみると、そのわけがわかりました。

なんとお店は、車に突っ込まれるという事故に遭い、まだ品物の陳列を十分に復旧できていないのだとか。

書道をやっていると言った私に、岡山の書道教育のことだけでなく、町の一大行事である大名行列の際の写真や、書道教室以外にもフラワーアレンジメント教室もされていること、町のすてきなお店のことなど、たくさんお話を聞かせてくださいました。

お話ししながら、自分の師匠のことを思い出しました。

既に他界した師匠も、こんなチャーミングなおばあちゃんでした。
人とお話しすることが好きで、おしゃれで、日々の生活を楽しんでいる。

お話できてよかった、と感じる朝でした。

そして、教えていただいたチョコレートのお店へ。
石を叩く、高く鋭い音が鳴っている店先。実は、やかげ郷土美術館のすぐ近くにありました。
少し暑い日だったので、アイスショコラを注文。とっても癒されました。
ロードバイクで来ている人も多く、このあたりはどうやらサイクリストにも人気のようです。

道の駅「山陽道やかげ宿」もあるのですが、なんと物販のない道の駅。珍しいですね。矢掛の特産品の紹介があるのですが、あえてその場では販売していないようです。すぐ近くに商店街があるからそこで買ってね、ということなのでしょうか。

道の駅 山陽道やかげ宿

この道の駅、なんと水戸岡鋭治氏がデザイン監修されているのです! 鉄道好きにはよく知られたお名前ですよね。
2階のデッキからの眺めもよく、商店街のパン屋さんで買ったメロンパンをおいしくいただきました。

 古きものと新しきものが織りなすこの町は、不思議な魅力がありました。
次に行くときには、書道用品店にもう一度立ち寄り、いろんな道具を見てみようと思います。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。またご覧いただければ幸いです。