Developers Summit 2023 で感じた「オンライン大規模イベント」の限界

(注) これは個人の感想です。Twitter を眺めると「初参加でしたが楽しめました」「有用な話が聞けました」のような肯定的な感想も見られましたが、そういった声を否定するものではありません。
なお、「大規模イベント」というワードは「参加者数が多い」「長時間、多数のセッションが連なる→結果として昼間の開催になる」「セッションのテーマが多岐に渡る」を指します。

2/9・10 の 2 日間、Developers Summit 2023 に参加しました。

初日はリモートワークをしながら、2 日目は出社して仕事をしながらの参加でした。

何に限界を感じたのか?

自分自身の参加スタイルとも重なりますが、
「参加者の多くがイベントに没入していない」
と感じたこと、に尽きます。

Developers Summit にはオフライン時代からたびたび参加してきました。

2020 年はすでにコロナ禍が始まっていましたが、2 月前半のギリギリのタイミングでオフライン開催されたのを覚えています。

その後は一部を除き IT 関連イベントや勉強会がオンラインに以降していき、当初は、今まで参加が難しかった層、例えば地方の人たちが大規模イベントに参加できるようになるなどのメリットが注目され盛り上がった面があったように思います。

ただ、従来からの参加者層が、オフライン時代は

  • 会社の業務として参加

  • 会社を休んで参加

だったのに対し、コロナ禍・在宅時代は

  • リモートワークをしながら(仕事を休まずに)参加

が増えたように思います。

その後、社会情勢が変化して

IT 関連の企業はリモートワーク率が他業種と比べて高いとはいえ、それでも出社回帰が進みました。

私のように出社しながら参加する人もいなくはないのですが少数派でしょうし、仮に参加したとしてもチャットや Twiiter、oVice のような交流スペースへの参加は難しいでしょう。

せいぜい、登壇者がいる会社の出社メンバーが、その登壇者のセッションでワイワイ内輪で盛り上がる、ぐらいだったと想像しています。

結果

セッションのチャットや Twitter のタイムラインが(想像上の参加者数の比で)寂しいものになりました。

正確には、私はあまりチャットのほうは追えていませんでしたのでチラチラ眺めた程度でしかありませんが、それは「仕事をしながらの参加でスマホ視聴するしかなかった」という事情によるものでした(チャットを眺めながらだと画面が小さくなってしまう)。

oVice で交流スペースが開設され、いわゆる「廊下」が再現されていたのは良いのですが、「仕事をしながら」では「廊下」への参加のハードルが高いですし、オフライン時代のように「廊下で一緒に写真を撮ってツイート」みたいなムーブは皆無(というより無理)なので、完全な「廊下」の再現には至らなかったのでは?と思います。

オフライン時代は「廊下」でなくとも会場内で登壇者以外の参加者同士の交流が生じていたはずですが、その再現を助ける仕組みであるチャットや Twitter が寂しい状況だったので、余計に…。

では、休日に開催すれば良いのか?

外出の自粛が呼びかけられていた時期とは違い、外に出かける機会が増えました。

常に一人で過ごす人はともかく、特にイベントの運営に関わる人たちを中心に、家族がいる場合はコロナ禍前よりもむしろ休日に時間を確保するのは難しくなったかも知れません。

(Developers Summit のような企業主催かつスポンサーセッションが多いイベントだと特に難しいでしょうね)

参加者も(平日開催と同様、またはそれ以上に)「必要なセッションだけつまみ食い」「外出しながら一人イヤホンで話だけ聞く」のような参加になりがちで、参加者同士の交流など、より生まれにくくなります。

オフライン開催に舵を切る?

それも一つの手だとは思いますが、オフラインに回帰したとしても

  • オフライン時代の参加者層が全員戻ってくるとは限らない(むしろ戻ってこない可能性が高い)

  • オンライン時代に新たに獲得した参加者層が離れてしまう

  • コロナなどの情勢次第で中止の可能性が出てくる

などが考えられるため、なかなか難しいでしょう。

ずっとオフライン開催にこだわってきて 2020 年(秋)もオフラインを貫いた「PostgreSQL Conference Japan」を見ても、参加人数を制限していたとはいえ、その制限に達しない参加者数にとどまるなど、コロナ禍前の「立ち見が続出していた」様相とは大きく変化しています。

Developers Boost 2023 や Developers Summit 2023 Kansai はオフライン開催を予定されているようですが、果たして…? 

ハイブリッド開催は?

おそらく多くの大規模イベントは

  • (少なくとも一時的には)ハイブリッド開催に移行する

  • 費用対効果やスタッフ確保の問題で開催を中止する

のどちらかになりそうな気がします。
すでにハイブリッド開催に移行しているイベントも出てきていますし。

ただ、ハイブリッド開催はコスト面・人員面で負担が大きく、すべての大規模イベントがずっと継続できるかは不透明です。

(いち参加者としても「推しは推せるときに推せ」を意識して行動する必要がありますね)

余談:Code of Conduct(行動規範)遵守の難しさ

少し話が飛躍しますが、ハイブリッド開催などで運営が複雑化すると、この点も考慮が必要かな?と。

SNS での炎上がイベント存続の命取りになるリスクがありますが、舵取りはこれまで以上に難しくなります。

今回、私がとある参加セッションで(ちょっと躊躇しながら)

という内容のツイートをしましたが、運営側の判断次第ではこのツイートはアウトかも知れません(実際には「感想の一つ」として司会の方にピックアップされるにとどまりましたが)。

Twitter のタイムラインを見ていても、私と同じような捉え方をした人はおらず、ほぼ肯定的に捉えた感想が並んでいました。

(もしかすると、私自身も「イベントに没入していなかったからこそ」一歩引いて話を聞いていて、それ故に完全ポジティブな受け止め方ではなく「これはちょっと怖い話だ」と感じたのかも知れません。セッション全体を通しての話はポジティブに捉えましたが、この点は「怖いな」と感じました)

一方で「見えないところに別の意見がある」可能性には留意する必要がありますし、過去には参加者の不用意な呟きではなく、セッションのテーマや登壇者が話した内容が原因で炎上したケースもあります。

どんな開催形態であれ基本は変わらないですが、「このイベントで何が起きているのか」の把握・確認が(直接目にみえる場所・見えない場所をあわせて広範囲になることが原因で)しづらくなる点に気を付ける必要がありますね。

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