一気に弱ってきた父

今年日本に帰省するまで、コロナ渦で帰省できなかった4年間というのを、私はそれほど大きくとらえていませんでした。
まぁ、帰れない年もあるよねってぐらい。
父はこの間に転倒により腰と右腕を骨折してしまいました。骨折したのが2年ぐらい前だったかな。
右腕はその後完治しましたが、腰の方はこれをきっかけにやや背が曲がってしまい、いわゆるお年寄りのような歩き方になってしまいました。
日頃割と格好とかを気にするタイプだったので、それを機に一気に外出するのが億劫になってしまったようです。

それまでは毎日スーパーに行き(スーパー好き)、食事を作っていたんですが、すっかり外に出るのが嫌になり、外出は近所のコンビニまでに留まる生活となってしまいました。
父と母は年が離れており、母はまだ働いています。会社を退職後は父が主夫をやっていたわけですが、母は仕事の後に買い物に行き、夕飯を作り、夜に洗濯機をまわすというけっこう忙しい生活になりました。

本当はコロナの心配もあって、今年も帰省を見送ろうかと思っていたのですが、そんな父の「孫に会いたい」プレッシャーに負けて、帰省を決めた部分もあります。
よく足腰が弱ると、頭の働きも鈍くなると言いますが、実際父はものすごく忘れっぽくなっていました。ボケているのとは違うのですが、前の晩に行った事を翌朝には忘れているという事がよくありました。
この毎日のように実感する「親の老い」は、正直ショックだったし、4年という月日の大きさを痛感しました。

4年前は子供達と一緒に動物園や水族館に行っていたのですが、今は難しそうなので、せめて近所の散歩だけでも一緒にできるように、出発前からスカイプで励ましていました。
実際、後に母から聞いた話では、がんばって外に歩きに行ったり、頑張っていたらしいです。ただ、楽しみなあまりなのか、お酒の量が増えてしまったようで、私たちが到着する1ヵ月ほど前から体調が優れない日が増えて行ったようです。

元々お酒が好きで味の濃いものが好きなので、高血圧などに悩まされてはいたのですが、仕事を退職後は酒量もおちついていたように思います。ただ、4年前に実家に帰った時点でもけっこう味付けが濃く、ちょっと危ないなとは感じていました。
だから肝臓が弱っていると聞いても、それほど驚きはしませんでした。

実家に帰省した時点で、足の浮腫みが原因で歩行困難となっており、定期的に通院している状態でした。
それでも帰省当初は子供達と散歩に行ったり、タクシーを使って映画館に行ったりとできる範囲で子供達と遊べるようにしていたのですが、中盤頃から体調が悪化し、外に出るのは通院の時のみ、という状態になってしまいました。
実は父は相当な病院嫌いで、病院で医者の話を真面目に聞かず、いつも「大丈夫って言ってた」と言うのみ。処方箋が出ているのに薬も取ってこないし、医者の前で普段の生活についてなども平気で誤魔化すので、1人で病院に行かせてもあまり成果がありません。
結局、通院には母が仕事を休んで付き添うか、後で電話して状況を聞く事になります。
最終的に大きな病院で検査となり、管理入院が決まりました。
しかし、2週間を予定していた管理入院も、入院直後から「帰りたい」を連発し、3日で半ば強引に帰ってくる始末。
ただ、コロナへの感染を防ぐ為に面会が一切なしである事をふまえて、高齢者は「せん妄」という症状が出た場合には、退院する事が予め伝えられていました。実際父は「せん妄」の症状も出始めた事もあり、退院と言う運びになったようです。
結局自宅からの通院と投薬のみでの治療。私たちがNZに戻ってからは、坂道を転がり落ちるように病状が悪化しました。

7月、父には正式に「肝硬変」という診断名がつきました。
これまでさんざん検査をして、一度も病名を言われなかったのに、なぜ今になって。なぜここまで症状が進行してからなのか。正直疑問に思う部分もあります。
既に腹水がたまっており、母はハッキリ言ってくれませんでしたが、余命宣告のようなものもあったようです。

スカイプで画面越しに見る限り、痩せてはいるものの、浮腫みが酷かった一時期に比べると、なんとなく顔色が良く見えます。
帰省していた時は、子供につられるのかなんでも良く食べていました。でも、今は食欲がなく一日一食状態で、病院で処方された栄養ドリンクや牛乳などの飲み物でつないでいる状態です。
こんな状態でも食にはうるさく、市販の栄養補助食品的なものはあまり食べてくれないようです。
病院の先生には「本人に入院してしっかり療養しようという意思がないので、手が出せない」と言われているそうです。
前回の管理入院の事があるからでしょう。

どうして素直に病院に行ってくれないのか。
どうして入院して安静にしてくれないのか。
どうして、どうして、というイラ立ちのような疑問と、「そういう人だから」という諦めの気持ちがグルグルと渦巻いています。

子供達の為にリハビリを頑張ってと言った事が、裏目に出てしまったのか。
こんなに急速に物事は進んでしまうものなのか。
弱っている父に対し、これから来るであろう事に、私は覚悟ができているのだろうか。
ここ最近は毎日考えています。

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