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HLAB Alumni Interview #8-3 吉田茉祐(副委員長として意識していたこと)

HLABは2011年以来、高校生、そして大学生の多くの参加者が、各々のフィールドで活躍しています。

今回は、HLAB Alumniにインタビューをしていく企画第8弾として、2012年参加者、2014年House Leader、2015年実行委員、2016年副委員長だった吉田茉祐さんのインタビューを掲載します。

インタビューは4回に分けてお送りしてまいります。(第1回/第2回/第4回

第3回は、副委員長として心がけていたことをお伺いします。2015年度の経験をどのように学びに変え、副委員長としてのポリシーに反映させていたのか、詳細にお話いただきました。

──2015年と2016年、大変だったエピソードと、どう乗り越えてきたかについて、教えてください。

吉田:まず2015年は、一番近くにいたはずのチームメンバーが辞めてしまったことが大きなショックでした。「HLABのことが好きで帰ってきてくれる人が増えて欲しい」という想いがあって2015年帰ってきたのに、一番近くにいた人が辞めてしまったこと、そして何もできなかった自分へ猛烈な嫌気を感じました。

その反省は、2016年の活動に活かしています。2015年は業務量に対する人数が圧倒的に少なくて、全員がキャパオーバーしているのに、誰もケアできていないことが一目瞭然でした。そこで2016年の組織改革の時では、いかに一人当たりの仕事量を減らすか、いかに一人一人のメンバーに目を配れる体制を作るかを軸に、組織のあり方を変えました。
それから、副委員長として東京のメンバーを守る立場になっても、なるべく全員の精神状態や仕事量を完璧に理解して、課題や悩みがあった時に察知して手を差し伸べられるようにしました。勿論、委員長・副委員長で見られる範囲/深さは限られているので、各チームの統括者にもチームメンバーのケアを徹底してもらいました。

──「チームメンバーの仕事量を見て」とか「手を差し伸べる」と言うのは簡単だけど、実践するのは難しいような気がしています。吉田さんなりのやり方やコツはありますか?

吉田:副委員長という立場であっても、「自分は同じチームのメンバー」であるという雰囲気を醸し出すことを意識していました。一人一人のメンバーと信頼関係を作り、何かあった時にいつでも声をかけてもらえるような環境作りを、委員長と一緒に心掛けていました。

また、チームのミーティングも、なるべくフランクな雰囲気で進めるようにしていました。2015年のミーティングはかなり緊迫した雰囲気でやっていたので、2016年は反対意見も個人に対する攻撃ではなく、より良いサマースクールを作るための客観的な意見であると、全員が共通認識を持てるような場を作る工夫をしていました。

──確かに、初めてHLABのミーティングに行ったのも東京でしたが、その時のミーティングの完成度は今でも忘れられません。

吉田:完成度とは何でしょうか?

──学生のミーティングなのに、これほど構造化されているのかと衝撃でした。

吉田:確かにフランクとは言いつつも、アジェンダに沿って淡々と進めていたかもしれません。チームで良い関係を作るのと、優しくして甘やかすのは違うことだと思います。

例えば、何らかの事情で仕事を進められていない人がいたとして、それが組織としてのアウトプットに影響を与えているとします。そうした時、他の人にその仕事を任せるのは簡単ですが、私はそうしません。なぜ仕事を進められていないのか、その原因についてきちんと本人と話し合った上で、この状況を解決する方法を一緒に考えるようにしています。アウトプットを出すことは大事ですが、それ以上に、メンバーと真摯に向き合い信頼関係を作ることの方が、最終的にHLABが目指すゴールに近づけるという信念だけは譲れませんでした。

──2016年の時に見ていて思ったのは、オンオフのメリハリがはっきりしているということを感じました。

吉田:それは意識してやっていたことかもしれません(笑)オフの時は仕事の話をせずに、個人として仲良くなれることに全力をかけていました。仕事の時ほど気を張らずに、割とゆるっと自分の人間らしいところも知ってもらうことで、少しでも距離が近づいたら良いなと考えていましたね。そういう意味でオンオフがかなりはっきりしていたと思います。

──どこかで仕事が進んでいない箇所があって、組織に影響を及ぼしているという時に、ちゃんと物事を進めるために意識をしていたことはありますか?

吉田:組織のアウトプットだけ考えれば、進んでいない仕事をできる人に渡せば簡単に解決します。しかし、本人のモチベーションや成長を考えたら絶対にそうした対応は避けたかったので、まずは本人にしかできない仕事・本人がやりたい仕事をしっかり確認しました。他メンバーに譲れる仕事はチームメイトに分配し、本人に残った仕事をどう進めるか一緒に考え、最後までしっかりフォローして見届けるようにしていました。

また、そうした事態を事前に防ぐことも大事だと思います。チーム統括から随時チーム内の業務状況を共有してもらっていたので、事態を予測できた時は早めにチーム統括と業務を再配分したり、本人に状況を聞いたりしていました。

──2016年の苦しみの話をお願いします。

吉田:2015年で人事を担当して強く感じたことが、殆どのECは高校生を第一優先に考えているということです。勿論、高校生に向けたプログラムなのでそれは間違っていません。ただ、大学生のためにどういう組織にするべきか、どういう活動をするべきかを考えている人が全くいなかったので、そうした体制に疑問を感じていました。

そこで、自分だけは大学生の味方でいたい、大学生のことを全力で守る人でありたいと思いました。それが自分のモチベーションになって、あの組織改革に取り組めたのだと思っています。

高校生としてサマースクールに参加してから4年。HLABの組織改革に大学生として取り組んだ。

──では、組織改革の内容について教えてください。

吉田:2015年は地域横断の部署はなく、地域を超えた活動があるのは人事と高校生選考のみで、基本的には各地域が独立して活動をしていました。また、ECは運営の企画・実行のみ、HLはセミナー設計・当日のサポートのみとEC/HLの役割分担は非常に明確でした。

この組織構造を抜本的に変えたのが2016年の組織改革「ワンチーム制」です。まず、HLという”役職”をなくし、全ての日本側大学生をECにしました。ECは地域で採用された後、全員いずれかの部署(人事/企画/会計/広報/参加者対応)に所属してサマースクールの「オペレーション」を担うことになります。そしてその中からHLも希望する方は、部署と兼任する形でHLという”役割”も担う仕組みに変えました。HLを兼任しないECは地域内のある部署の統括者を担い、チームのマネジメントを任せることになりました。

これにより同部署内の地域間の連携が可能になり、情報共有や統一した進捗管理ができ、さらには地域間の交流が活発になったり、HLAB全体としての団結感が生まれたと思います。加えて、EC/HLの壁がなくなったことや、ECを増やしたことで一人あたりの仕事量を減らせたことも「ワンチーム制」の大きな成果だと思っています。

HLABに対する大学生の向き合い方に影響を及ぼす大きな変化だったので、改革を提案した際は多くの課題が指摘されました。特に議論になったのは、HLだけでなくSLもECに含めるかどうかについてです。

この議論をしている時期は、ボードメンバーの殆どが反対していたので、議論が白熱して、雰囲気が悪くなることも多かったです。それがとても辛かった。ただ、私は、SLもECの一員にすることで、HLABへのコミットメントを高め、さらにはHLABが好きでまた戻りたいという想いに繋がるのではないかと信じていました。また、ECが増えるほど仕事量の分散も可能になるので、業務以外にかける時間を増やすことができ、全ECのモチベーションにも影響する大きな機会だと思っていました。

一方で、多くのSLは夏休みに入る5~6月頃まで学業で忙しく、頻繁に連絡も取れないのでECとしてオペレーションを任せるのは難しいという意見を多く受けました。正確で細かなコミュニケーションを取れるほどの英語力を全日本側大学生に期待するのも難しいなど、様々な反対意見を受けたのを覚えています。

最終的には、SLはECには含めないという結論に辿り着きました。個人的には悔しい気持ちもありましたが、この議論の過程で様々な人の反対を受け、組織改革提案書を修正して再提案し、またダメ出しを受けるということを繰り返した2ヶ月間は、自分にとって宝物だと思っています。自分の人生で最も「絶対にこれを成し遂げたい!」と強く想い、色んな人の意見を吸収しながら、一つの方向に向かうために努力した時間だったと思っているので、後の人生に活かすことができる苦しく、素晴らしい経験でした。

──HLABを通して自分がやりたいことは何なのか、ということを考えるようになり、自分がやりたいことを周りの人に反対されようとも突き進む、信念は曲げない、ということを学んだのもHLABの一つの収穫だったと書いてくれていましたが、そういう思いは今のような体験からきているのですか?

吉田:そうです。それに加えて得た学びが、いかに多様な意見を一つにまとめていくかということだと思います。全員が100%納得でいるアウトプットを出すことは難しい中で、どうしたら少しでもみんなの「納得感」を得ていくかを考えさせられました。「根回し」とも言えるかもしれませんが、当時はボードメンバー全員と個別に話す機会を作りました。信頼関係を作って、率直に意見を話してもらい、それに対し「こういうやり方だったらどう思う?」というように、相手の気持ちを理解して上手く提案に反映することで、最終的に納得してもらえたことが多かったと思います。揺るぎない信念を持つことと、プロジェクトを一つにまとめるコツを身に付けられたんだと思います。

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