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ふらっと沖縄⑥〈バス珍道中〉

飛行機と宿だけ確保して、あとはその日の天気と気分と体調次第で行先を決める、というゆるい時間の使い方は、ほんとうに贅沢だったなぁ、と思う。行けなかったところには、また次に行けばいい。

最後の朝もかわらず寝坊。3日間でいちばん晴れた海。ごはんをしっかり味わい、チェックアウトまで海辺を散歩した。可愛い貝殻を見つけて拾うと、たいがい先住民(やどかり)がいて、お目が高いね、と都度思い、そっと戻した。


飛行機は夜の便だけれど、キャリーケースを預けたかったので空港へ向かう。バスを乗り継いで約3時間弱の予定。車窓の景色を眺めていると、たくさんの南国の木々が目に飛び込んでくる。ヤシ、ソテツ、イトバショウ、フクギ、ハイビスカス、ブーゲンビリア。低いつくりの瓦屋根やコンクリートの民家。それらを守るようにぎっしりと植えられている木々。どれも同じような風景なのに、ずっと見ていても少しも飽きない。バスは淡々と走り続け、近所のひとを乗せたり降ろしたりしながら進んだ。しばらくすると、朝は晴れていた空が分厚い雲に覆われ、急に暗くなり、滝のように雨が降り出した。

バスに揺られるうちに、やり場のない感謝がどんどんあふれ、泣けてきた。とにかくここにいられること、今この景色をみていること、海が近くにあること、花がたくさん咲いていること、雨が降っていること。なにもかもがきれいで、すべてに感謝したい気持ちだけれど、誰に伝えたらいいかわからない。とりあえず、車窓からみえるものすべてに、心の中でありがとうと言い続けた。ゆるみにゆるみきった心の奥で、なにかの扉がばん!と開いたような感覚。

今書いていても、とんだハッピー野郎である。多幸症、という病気があればそれかもしれない。けれど、これほど幸せならば、治らなくてかまわないと思った。移動を睡眠にあてるつもりだったのに、まるで眠れず、ハッピー野郎はバスを乗り継いで昼過ぎに空港へ到着した。






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