見出し画像

say please -containe's story-

90年代中盤に活動し2枚のアルバムを残したContaineという女性二人組ユニットのことを知る人は日本にどれくらいいるのだろうか。運よく2枚のアルバムを所持している自分もContaineを知っている、聴いているという人には今までの人生で出会ったことはないのでこの可憐で謎めいていて魅力的な二人組についての日本語でのテキストを書いてみたいと思った。


・Containe Biography

ContaineはVersusのベーシスト/ボーカリストを務めるFontaine ToupsとAlkaline(未聴)というバンドをやっていてVersusに歌詞を提供していたConnie Lovattという二人の女性によって93年にNYのブルックリンで結成されたユニットである。この結成は自発的なものではなくChickFactor Magazine主催のイベントに出演する予定だったVersusの出演が何らかの都合でキャンセルになってしまったため、主催者がFontaineにソロでの出演を持ちかけたことがきっかけとなっている。一人での演奏に乗り気でなかったのかFontaineは友人のConnieを誘い偶発的な形でContaineは誕生した。最初のライブは2,3曲だけの短いステージだったようだがライブを目撃した主催者が7インチを作らせてほしいと即懇願するくらい聴衆からの評判も上々だった模様。当の本人たちも曲作り中やライブ中によいフィーリングを感じたらしくContaineというユニットは継続されることとなり2枚のアルバムを残すこととなる。

Versusでの活動もあり頻繁にライブを行えたわけではなかったようだが、James Mcnew(yo la tengo)やStephin Merritt(magnetic fields),Mark Robinson(unrest,air miami),Belle And Sebastianなど名だたるミュージシャンたちが彼女達のファンであることを公言しているしTeenbeat所属のTrue Love Alwaysは2ndアルバム収録曲「shy song」をカバーしリリースもしている。Belle And Sebastianのアメリカツアーのフロントアクトに指名された際にはドラムをGeorgia Hubley(yo la tengo)が担当したという90年代USインディー愛好家にとっては興奮せざるを得ない逸話も残っている。

97年ごろからConnieがThe Pacific Oceanという自身の新バンドを結成したことも影響したのかContaineでの活動は停止してしまったようだが、Versusのサイドプロジェクト的な立ち位置にしておくには勿体なさ過ぎる多様な魅力を備えたContaineが遺した2枚の音源を紹介したい。

・Containe discography

I Want It All (1994 Enchanté Records)

8曲入りの1stアルバム。CDのみのリリース。リリース元のEnchanté RecordsはContaineの初ライブに魅了されたChickfactor Magazineの主要人物がContaineのために立ち上げたレーベル。自分がこのCDを大阪のTime Bombという店で購入した際(96、7年ごろ)のポップには比較対象としてMazzy StarやThis Mortal Coilなどの名前が並んでいたと記憶している。ゴシック風のジャケのイメージに引っ張られすぎという気もするが気怠さや暗さの種類はそこそこ近い。

このアルバムはサポートドラムの入ったバンドサウンドの曲とドラムレスの曲が半々くらいの割合で収録されている。バンドサウンドの楽曲はVersusのFontaineボーカル担当曲を彷彿とさせる部分が多いが重厚さとハードなノイズギター成分が薄いためVersusよりも清冽な印象がありFontaineの繊細さや鋭敏な部分がより浮かび上がってくるような印象。ドラムレスの楽曲はやや陰鬱なNYらしい都会的な暗さを感じる曲が多い。FontaineとConnieはお互いにギターとベースを担当し歌も姉妹のように寄り添ったハーモニーを聴かせたかと思えば反目し合いお互いを突き放したかのようなツインボーカルを聴かせたりと曲ごとにキャラクターが違っていて飽きない。開放弦を使って不協和音を混ぜていく不穏な響きのギターのアルペジオや鋭角的なベースラインやピッキングのアタック音などは90年代USオルタナティブならではの空気感が感じられる。

個人的なベストトラックはグランジの定型パターンを逆手に取ったようなアレンジが印象的な「mean song」。こういった聴き手に対して裏切りや邪気を感じさせる部分がContaineの魅力のひとつでもあると思う。

Only Cowards Walk Like Cowards (1996 Enchanté Records)

拷問ジャケが恐ろしい14曲入りの2ndアルバム。ジャケの影響かどうかはわからんが自分の所持しているCDはなぜかウォーターダメージが酷い。

やや暗めの作風だった前作と比べるとアコースティックギターや16ビートのジャングリーなギターカッティング、軽やかなドラムプレイ、シンプルなキーボードのフレーズなどが乾いた軽さと明るさを演出していてMarine GirlsやFlying Nun系バンドなどを思わせる部分もあったりする。ゲストドラマーとして本格的にソロ活動する前のTara Jane O'neilがクレジットされているが、Tara Jane O'neilのオルタナティヴを通過したインディーフォーク的作風に影響を与えたのではないかと思える部分もある。

またこのアルバムは「Shy Song」「why why why」「say please」「your brother's a star」「summer」などギターポップといっても差し支えない可憐でキャッチーな曲も多い。数合わせ的なインストや詰めの甘さが残る楽曲もあるが前作よりは多様な楽曲が楽しめるアルバムと言える。歌詞に関してはFuckなど罵り言葉を多用したり残酷だったり悲痛なものが多いらしいが歌詞カードなどはなく英語の聴き取りにも全く自信がないのでもし英語教師がこれを読んでいたら聞き取りによる対訳をお願いしたいところだ。

ベストトラックはTeenbeatサンプラーに収録されTrue Love Alwaysにもカバーされた「shy song (or I want to fuck you)」。Containeの可憐なポップ性とジャケとも通じる邪悪さの両面が感じられる代表曲だ。

上記2枚のアルバムはフィジカルではかなり入手が難しいかもしれない(ただ高騰はしていないはず)がContaineの誕生に関わったChickfactor MagazineのBandcampページで2枚ともデジタルリリースされているので興味のある方もない方も是非聞いてみてほしい。

参考web文献
Containe: An Oral History  (legendary indie nerd bible)
Containe discogs
Teenbeat.Containe 

ライブ映像発見(20230817)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?