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初診って、なんというか、いい。

駅近の不妊症専門クリニックへ初診で行ったのは、5月なのにもう夏じゃん! と日本各地で言われてた暑い日。初診は予約不要とあったのでお言葉に甘えた。

初診です! 予約してません! 妊娠する能力があるのか知りたくて来ました!

開口一番まくし立てるスタイルは、我ながらスマートである。

クリニックはダークブラウンを基調にしたインテリアで、お子様連れを固くお断りしていた。受付の女性はニュートラルな態度で、ああ、それって見る人が見たら愛想ないとか不親切とか思われたりするぞ、っと心の中で世話を焼く。

通された待合室は人口密度の割に静かで、土の感じが残るざらっとした陶器の花瓶にクロユリが生けてあった。

その隣にはアイリスオーヤマ製のサーキュレーターがコーッと音を立てながら首を振っていた。色はダークブラウンの木目調でシックなんだけど、クロユリを不躾に揺らしている。ただちょっと目を凝らして見るだけで造花であることがわかるのだから、心配はご無用って感じ?

番号(35番)で呼ばれた。

セックスのことは夫婦生活と言い換えることで統一していた。

妊娠する能力があるのか知りたくて、なんて言わなくてもきっと妊娠する能力があるのか調べるところから始めるんだろうな。みんながするんだよね、決まってるんでしょ、「初診の流れ」。

番号で呼んで、ズボンと下着を脱ぐのを待って、股を開いて、棒を突っ込んで、エコーで見て、粘液を取り、それを顕微鏡で見る。ここまで流れが決まってんでしょ。

↓ここからは別に決まってないんでしょ。

顕微鏡を覗いたまま、先生は「昨日夫婦生活があったなら精子がウヨウヨしてるはずなんだけどなあ」と言う。

私はそれに「ふええ」と返して(?)、そわそわと背筋を伸ばして前のめりになり、先生の奥にある大きな窓から外を見て、景色がいいなあと思った。

精子に問題があるのか否かを調べたいからと、次は夫と来るよう言われた。今月はもう排卵時期が来てるみたいだから、来月からでも人工授精を始めてもいいかなって。

代金はクレジットカードで支払い、新しく発行された診察券と、精子を入れるための検査容器をGETした。

あのニュートラルな態度の受付は、嬉しいこと&悲しいこと、こもごもな不妊症専門クリニックを、押せば倒れるような感情から守る存在なのかも。

彼女たちは、誰の味方にもならない。

ただ、受け付ける人なのだ。

かつて低用量ピルをもらいに行っていた地元の婦人科より、好きな感じだなあ。

だからまたいこーっと!

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