雨は雪雪は花花は雹雹は礫礫は日の光

文字盤を遮る甲虫の影に
規則的な瞬きが映っている
ノックノック、
電話線が一枚の曇り空の
身じろぎを数えて正しく改行する
金星が差し込む毎朝同じ時間に
私の筆跡を
逆さまに転写したビニールに包まれて届く
最終稿の断面の
脈絡を繋ぎ合わせても
夜になると
きらきらこぼれる隙間があいている
ノックノック、
丸い窓はどれも
溶け出した砂糖が表面にひび割れていて
耳を澄ますと
私の名前の一層が
ノイズのあいだでミミズ腫れになっている
ノックノック、
萎れていく風船から
うまれたばかりの熱帯雨林が少しずつ吹く
新しい靴で彼女が来る
そのこれからここまでの足跡を
繰り返しずっと夢に見ている

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