黒飴

水商売に「適度なエロ」は必要だ。ただそれは広範囲に渡るグレーゾーンであり、受け流せる許容範囲にも個人差がある。

スナックには、心の隙間を埋めたくて、お酒を飲みにくるお客さんが多い。飲み方も酔い方も人それぞれだ。

認めてほしい、ほめてほしい、傷つけないでほしい、慰めてほしい、もっとほしいもっとほしい。ほしいほしいほしい。
でも思い通りにならない。どうして思い通りにならないんだ。

心の隙間を、女をねじ伏せることで埋めようとする人たちがいる。パブリックな場面では決して見せることがないであろう、むきだしの欲望。それを見てしまう場、向けられる側にいるのだ、と事あるごとに感じる。
なぜ、妄想を売る仕事をしている女は、何してもいいと思われるのだろうか。

ボディタッチの重いお客さんがいる。そんなに女をさわりたくて、お金を持っているなら。ここになんて来ないで、飲んで時間稼ぎせずに、あなたのそのお金で好きなだけ女を囲えばいい。
私のお客だったら引っ叩いて喧嘩して出禁にするが、ママは店のためにあれこれと引き留める。ここはママの店で、すべてママが決めることだ。ママの涙を知っていても、何も出来ない。

帰らない酔っ払いをなんとか帰し、2割増のタクシーで帰った。東京オリンピックに向けて増やしているのだという、ワゴンタイプのタクシー。窓が高い。普段と違う景色にはしゃいでいたら、運転手さんが黒飴をくれた。

「苦手なお客さんに会った後、どんな風に気持ちを切り替えてますか?」
と、運転手さんに聞いてみた。

「特になんかすることもないけど、タバコ吸ったり、コーヒー飲んだり、いざとなったら寝たり、ですかね」
と運転手さんは話してくれた。
そういうもんだから、と苦笑いしながら。

そういうもんだから。

受け流しているつもりで、真っ向からぶち当たってしまう私は、いつかその境地に行けるんだろうか。
どうしても合わない人とは仕事をしない、その選択が出来るようになりたいと思う私は、青いのだろうか。

もらった黒飴は、なかに私の好きな黒砂糖がかたまりで入ってて、じんわりと甘みがあり、おいしかった。

#日記 #エッセイ #タクシー #スナック

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hiyorimi36

スナ女の楽屋

スナックで社会勉強をさせてもらっていました。
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