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ClubhouseによるEAT KANAZAWA

イート金沢とは

金沢市が1997年に開始した、クリエイターにフォーカスしたイベントであるイート金沢。アルファベットではEAT KANAZAWAとなる。
当初は最初のEを小文字のeで表記しており、eAT KANAZAWAだった。
そんなのが流行っていた時代だったのだと思う。

イート金沢と聞くと、美食の町金沢のイメージと重なって食のイベントだと思われるだろうが、実は違う。私も最初に呼んで頂いた2001年の頃はそうだと思っていた。

EATとはElectric Art Talentの頭文字から構成されており、冒頭で紹介した通り、デジタルを駆使したアーティストやクリエイターをフィーチャーし、金沢にそういった人達を招いて、大掛かりなイベントを開催して、地元の若者達に刺激を与え、そう遠くない未来に金沢から世界に羽ばたく才能を生み出したいという行政が考え出した事業なのである。
あの時代にそんなことを考え、実行していたとは加賀百万石の流石のセンスである。これについて詳しく書き出すと大変な量の文字数になるので割愛するが、このイベントが行政主催から民間運営に切り替わりながら、24年も続いているのだ。私もこのイベントだけは2001年から毎年参加しており、ずいぶん前から実行委員としても関わっている。

Clubhouseが話題に

毎年このイベントは1月末か2月初旬頃に金沢市内のイベントホールや温泉宿を使って繰り広げられてきたのだが、2020年の開催直後に世の中はコロナ禍となり、2021年の開催は難しいだろうと考えていた。
ところが1月のある頃に、突如として「Clubuhouse」という音声メディアがバズり始めた。もちろんこれまでにも似たようなサービスはいくつか存在していたのだが、芸能人や文化人が使い始めたこともあり、連日テレビのワイドショーなどでも紹介されて、あきらかにそれまでのサービスよりも世間を賑わせていたのだ。

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もしかしたらこのClubhouseでイート金沢を開催できるのではないだろうか? そう考えると居ても立っても居られなくなってきた。今年は無いと思っていたので何も用意しておらず、なにしろ時間が無いのだ。
ご存知の通り、ClubhouseはiPhoneさえあればすぐに始めることは出来るのだが、どうせなら高音質な環境でちゃんとした番組風に開催したい。
そう考え、外部機材の接続方法など、可能な限りの情報を調べてみたところ「あれは使えるが、これが使えない」という情報が錯綜していた。
よく分からなくなってきたので、とりあえず良さげな機材を片っ端から試してみることにした。ちょうど良いタイミングでヒップホップユニットの「下町兄弟」三十周年記念の新曲をClubhouse発表するという企画も動いたこともあり、なにしろコロナ禍は続きそうだし、ZOOM会議の音質も良いに越した事はないので、もしClubhouseで使えなかったとしても色々と使い道はありますし。

そもそも、何をしたかったのか?

Clubhouseをイベントで使いたかったので、4本のマイクをミキサーを通して発話、及びSE等のオーディオを同時にiPhoneに送りたい。
話者全員がイヤホンで同時にモニタリングしたい。
こう書くと「そんなの簡単じゃねぇか」と思えてしまうのですが、Clubhouseというやつは、思った以上に厄介な仕様のようです。
試行錯誤したものの中で、現時点で上手くいったシステムを備忘録として記録しておきたいと思うので、もし参考になれば幸いです。

試した機材

マイクBlue Yeti X / SHURE SM7B / SHURE MV7 / Aston Spirit
ミキサーMACKIE ProFX10 v3 / ZOOM L-8
Audio IF:IK Multimedia iRig Pre 2 / IK Multimedia iRig Pro Duo

Blue Yeti X

まず、Blue Yeti Xは、USB接続のコンデンサーマイクです。
リリースされたばかりですが、なんかカッコよかったので、とりあえず買ってみました。手に持つと結構ズッシリときます。重量の半分かそれ以上はスタンド部分ですが、重いは正義というか、高級感があります。
ユーザーインターフェイスもよく出来ていて、前面と背面についたツマミを回したり押したりするだけで、指向性も含めて殆どの機能にアクセスする事ができます。音質等それ以上の設定をする場合はLogicoolが提供するパソコンの専用アプリケーションを立ち上げることで、かなり細かい設定を施し保存することが可能で、LEDの色まで変えられます。これのスーマートフォン用のアプリはリリースされていないようです。

先ずはこのYeti XをApple純正USBカメラアダプタ→Lightning→でiPhone 12 Proに接続してみました。もちろん普通にZOOMでビデオ会議などには使えます。音質もとても良いようで、滑舌が悪く声の低い私でも通話相手から好評です。ところがClubhouseでは上手く動作しません。
私の声はあちらに聴こえるが、あちらの声が返ってきません。
こうなると、現時点はYeti XはiPhoneでは使えないという事になります。
ちなみにUSB-C接続だからなのか、iPad Proでは使えるようでした。

SHURE MV7

このマイクもYeti Xと同様に、そのままでは使えませんでした。
音質はすこぶる良いです。SHUREの場合はMOTIVという専用アプリがMac/Winの他にスマートフォン用も無償配布されています。
音質の設定だけでなく、コンプレッサー機能もアプリに実装されているのが嬉しいところです。Yeti Xとの大きな違いは、マイクスタンドが付いていないので、そのままでは自立しませんので、別途マイクスタンドを用意する必要があります。それとMV7にはXLR端子もついているので、USBマイクではない使い方も可能です。これも何気に嬉しい仕様ですね。
何にしても本来やりたかった事は、これらのマイクだけでは実現出来ないようです。

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SHURE SM7B+Mackie Pro FX10+iRig Pro DUO

これが最も変な結果となり、ちゃんと動いたり急に使えなくなったりしました。なぜこのミキサーをチョイスしたのかと言うと、筐体の大きさ、余裕のあるマイクアンプ、コンプレッサーを含む充実したエフェクト、コストパフォーマンス、その他諸々です。小型ミキサーとしてはとても優秀です。
そしてSHUREのSM7Bは流石の音質です。ダイナミックマイクなのに繊細な音まで拾いすぎるぐらいです。私がベテランのソウルシンガーだったら毎日何かしら録音すると思います。それぐらい気持ち良い音質です。
で、これをiRig経由のLightningでiPhoneに送ってみたところ、アプリに「音質をMusicモードにするか?」と表示されました。当然Yesのボタンを押して試していたのですが、数日後に急に使えなくなりました。アプリのアイコンがアフロヘアの兄ちゃんから帽子を被った兄ちゃんのアイコンに変わった頃です。ふざけてんなーと思いましたが、何かiRig経由で接続というのもシンプルじゃないので、他にもっとベストな方法は無いのだろうかと、機材を選び直すことにしました。

ZOOM L-8+SHURE SM7B+イヤホン変換ケーブル

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このZOOM L-8という小型多機能ミキサーが、今のところ神ミキサーかもしれません。これ単体でマルチトラックレコーディング機能まで搭載した優れものなのですが、L-8には他のミキサーでは見かけないスマートフォンジャックというのがあり、これをiPhoneについてくるApple Lightning - 3.5 mmヘッドフォンジャックアダプタと4極イヤホンケーブルで接続するだけで、なんと音声の入出力が全て可能となりました。
上記の図がその際のワイヤリング図となります。
やろうと思えばClubhouseの内容をL-8にレコーディングすることも出来たのかもしれませんが、ルール違反になるので大人だしそれは実験しませんでした。面倒でしたがイート金沢2021ではこのシステムを組めたことで、実験的ではありましたが、とてもスムーズに進行することが出来たと思います。
なぜ会場に居る話者全員を同時モニタリングしたかったのかと言うと、話者が同じ場所(とくに目の前)にいる場合、それぞれがアプリ経由で話すと若干のレイテンシでも会話のリズムが狂うんですよね。
面白くなくなるんです。
※2021.03.28時点では問題なく使えましたが、Clubhouseは予告無く突然仕様を変更するので、責任は持てません。

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以上となりますが、何かの参考になれば幸いです。

その他

マイクスタンドBlue Microphones Compass
作りもしっかりとしているし、デザインも良い。重めのコンデンサーマイクやショックマウント(このショックマウントが予想以上にデカい)を取り付けてもアームは安定しています。ただ、机等に固定する必要があるのと、なにしろ大袈裟で仰々しいです。Youtuberとかの人にはカメラ映えして良いのかもしれませんが。

何気にシンプルで良いマイクスタンドはこちらのK&M/23250が良いです。
K&Mといえばキーボードスタンド等で有名ですね。
ただの金属曲げ加工のスタンドですが、ありそうで無いプロダクトです。
高さもちょうどよく(当たり前ですが)マイクだけでなく、私は普段はオーディオインターフェイスのRME Babyface Pro FSに取り付けて使用しています。ただし折り畳んだりすることは出来ないので、持ち運びには向いていません。

マイクスタンドに関して色々と試した上で個人的な結論は、カメラ用として人気の高いManfrottoのミニ三脚 PIXIボルトアダプタを取付けてマイクスタンドとして使うのが見た目にも機能的にもシンプルでスッキリとして良いです。Blue Yeti Xはスタンド一体型なのでそのまま使えますが、SHURE MV7は自立する機能が無いのでマイクスタンドは必須となります。

iPhone/iPadスタンド:Nulaxy iPadスタンドこれが有ると視認性と操作性が抜群に良くなると思います。金属製で多少重いのですが、そのおかげで安定性も良く、使わない時は折り畳むことも可能です。

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