【読書】測りすぎ なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?

amazonで勧められて気になって図書館で借りて読みました。

企業でも病院でも軍隊でも、現代社会のあらゆる組織で測定至上主義やKPI管理主義が蔓延り、その弊害が現れてきていると訴える一冊。

本書の主張は少しバイアスがかかっていますが、自分の実体験と重なる部分が多かったです。

たとえば、測定至上主義の組織では情報の歪曲が生じてしまうという文脈の中で、「求められる成果が複雑なものなのに簡単なものしか測定しない」という問題点が挙げられています。

この点は普段から感じていて、とにかく数字での検証実績が欲しいために、様々なパラメーターが絡み合う難しいシミュレーションに際して、「ざっくりでいいから数字出してよ」とよく上司から依頼されます。

そうするとまったくのインチキではないけれど蓋然性の低いシミュレーションができあがり、それが「ざっくり試算」のはずなのにいつの間にか「聖典」と化してしまった、なんてことになりがちです。

他にも「標準化によって情報の質を落とす」という指摘にはぎくっとしました。

数字で比較するためには、比較する対象を任意の(往々にして単一の)尺度に置き換えることになり、一見すると数字で権威付けられたように見えて、その実は比較対象を本来の概念や歴史、意味から引き剥がしてしまっている、という指摘。

翻って自分が陥っていないとは言い切れない居心地の悪さを感じました。

本書でもっとも印象的だったのは以下の記述です。

MITのロバート・ギボンズは、プリンシパル(経営者)はエージェント(従業員)のアウトプットの多様性から利益を得ており、そのアウトプットの多くはどんなに数字化しようとしても、はっきり測定できるものではないと指摘している。たとえば、組織が依存しているのは従業員のエンゲージメントで、例をあげればメンタリングやチームワークに取り組んでくれるかどうかだが、これは多くの場合、報酬目的で測定実績を最大化することだけが関心事である従業員の行動とは相容れない。

個人的には膝を打つ思いでした。

僕の所属する部門も、コストダウンを至上命題とするような組織で、いくらコストダウンしたかで何となく優劣が付けられています。

が、組織で仕事をする以上は、陽の当たらない業務を遂行することだって必要ですし、モチベーションの低下した後輩の面倒を見る場面だってあります。

定量把握万歳の手抜き人事考課で分かった気になんなよ!といきがっていたので、仲間を見つけた気分でした。(←確証バイアス)

他にも外的報酬と内的報酬の関係や、測定至上主義と企業家精神の対立など、面白くて納得できる議論が多かったです。

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