桜花賞を考える

【直行ローテ】

 最近は珍しくもなくなってきた直行ローテ。
 今年も上位人気想定のうちアスコリピチェーノ、ステレンボッシュが阪神JFからの直行、そしてチェルヴィニアがアルテミスSからの直行ローテとなります。
 桜花賞が年明け初戦となった馬の成績は近10年で見ると3-2-0-6とまずまず。これを連帯した馬に絞ると2-2-0-2と成績は更に上がり、勝ち馬だと2-0-0-0とパーフェクト。まあその2頭はリバティアイランドとソダシなので外れ値の可能性は十分ありますが、実績としては中々逆らいづらい。
 まして今年は阪神JFレースレコードを引っ提げて乗り込んでくるアスコリピチェーノ、それと着差なしクビ差のステレンボッシュと実績的にも強力。それに加えて前哨戦で能力を見せたクイーンズウォーク、スウィープフィート……今年の桜花賞は人気サイドから固く馬券を組み立てるか…という人も少なくなさそうですが、そこに待ったをかけるところから今年の桜花賞を始めていこうと思います。

【なんで直行でもいいのかというところから】

近10年阪神JFラップ

 これは直近10年間の阪神JFのラップを並べてみたものですが、直行からの勝利が出た2020年と2022年のラップはかなりエグイ
 2020年を勝ったソダシは逃げ集団を見る4.5番手あたりに構えた上で残り4F地点あたりから徐々に押し上げてこのタイトなラップを押切。2着のサトノレイナスはソダシをマークするポジションからソダシの動きに併せて息の入らないラップを早めに押し上げて僅差の2着。
 リバティアイランドが勝った2022年は見てわかるハイペース戦。それを中団前目に構えて勝負どころでは大外回しで一気に進出、馬郡を飲み込んで圧勝。
 更に2018年朝日杯FSはスタートから逃げ馬の後ろにつけたグランアレグリアが4F目で若干息は入ったものの早め勝ち馬の目標にされてロンスパの厳しい展開を粘り込んで後ろは離しての3着。
 直行から勝利した3頭に共通しているのは”前走のG1で厳しいペースを経験しながら、特に展開利もなくある程度ポジションを取った上で結果を出してきている”というところ。
 リバティアイランドと同年の阪神JFを2着して直行したが6着に敗れたシンリョクカの阪神JFは道中はリバティと同じような位置だったが、大外回しで押し切ったリバティとは対極的に内をロスなく捌いてリバティにつぶされる先行勢を躱しての2着と評価できる内容ではあったが展開利もあった。
 そしてもう一頭、阪神JFの連帯から馬券外となったラブリイユアアイズの2021年は見てわかるスローからの瞬発力勝負。それを6番手から馬場の悪い内を避けながらロスを抑えて上手く立ち回っての2着とこちらも悪くは無いが展開利は大きかった。
 よって直行組の取捨を考えるときにまず着目すべきは”前走の時点で高い追走スピードを求められる厳しい競馬を経験してきているか”そして”展開利もなく能力でねじ伏せるような競馬をしてきたか”この2点。
 今年の阪神JFを見直してみると、アスコリピチェーノは完璧な競馬をして勝っているんですよね……まずまずのスタートを決めて激しい先行争いに巻き込まれない位置で無理なく追走。前との距離をキープしたまま追走し、少し早めに前が仕掛けたのにも追い出しを待ちながら射程圏から外れない位置をキープ。たっぷり溜めて直線はロスを抑えて内から最短距離で伸びてラスト1Fは叩き合いを制してのクビ差勝利。
 ステレンボッシュも同様で、終始アスコリピチェーノをマークするルメール騎手らしい騎乗ぶり。
 どちらも素晴らしい阪神JFの内容だが、今回求められるような厳しい競馬を能力で押し切るような内容ではなく、完璧な立ち回りで勝つべくして阪神JFで結果を出してきたのが今年直行してくる2頭。
 阪神JFの内容単体で見るとむしろ桜花賞に向けての経験として評価できるのは先行から外回しで0.2差の3着にねじ込んだコラソンビートの方であり、直行組以上に厳しい競馬を今年に入ってから経験してきた各馬にも逆転の余地があるのではないかなと思う。

【そんな視点で今年の前哨戦をチェック】

ラップ一覧

 まず目につくというか、あえてここまで触れてこなかったもう一頭の直行組であるチェルヴィニアのアルテミスS、どうですか?スタートからポジション争いが落ち着いてからはじっくり足を溜めて直線を向いてからのトップスピード勝負、これまでの傾向から言えば桜花賞での好走につながるラップではない。チェルヴィニアはその前走の未勝利戦もスローからの瞬発力戦であり、タイトな競馬に対する経験値という点で見ると、厳しい競馬を経験したことが無いままに桜花賞に挑戦してくる危険な人気馬と言っていいかと思います。
 フェアリーSは中山らしいラップ構成、スタートからポジション争いで少し早め、コーナーで緩んで直線末脚比べ。基本的にはイン前で進めた馬に有利になりそうなレース展開を外回しで早めに押し上げてそのまま押し切ったイフェイオン、捲って追い込んだマスクオールウィンはどちらも展開無視で能力を見せた内容であり、特に前目からの競馬をできているイフェイオンは桜花賞に向けても悪くないが、タイトなペースの経験値という点で考えるとやや不足
 エルフィンSはスローからの直線勝負。タイトなペースへの経験値では評価できない
 クイーンCはラップはかなり良いが時計の出やすい馬場コンディションの東京で、このラップを後方から追い込んでの勝利というのがなんとも言えない。これを最後方から上がり最速となると本番でいきなり先行は難しく、後方から展開がハマるかの勝負になりかねない。
 チューリップ賞は見るからに良いですね。コーナリングで緩まずに直線でも早めからスパート、ラストは12.3に失速するほど苦しいラップというのが評価が高い。スタートからの2F目が10.8と早いのも良く、何よりこれが稍重で出たラップというのが驚き。
 Fレビューもかなり良い、スタートから早くコーナリングでも全く緩まない消耗戦。後方に居た馬でも足が削られる消耗戦なので結果的には前に居なければ難しいレースではあったものの、それを逃げて勝ち切ったエトヴプレは距離延長は課題ではあるものの強い競馬。コラソンビートも阪神JFからの直行ではなく、このタイトなレースを挟めたのは経験値的にかなり良い。
 アネモネSはラップはフェアリーSと比べても緩めで評価できないように思えるが馬場状態が全く違う。内がかなり荒れていた中山で勝ったキャットファイトをのぞいて他の馬は大きく外を回して馬場の良いところを選んだので距離ロスは大きい。キャットファイトは馬場適性とコース取りの利がある分評価しづらいが、ロスを受け入れつつ展開向かずの後方から追い込んで着差なしのクビ差にまとめたテウメッサはパワーと瞬発力という面では少し面白いものの、いずれにせよタイトなラップの経験値は足らず。
 とまあ一通り見渡した限りでは、評価すべきはチューリップ賞とFレビューにありですね。

【注目馬】

・コラソンビート
 まず前述のとおり阪神JFの内容は今回に向けてかなり評価できる。
 スタート直後の位置取りはそこまでだったが、その後掛かり気味に押し上げる形で2列目の外3頭目を回すことに。直線に差し掛かる前の早めスパートに付き合わず、一拍足を溜めることが出来たのが好騎乗だったが、一度ポジションが下がってからエンジンをふかして伸び治しての3着は強い。
 そして前走のFレビューは2着に取りこぼしたが悪くない内容。これまでと違って最内枠からでもスタートを決め手ポジションを取り、ハイペースの先行争いに巻き込まれながらもしっかり対応して連帯を確保。馬郡に揉まれながらの競馬も経験することが出来たのは経験として非常に大きい。
 ローテ的にも上位人気組と比べて明らかにこの桜花賞をメイチにしており、勝負度合いがかなり高い。前走から引き続きの栗東滞在での調整なので輸送などの不安はない。前走の予想でも書いていた通り、Fレビュー時点ではかなり緩めの仕上げに映っており、今回は一週前追切の時点で既に前走の最終追切を上回る状態に見える。
 近10年でFレビューからの臨戦で桜花賞を好走したナムラクレアとレーヌミノルは、阪神JFで掲示板内→Fレビューで1人気2着であり、コラソンビートはそれと完全に被る。更に遡っても阪神JFで結果を出した上でFレビューでも好走してから出てきた馬の成績はかなり良い。舞台適性、距離適性、そしてハイペースの経験と桜花賞に必要なすべてを得られるこのローテは好相性。
 JF3着、前走2着で人気が甘くなるのであれば、積極的に狙いたい。

・セキトバイースト
 かなりハイレベルなラップを刻んだチューリップ賞で不向きな展開を逃げ粘ったのはかなり評価できる内容。
 それを距離延長で初逃げというかなり厳しいローテでその内容をこなせたというのは更に評価が上がるポイントであり、桜花賞でも侮れない存在。
 過去の走りを見ると、このメンバーに入って終いのキレでは一つ劣ると思うが、全く末脚が使えないという訳ではなく、足が溜まれば馬場状況次第では34.0前後まで見える切れは持っている。
 そんな馬が逃げて35.6で上がる苦しい競馬を経験してからの次走……これは良いローテですね。
 週末に雨予報が出ているのもセキトバイーストからすれば恵みの雨。血統的にも高速馬場でのスピード比べよりは雨が降って他の馬も含めて上がりのトップスピードが削がれる雨馬場はやりやすい。
 また、重賞勝ちをしたエトヴプレにも乗ることが出来たであろう藤岡佑介騎手がセキトバイーストを選んだというのもかなり大きい。今年に入ってからペプチドナイルでのG1制覇を含めて活躍が目立つ藤岡騎手だが、明らかに継続騎乗の時の方がいい競馬が出来ている、というか本番を見据えて前哨戦で布石を打つような競馬をしてくれていることが多い。
 今回も本番と同舞台のチューリップ賞でもっと溜めるような逃げで前哨戦を勝ち切るための競馬も選択できたであろうポジション取りからでもあえて緩めず、それでいて折り合いながら使える足の限界を探るような逃げ。それを経ての本番ならば逃げても一段下げて好位から差しに行く競馬でもかなり期待できる。
 直近10年の好走30頭のうち、実に23頭が満たしている阪神JForチューリップ賞で馬券内という条件を満たしているのも熱く、それでいて人気が無いというのは穴党としては狙わずにはいられない。
 人気薄の中でも頭まで狙える一頭だと思っています。

【まとめ】

 今週の注目馬はこの2頭のみにしておきます。というかこの2頭が現状抜けて良く見えています。この2頭ともがよっぽど苦しい枠に入らない限りはどちらかを本命にするんじゃないかなと思っています。
 一週前追切を見た段階でよさそうに見えるのはテウメッサとライトバックが穴目ではかなり面白そう。人気サイドもそれぞれ順調に仕上げてきているようには見えますが、直行組とクイーンズウォークあたりははっきりとオークスがメイチでここはまだ余裕残しでという最終追切になりそうな予感がしています。
 現状の予報だと日曜は稍重くらいかな?という感じの雨予報ですが、天気の推移にも注目しながら、週末に向けて考察を深めていきたいと思います。

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