見出し画像

週末2時は恐ろしい

20時開店、営業時間はお客さんが帰るまで。昨夜は2時に看板を下げた。最後の泥酔客を女4人がかりで送り出す。妙な達成感と、定休日前夜の高揚感を共有したまま、私達は深夜の女子会に突入した。

女の裏側の怖さを象徴するシチュエーションとして、給湯室やお手洗い、女子更衣室などが思い浮かぶけれど、水商売の裏舞台こそえげつない。不倫や愛人契約は日常茶飯事、枕営業は常識、派閥争い、取った取られたの終わらないいざこざ。

高級なクラブや、激戦区のキャバクラやガールズバーではない、ほぼ東京郊外に位置する、一見のほほんとした小さな街のスナック周辺ですら、ねっとりした話であふれている。

うちのお店は「エロで売らず人柄で売る」を目指していて、従業員は、男勝りのママに大いに守られているので、揉め事もあるにはあるがごく少なく、耳に届く噂話もほんの一部であろうと推測される。女の子たちも良い意味でお互いに興味がない。だからこそ、今はまだあけっぴろげでいられるのだろう。

営業終了後に始まった、それぞれの色恋の進捗や、常連のお客さんのバックグラウンドの暴露大会。やっちまった系の話は、どれもほんとにやっちまったな!って内容だし、飛び交う単語はどぎつくて過激なのに、喋っている方も聞いている方もあっけらかんとして明るく、それこそ箸が転がっても面白いくらいの低い沸点で爆笑がわき続け、何が何だかわからなくなっていた。酔いすぎだ。

何が起きても美味いネタ、と思うしかない。笑いに変えて発散しなくては溜まる一方だ。お客さんでももてなす側でも同じ。不器用で、一生懸命働いて、飲み込んで、生きている。

私の色恋に話が及び、随分前からすごく好きな人がいます、と初めてお店のひとたちに伝えたとき、お店の中で、声がとてもすんなりと広く響いた。素直な言葉はまっすぐに声に乗るのだ、と思った。なぜか酔っ払いたちが感動していた。今日はもう忘れているだろうけれど。

もうなんでもありだった。週末深夜の解放感は恐ろしい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?