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パロディはルーツを知っていてこそ

息子と一緒にテレビで仮面ライダーを観ていたら、きんきらきんのド派手でゴージャスな俺様&王子様キャラなライダーがポーズを決めつつ

「伝説の伝説による伝説のための伝説!」

と宣った。

どこぞの演説か!と思わず吹き出してしまった。現在中学2年生である息子もウケていたのだが、コイツ笑ってるけど元ネタちゃんとわかってるのかしら?と疑問を感じた。

息子は不登校で中学に入ってからは全く学校の授業を受けていない。小学校までは別室登校での個別学習や、チャレンジ(進研ゼミ)を使って自宅学習もしていたが、中学に入ってからは学習らしい学習はやめてしまった。こちらも小学校までの基礎学力が身についていればあとは必要に応じて本人のやる気次第というスタンスなので勉強しなさいというのはやめた。

中学・高校レベルの世界史や英語の授業をどんな形であろうとどこかで受けていれば、リンカーンの演説の一説「人民の人民による人民のための政治」原文[government of the people, by the people, for the people]について、必ず聞いたことくらいあるはずなんだが、考えてみれば息子の現在の生活環境の中でリンカーンの言葉を学ぶ機会はない。

いまのセリフ、元ネタはわかるか?と息子に確認したところ、「なんちゃらの〜なんちゃらによる〜なんちゃらの〜にゃにゃにゃあってやつでしょ」とたいへんホニャララした答えが返ってきた。言葉の語呂として「なんかこんな感じの有名なやつがある」くらいの認識らしい。

いまどきの子なので、テレビアニメはもちろん、YouTubeだのAmazonプライムだの、サブカルチャーを軸にあちこちでパロディにはたくさん触れているから、語感としてなんとなく有名なオリジナルがあることは判るらしいのだが、肝心のオリジナル(ルーツ)を知らないことがデフォルトだ。

息子だけに限らず、これは夫42歳も同様の無知を晒すことが度々ある。ちなみに私は49歳。

こういう瞬間に、夫の学歴や学力の低さというものをハッキリ感じる。夫と結婚するまで私は学歴には全く無頓着に生きてきたし、頭の良さは学歴ではかれないという信念は今も全く変わりないし、そのことで夫に対する敬意を失うことはないが、夫と暮らすようになって以来、学業をしてこなかった人の基礎教養の低さはこんな瞬間に実感する。

偉そうに言ってるが、かくいう私も、当時三流私学といってなんの過不足もない四年生大学を出た程度だから高学歴とは程遠い。

さてさて、我が息子に話を戻して、勉強嫌いの不登校くんに教養を身につけさせるにはこんなタイミングをピシャッっと掴んで教えるしかなく、今朝のきんきらライダーのセリフはちょうど良い機会だと、アメリカ大陸発見からリンカーンの演説までの歴史をえげつないダイジェストに短縮解説、仮面ライダーが終わりブンブンジャーが始まる隙間を使って、この言葉が人類の政治史の中で自由民主主義の始まりを象徴するものであることを教えた。流石に多少は時間が押してブンブンジャーの開始5分くらい被せてしまった。

ついでに歴史を学ぶ意味についても、歴史の勉強は暗記が重要なのではなく、人類がより良い社会を目指して戦争と試行錯誤を繰り返してきて現在があることを知るのが大切だと話して聞かせた。
しかし歴史を学ぶ意味が感じられるようになるには、基本的な歴史の知識がなければ話にならない。だから中学や高校ではどうしても暗記中心になるのだと説明した。

ブンブンジャーが始まったところから息子は生返事の相槌ばかりになったので、どこまでちゃんと私の話を聞いていたかは随分怪しい。

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