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妻と僕の小規模な育児(8)|#漫画構造解析

こんにちは、ヒヅメです。

漫画とか小説とか、映画とかドラマとか、美術作品とか何でもいいんですけど、作品を見て感動した体験を何度も重ねていくと「そんなすごい作品を知っている自分もすごいんじゃないか」みたいな勘違いって起きません?もしくは「自分もすごいもの作れるかも」みたいな勘違い。

まあそれはことごとく勘違いなわけです。少なくとも僕にとっては。

漫画家としても活動する僕ですが、いつも自分の作品の「想定完成度」と「実現完成度」の差に愕然とします。

それでも何かをインプットした後に漫画を描いてみると以前より上手に描けていることもあったりするんです。

…というわけで、漫画家目線で漫画を読んだ時に僕が気が付いたことをメモしてみようと思います。

今回は福満しげゆきの「妻と僕の小規模な育児(8)」より。

ページ構成

1話6ページ
物語の立ち上がり2ページ
物語の動き2ページ
オチ2ページ(オチ1ページ+余韻1ページ)
という構成が多い。

特徴としてはオチを迎えた後の振り返りやその後といった余韻ページを用意することで良い読後感を演出しているところ。

コマ構成

基本的に2段。1ページ3~4コマが多い。

家族モノだとどうしても登場人物が多くなってコマがごちゃつくので、その対処かな。

セリフまわし

  • 大ゴマが多い分一人が話す量が多い。

  • その分フキダシの余白は多め。

  • 大ゴマ内で二人以上の人物が会話のやりとりをすることが多い。

  • 一人がセリフを言う途中に独白を追加することもある。

  • 話の流れ上必須ではないが装飾として良いセリフは小フキダシ内に手書き、または手書きでコマ内に追加する。基本的に白抜き文字+トーン。

  • 思っていることや独白は主人公(観察者)しか描かない。自分から見た世界のエッセイであることを表現しているのかな。

  • 自分が想像した映像は必ずフキダシ内に収納することで「自分が想像している内容は他者と共有されていない」ということを表現しているっぽい。

セリフと独白が同時並行する

演出

  • 1コマ目はコマ周囲を黒塗り+状況説明用のト書きを付けることをアイキャッチのルールにしているっぽい。

  • 会話中に動きがある場合は、同レイアウトの別ゴマで処理。

  • 起こった出来事に対して「自分が何かを感じる(受け止める)」⇒「行動する」⇒「これでよかったのだろうか」⇒「行動した結果が出る」という順番を丁寧に守っている気がする。

  • 手の演技は「パー」または「ろくろ」が多い。おそらく本人が話す時のクセ?ちなみに手はまるっこく肉厚。

  • バトルの描写はデフォルメした絵とは裏腹に重力感は忠実。格闘技やバトルシーンが好きだっていうことが出ている。

  • 擬音のセンス。「もっ」「ギョリギョリ」「ズビズバッ」「スジミシ…」「ケー」。

同一レイアウトで動きをフォーカスさせる演出

作画

  • 影はグラデーショントーン(トーン貼り付け後にケズリ?)で処理。

  • 基本的にペンタッチは少なめ。

  • 作品全体にペンタッチが少ないのに、バトルシーンの動きや重力を示すためのペンタッチは多め。

  • 他にはシリアスさを表現するときもペンタッチが増える。その場合短めで主線よりやや太いペンタッチを多用する。

  • 服の表現はアウトラインは一本線で描いて、シワは内側に独立して描く。結構執拗に描く。

  • 背景は定規無し(多分パース定規も無し)のフリーハンド。全体的に魚眼寄りの広角レンズをズームした感じ。

  • 背景の寸法感は、個々のアイテムの寸法を正確に取るよりも全体的にデフォルメすることでキャラクターの頭身にフィットさせているっぽい。

  • 室内の背景は、壁をペンタッチ無しであっさり描くのに対して、窓枠や巾木、階段の踏板は表現している。シンプルさと写実さのバランスを取っている?

  • フキダシの太さは主線より若干太目め?で余白多め。

服のシワの描き方がかわいい

印象に残ったストーリー

本気の謝罪ゲームの話。

形式だけも本気で謝ると結構心にも来るというお話。謝罪の効果は謝る方も謝られる方も抜群なのにも関わらず「心の中はどうであれ」という枕詞をつけることでケンカ中の子供を「やってみようかな」という気持ちにするのはさすが。

いじめの早期対処やじゃんけんが持つ「腹落ち感の無さ」を解決する新ジャンケンの開発など、子供の諸問題の対策方法には毎回驚かされる。

マンガの表現としては本気で形だけの謝罪をした福満しげゆきや子供たちがジワリンときてしまう表情が可愛くておかしい。ケンカをしていたはずが謝罪を楽しんで話が終わるというのはシナリオとしてもケンカの解決方法としてもすごく良かった。


ということで、福満しげゆきの「妻と僕の小規模な育児(8)」でした。

《おわり》

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