皐月賞の追切メモ

 普段は全頭分一律に書いていましたが、今週は気になる馬についてちょっと深掘りするスタイルでいってみたいと思います。

〇アーバンシック

 京成杯から3ヵ月の休み明けとなる今回、3週前の3月28日からかなりの好時計を連発。
 28日が6F81.7、5F65.9から終い11.7、3日が6F78.9と全体時計をかなりまとめてそれでも終い11.7。流石に3頭併せ馬の外側で馬場の外々を回しながらこの時計はかなりハードだったのかコーナーから直線を向く際は少し内にヨレてから持ち直す形での手前替え。それでも最後まで苦しくならずに追われての反応よく、大きく体を使って最加速。かなり良い負荷がかかった1週前の内容。
 そこから日曜に坂路で53.9から終い12.9-12.5の最終追切と言われても驚かないレベルの好時計を出してからの最終追切。
 1週前から引き続き併せ馬の外側、ここまで散々動かしてきた分もあってか最終は全体時計を抑えて5Fだと68.8から終い重点の11.3。一週前とは違って足がしっかり溜まって余裕ある状態で直線を向くことが出来たのもあってか一週前よりも状態が起きており、体幹にも力が入っている分ストライドの伸ばし方に安定感がある。体幹が良い分手前替えもスムーズでスピードのロスなし、1月の追切映像と見比べてもかなり成長が感じられる追切であり過程、動きともに文句なし。
 唯一気になる点としては、最後抜け出した後に気合を入れられていたのを見ると、一頭にならずに併せ馬の形に持ち込んだり、前走のように馬郡を縫って差していくなど、上手く集中して走らせられるのが理想かと思う。
 百日草特別の内容、京成杯からのローテということで皐月はまずまずの仕上げにしておいてダービーで究極仕上げとなってもおかしくなさそうなところだが、ここも手を抜かずに勝ちに来ているような仕上げなのはかなり好感が持てるところであり、成長力を加味しても十分勝ち負けできる水準まで仕上がっているように思う。

〇エコロヴァルツ

 阪神FSや共同通信杯の時は最終追切も坂路併せ馬で仕上げてきていたが、今回は単走。ラップ的にも終い12.9というのはこれまでで最も遅く、前走内容も踏まえてかかなり気性面に気を使ったような仕上げに映る。
 一週前はCWで6F80.3と好時計ではあるがこちらも単走、馬のリズムで気持ちよく走らせた結果という感じの時計という感じで、マイルG1で連帯できるだけの脚力は感じさせるが、最終も含めて全く併せ無しというのは気になるところであり、まずまず仕上がったが、ここに向けて大幅に上昇という感じはしない。
 また、もう一つ気にかかるのが最終追切の坂路で手前を替えたタイミングでかなり左側に流れて行った。前走もスタート直後に左にかなり斜行したことで他の馬に迷惑をかけてしまっているので、最終追切で同じような癖が見えているのはかなり不安。枠並びには注意したいところ。

〇コスモキュランダ

 前走は捲り気味に長く足を使いながら強い競馬で皐月賞を勝利していたが、かなりかみ合った結果だったのかなと感じさせる追切。
 一週前は併せ馬の内側で5Fだと63.9とかなり早い時計でまとめて終いまで強く追って11.7。併せ馬を突き放してかなり見栄えはする内容だが気になったのは、手前を替えるのにかなり時間がかかったのと、手前が替わった後追ってもあまりコーナリング時からスピードが変わっていないように感じられたところ。
 最終追切は、一週前にかなり早い時計を出した分かかなり時計を抑えて5F68.6から終い11.9。直線ではかなり余裕あり、抜け出そうと思えばすぐに抜け出せたけれど抑え気味にじっくりと併せており、しっかり制御が効いているのは好感も、最後まで早い脚は使わずに負荷は弱い。体の動きを確かめるだけという感じの内容。
 一週前は全体時計を出した分、最終はじっくり併せるために抑えた分かとは思うが、前走の追切と見比べるとかなり後肢の蹴りに鋭さを欠く印象。前走で既にキャリア7戦目、弥生賞史上で最も早い勝ち時計ということもあってか前走の出来を何とかキープするのが最大値で、ちょっと上積みには期待しづらい。
 また、直線でのトップスピードはやはりそこまで高くなく、前走の上り34.9はこの馬としては中山の舞台で出せる最大限早い時計という可能性もあり、切れ味鋭い馬がそろっている今回は正攻法では勝ち負け難しい。
 前走は小頭数で早めスパートでもコースロスを抑えられたこと、時計がかかる競馬だったことがばっちり噛み合った結果だった。というのが今回の追切からの印象。

〇シリウスコルト

 一週前はCWで6F79.9とかなり早い時計から終いも11.6と好時計が出た。前走の弥生賞時もそうだったが2歳のころと比べるとかなり状態を起こしながら走れるようになってきており、かなり基礎スピードの上昇が感じられる。
 ここで早い時計を出した分十分にしあがったということだとは思うが、前走は日曜に坂路で早めの時計を挟んでいたところから、今回はCW4Fでまずまずの時計に過程を切り替え、最終追切もCWでゆるめの全体時計から終い11.8となった。
 単走で抑え気味に外ラチ沿いを走らせたが、前走の追切映像と見比べても首の使い方が良く、馬体のハリ艶も目立ち、かなり状態面での上積みに期待できる。トップスピードこそ横の比較では見劣りするが、パワーと持続力では十分上位メンバーとも張り合えそうであり、前走のようにハナを取った上でポジション、展開面で恵まれる様であれば穴での好走は十分期待できる水準に仕上がっているのではないかと思う。
 重心低く力強い走りなので、適性的には馬場不問。今の荒れ気味な中山の内も全く気にせず最短距離で走れそうなのは面白く、逃げた前走は当然として、2走前のホープフルでも意図的に三浦騎手が5枠10番から内を通す競馬をしているというのも期待できるポイント。前目のポジションから内にこだわる競馬に期待したい。

〇シンエンペラー

 一週前はミスタージーティーとの併せ馬でCW6F80.9から終い11.4-11.3の好時計。直線でも両馬しっかり追いながら競り合って手ごたえはやや劣勢、そこから鞍上に一発鞭を入れられてグイッと一伸びして前に出るという内容。追うだけでは中々加速してくれないが足が上がっているわけではなく、鞭まで入れられてようやく一伸びというところからもズブいという印象は否めない。
 前走の弥生賞でも初騎乗の川田騎手でコスモキュランダが早めに仕掛けて上がっていくのに反応しきれず、追って追って直線でようやく迫っての2着というのもこのズブさ由来であり、かなり動かすのが難しそう。
 最終追切は坂路で単走、リズムよく走らせて53.6から13.0-12.3。これまでの坂路時計から一段階上がって矢作厩舎のG1らしい時計にはなってきており、今回に向けての勝負度合いは高めと感じられるが、ストライドの力強さや動きの良さからするともっと時計が出そうなのに、終いのみ13秒台というのはやはり上手く動かさないと中々本気で走ってくれないのかなと思わせる。
 ただ、ここで乗り替わるのが坂井騎手というがかみ合わせとしては悪くない。坂井騎手は条件戦などで他の騎手では中々スピードに乗せられていなかったダートの大型馬でも乗り替わりでいきなり動かせたりなど、ズブ目な馬を動かすのが上手な印象もあり、乗り替わりとはいえ師匠の馬で調教からばっちりコンタクトをとって臨む今回、ばっちり手があうという可能性も結構期待できるのではないかと思う。ここ2走高いレベルのレースで先行させる競馬を覚えさせてきたバトンを受けて、しっかり能力を出し切ることが出来るか。期待したい。

〇ジャスティンミラノ

 強いぃ……ですね。
 キャリア2戦、東京しか経験が無いというのはやはり割引要素ではありますが、それでも軽視しづらい好内容。
 一週前が併せ馬で終いは11.0-11.1のキレ、そこで十分負荷をかけてからの最終追切は坂路で55.3から終いのみ12.2の加速ラップは友道厩舎の定番ではあるが最も好成績のパターン。
 前走時点で502㎏と馬格のある馬とは感じさせないほどの動きの鋭さ、CWでは首を低くして安定感ありつつもスピードの高い走りが出来ており、横の比較でも上位と言わざるを得ない。
 最終でもしっかり抑えながら足を溜めて溜めてラスト1Fでは一気に回転数が上がって坂を上っていることを忘れるような加速。文句なしでしょう。
 ただ、走りが前傾しすぎているというか、姿勢が低すぎる分初めての急坂への対応というのは少し課題になるかなという不安はある。坂路でここまでスピードが出せているので問題ない可能性はあるが、理想を言えば一週前の動きでもう少し状態が起きているほうが良かった。坂さえクリアできればここでも十分勝ち負けの素質。

〇ダノンデサイル

 一週前がCW併せ馬の外側で5Fだと65.2から終い11.4-11.2の好内容。併せ馬を突き放しているので時計が出ていることが分かるが、単走だったらここまで早いというのが分からないかもしれない感じで、キレる!という感じではなく長く早い足を使える中山向きな走りに見える。直線を向いて手前替えもスムーズ、一瞬先に馬を行かせてからあっという間に抜け出す反応の良さも目立っており、一週前の時点で相当仕上がっているのを感じる。
 最終追切は併せ馬の内側で全体時計はまとめながら直線はじっくり併せる形での11.8-11.7。コントロールが効いた走りで気合乗りもよく、コーナリングから安定感の目立つ完成度の高い走り。
 トモの丸みも目立つ仕上がりの良さで、ここに向けて好状態で出走してくれるだろう。直線でのキレに賭けてくる馬もそれなりに居そうな中でコーナリングからスピード乗り良くスムーズな競馬が出来そうなのも今回に向けては一つストロングポイントであり、やはり期待できる一頭だと思う。

〇メイショウタバル

 一週前、最終どちらもかなり制御が難しそうに見える。
 どちらもその分時計は目立ち、一週前がCWで6F78.5、最終追切も坂路で52.6から終い11.8と猛時計。
 間隔が詰まるせいか、あまりにも気性が前向きなのはあまりプラスには捉えづらく、前走逃げの競馬をしたこともあり今回もハナを取って落ち着かせるか、走りやすい流れたペースになってくれるかしなければ自滅の可能性もありそう。こんなタイミングで騎乗経験はあるとはいえ乗り替わるのは痛手。
 前走時というか、スプリングSの追切メモでも書いたが坂への対応も課題。前肢が突っ張り気味の走りをするので理想的には阪神や京都外回りのような直線が長く下りのあるコースがベスト。一週前のCWでの動きを前走と見比べると、後肢に体重が乗る時間が今回の方が若干短くなっており、ピッチも忙しないのは、時計影響もあるとは思うがプラスには取りづらい内容。
 余裕の無いローテーションが悪いほうに出そうな予感がします。

〇レガレイラ

 一週前、最終ともにCWで2頭あわせ。2頭併せなんですね。
 近2走、アイビーSとホープフルSでは木村厩舎の重賞では定番の3頭併せ馬の真ん中での仕上げだったところからこの変化というのはプラスには捉え難い。最近毎週言っているがやはり木村厩舎の重賞で買いたいのは3頭併せの真ん中の時、先週のウンブライルこそ好走したが、人気サイドになりそうな今回でパターンから外れるのは気になる。
 日曜に坂路で53.5から終い11.9の加速ラップなど、時計の出し方、過程は目立つものがあるが、最終の動きもやや気になる。
 併せ馬の内側で引っ張りながらかなり行きたがるような感じで自分からぐいぐいと加速、一週前にも抑えながら終い10.9と強烈な時計を出しているなど制御に難しさがうかがえる。その分馬のテンションを上げ過ぎないようにと気を使ってのいつもの3頭併せではなく2頭併せまでにしたのかな?とも考えられるので(それなら割り切って単走にしそうな気もするが)、乗り変わりのこのタイミングで、只でさえ今までルメール騎手が継続騎乗で上手く末脚を引き出してきたこの馬を休み明け、牡馬に交じってのG1の舞台で乗りこなすのはどんなジョッキーでも至難の業なのではないかと思う。
 脚力、末脚のキレはここに入っても見劣りしないどころか、光るものがあるが、それを発揮しきれるかどうか。

【まとめ】

 今回は気になることがあった馬だけ特出しして書きましたが、全体的にクラシック一冠目とあって仕上がりの水準は高い。人気サイドだとジャンタルマンタルは触れませんでしたがいつも通りの仕上げでいつも通りのいい動き。しっかり力出せそう。穴目なところだとミスタージーティーは共同通信杯では不発に終わったものの矢作厩舎の好成績パターンである坂路で53秒台かつ12秒台まとめの加速にしっかり当てはめてきており、期待できる仕上げ。サンライズジパングも音無厩舎らしい坂路で好時計を出してきているが、やはり気になる部分として走りがやや直線的過ぎるの部分があるのでコーナリングが不安。などかなり見ごたえのある追切でした。
 そんな中で追切だと上位に評価したいのはアーバンシック。他の差馬が揉まれない外を通して差してきている一方で、前走馬郡を縫って末脚を伸ばす経験をしているというのも面白く、成長度も併せて期待値はかなり高そう。
 週頭から気になっていたシリウスコルトもここに来てもう一押し成長がありそうで、馬場と展開がかみ合えば、前走のように高配当を運んできてくれる可能性は無くはないかなと。
 人気サイドだとシンエンペラーは坂井騎手と手が合いそうで、この乗り変わりでオッズが甘くなるならば面白い感じがします。
 枠もかなり重要にはなると思うので、結論を出すまでじっくり悩みたいと思います。

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