勝ち点を取るために必要なのは「レノファはやれる」という自信 〜レノファの開幕4試合振り返り 後編〜

今回のnoteでは,レノファ山口FCの第3節,第4節の試合を振り返っていきたいと思います。
1,2戦目については,こちらのnoteに書きました。



1.課題も見つかった今シーズン初勝利 〜J2第3節 vsジェフ千葉〜

第3節では,今シーズン初勝利をかけてフクアリに乗り込んでジェフ千葉と対戦しました。結果は見事5-2の勝利となりました。この結果には,千葉に退場者が出たことが影響を与えたと思いますが,内容を見ると点差ほどの差がつくものではなかったかなというのが正直な感想です。

そんな試合で押さえておきたいことは3点ほどあります。

まずは,千葉の攻撃の狙いについてです。千葉のこの試合のフォーメーションは4-4-2もしくは4-4-1-1でした。千葉は,再三山口のSBとCBの間を狙ってランニングを見せていました。特に千葉のボランチの熊谷は,前とドストンの間を走ってチャンスを生み出そうとしていました(これには,堀米の退場も大きな影響を与えていたとも思いますが)。

ただ,山口はCBがついていくことも使いながらうまく対応していたと思います。とはいえ,千葉が11人だったら危なかった気もするので,監督交代はありましたが,次回対戦時もここを狙われるかどうかは,注目したいと思います。

次に,山口の千葉に対する攻撃の狙いにも言及しておきたいです。それは,高木大輔のスタメン起用からも読み取れるように「千葉の背後を突く」ことです。パウロよりも高木の方が裏抜けのプレーは得意としていると思いますし,ハイラインの裏を取るために,裏に蹴るボールがかなり多かったと思います。

この狙いがうまくいったのかどうかを考えるのは,非常に難しいと思います。なぜなら,この試合には5-2で勝利をしているので,これがハマったと言ってもいいと思う一方で,試合運びの面で,この狙いが危うさをもたらしたように思えるからです。

3つ目に書きたいことは,この試合をコントロールするという面において危うさを見せたのではないかということです。後半1人多い状態でリードをしている中で,縦に急いでボールを失ったり,つなぐスペースがあるように見えるのに,裏に蹴って,ボールを捨てるような形にしてしまったりしていました。これによって,無駄なカウンターを受けたり,相手に攻撃の機会を与えてしまったりということになったと思います。

では,なぜこのような試合運びになってしまったのか。その理由は2つあると考えます。

1つは,この試合の2つ目のポイントで書いたように「千葉に対する狙い」があったからという理由です。

そして,もう1つが「前節の失点の仕方が影響した」からではないかという理由です。前節の甲府戦では,自陣でビルドアップをしようとしてミスが生まれてしまい失点するシーンがありました。そのことが影響して,つなげる場面でもセーフティーに蹴るという選択をしていたのではないかと考えてもいます。

この試合では,試合をコントロールできなかったことは致命傷とはなりませんでしたが,試合後の監督コメントからも,このことは問題視されていることが読み取れるので,次に向けてのいい反省材料にしてくれればいいなと思います。



2.勝負を分けたのは,ほんの少しの自信の差〜J2第4節 vs愛媛FC〜

山口が連勝をかけて乗り込んだのは,愛媛のニンジニアスタジアムでした。結果は,1-2で敗戦でした。これで開幕4試合の成績は1勝3敗となってしまいました。

この試合も,どっちに転んでもおかしくはないといった内容の中,勝ち点を1つも取れないもどかしい展開になったと思います。今回はここの部分を考えていきたいです。

まずは,愛媛の攻撃のクオリティが素晴らしかったということです。愛媛は3-4-2-1のフォーメーションで,左から組み立てて右で仕掛け,仕留める形を狙っていたように見えました。その中で,山口の4-3-3のフォーメーションとのズレをうまくついて攻撃を展開していました。

このフォーメーションのズレというのは,愛媛の左サイドには,CBの前野・DHの野澤・WBの下川・シャドーの神谷と4人がいるのに対し,山口の右サイドはWGのパウロ・IHの佐々木匠・SBの前と3人しかいないことにあると思います。山口が人数を合わせるためには,アンカーの三幸が出ていくか,CBのドストンが愛媛の1トップの藤本を捨てて神谷につくか,といったようにどこかを捨てて,はめにいく必要がありました。

山口は,そのリスクを頭に入れながらも前からはめにいく選択を取りました。愛媛はそれに対して,ビビることなく剥がすことにチャレンジした結果,2点を取ることができたと思います。

1点目は,前野が神谷に対して山口のディフェンスラインの背後にボールを送ったことが起点となりましたが,このプレーも噛み合わせの悪さをうまく突かれた形だったと思います。

前野がロングボールを出すとき,山口のマークはこのようになっていました。

前野-パウロ,野澤-佐々木匠,下川-前,神谷-ドストン

この場面では,ドストンが神谷を見る形となり,前野から神谷がボールを受けようと,下りていくところにドストンが食いつき過ぎてしまいました。さらに,下川も下りてパスを受けようとしたために,前も少し食いつきました。この瞬間に空いた山口の右サイドの裏を神谷は見逃さず,一気に前方に走り出し,前野がその裏を目がけてパスを送ったことで,ドストンは裏を取られ,山口の対応が後手に回ってしまい,失点に結びつきました。

2点目も愛媛の左サイド後方のビルドアップから得点が生まれました。この場面は,愛媛が右サイドでボールを奪うところから始まっています,そのボールをGKに戻して,そこからの展開となるのですが,この岡本がボールを持っている瞬間山口のマークがどうなっていたかを確認してみましょう。

前野-パウロ,野澤-佐々木匠,神谷-前

この3人の関係だけを切り取るとこのようになるのですが,ポイントは神谷がサイドに流れて前に自らをマークさせていることです。この結果,下川をマークする選手が瞬間的に誰もいなくなっており,ここを使われました。

岡本がボールを持った後,彼が野澤にボールをつけ,それに対して佐々木がアプローチを強めたものの,野澤が冷静に下川にパスを送ります。そして,下川→田中→神谷とつながれて,神谷から逆サイドの長沼に展開された結果,山口の選手7人が一気に置いていかれることになってしまいました。下川に入った後は全て後手後手の対応になってしまっているので,失点は仕方がなかったと思います。

このように見ていくと,2点とも愛媛の攻撃が素晴らしく,前線からのプレスを見事に利用された形だと思うので,山口のPA内の対応について言及するのは酷かなと思います。

失点シーン以外にも,前野のところにプレスにいって剥がされて,ピンチを迎えるシーンは何度かあったので,チームとして前野のところにはいかないという判断もありだったのではないかと思います。

後半は吉濱を三幸の隣に位置させるダブルボランチの形を取り,愛媛のシャドーの2人に対するマークをはっきりさせたこと,佐々木をトップ下において工藤と2トップ気味にプレスをかける場面も作ったことで,その問題が少しは改善されたように見えました。


次に,私がこの試合の勝敗を分けたと思う点について書いておきたいと思います。それは自信の差です。

これまでは山口の守備に対する愛媛の攻撃について書いていましたが,ここからは逆も見ていきたいと思います。

愛媛は5-4-1のブロックを敷きながら,前方へのアプローチを探っていくという守備を採用していたようでした。この守備に対して山口は,ディフェンスラインの裏にボールを蹴り込んでチャンスをうかがう展開が多かったように見えました。

この試合の監督コメントの中でもこの話題は語られていました。

— 前線へのロングボールが多かったように見えたが、指示だったのか
 選手たちの判断です。相手は引いてブロックを作ってから前向きにプレッシャーをかけて、カウンターを狙っていると思っていました。そこにショートパスだけで相手に引っかかってしまうリスクがあるのであれば、ロングボールを使って相手DFを後ろに走らせるということを織り交ぜながら攻めていこうと話していました。

前線に蹴り込むシーンが多かったのは,選手たちの判断であり,それはショートパスをつないでいくと引っかかるリスクを考慮してのものだったようです。

ここからは,画面を通して見ていたものの意見となりますが,この試合の特に前半,山口は蹴りすぎたと思います。もっとビルドアップからつないでチャンスを作ることができたと感じています。

そう考える理由は,愛媛の守り方にあります。愛媛はブロック作って守る時に,自分たちのブロックの近くに立っている山口の選手を意識しすぎて,穴を開けてしまうことがあったからです。

基本的に,守備者はボールの移動中にスライドすることが鉄則だと思いますが,そうではないシーンも多々ありました。

例えば、 前半9分30秒あたりのシーンです。三幸から愛媛のブロックの外でパスを吉濱が受けました。吉濱に対して田中が中途半端にプレスをかけた結果,間が空き吉濱から山下へのパスが通りました。この後,最終的には瀬川に渡ってクロスまでいけています。
それから前半16分10秒過ぎに,ドストンがボールを持っている場面もチャンスになりそうでした。ドストンの近くにいる三幸に対して,相手のボランチの野澤がかなり食いついています。この野澤が空けたスペースに佐々木匠が下りてボールを受けようとしていますが,この瞬間,佐々木匠はフリーです。ボールを要求していますし,三幸もそこを指差しているように見えます。ここ(16分15秒)でドストンから佐々木匠にパスが通れば,大チャンスになったかもしれません。

このように,前方に出てきてくれた時にできる穴を自信を持って突いていけばもっとチャンスを作れたと思います。

前線からプレスにくる山口にビビらず,その穴を的確に突いて点数を取った愛媛と,突ききれずに前線へロングボールを送り込むことを選択した山口,このビルドアップに対する自信の差が勝敗を分けたと言ってもいいのではないでしょうか。


3.今後勝ち点を積み重ねるために必要なこととは?

愛媛戦は長くなってしまいましたが,ここまで開幕4試合を振り返ってきました。今後山口が勝ち点を積み重ねるために必要なこと,それは2点あると考えます。

1つ目はCB陣の成長です。山口のサッカーはCBに求められていることが特に多いと感じています。攻撃的なサッカー故に生まれる広大なスペースを守らなければならないことや,ビルドアップの場面では,攻撃の第一歩としての正確なプレーをすることが求められていると思います。

おそらくこの要求は,監督もCB陣が応えられると思ってしていると思いますので,大きな期待を持ってこれから見ていきたいと思います。

2つ目は,自信を持ってプレーし続けることです。千葉戦,愛媛戦の振り返りにも書きましたが,甲府戦の失点シーンが頭をよぎっているのではないかと思われるプレーの選択が,ここ2試合見られていると感じています。

では,ビルドアップから相手を崩そうとすることは山口にとって,そんなにリスクなのでしょうか。

私が思う答えはノーです。山口には,自信を持ってプレーできるだけの成功体験があると思っています。

例えば,千葉戦の5点目は10人の相手とはいえ、完璧に相手を崩して得点を奪いました。愛媛戦の73分頃のシーンでは,楠本から素晴らしいパスが左サイドの山下に通り,いいトラップからのクロスで高木大輔のシュートに持っていきました。

この他にもそれぞれの試合で,ディフェンスラインからボールを運んでいって決定的なチャンスを作っているシーンはあるのです。

レノファ山口はやれる

このことは,開幕4試合で示したと思います。あとはそれを90分続けること。そんなチームに対して私ができることは,その期待を持って神奈川県からDAZN越しに声援を送り続けることだと思ってます笑。

まずは,ホームの維新で勝つこと。「やれる」という感覚を持ち続けるためには,それが必要なのかもしれません。明日の栃木戦,大いに期待をして応援したいと思います。


*選手の敬称は略させていただきました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?