食道をぬけるとそこは

喉頭蓋だった。

こんばんは、火曜日のnote更新です。
先日ドックで人生初の胃カメラを受けてきた。特に心配な症状があったわけではなく、連日の飲酒で胃がダメージを受けているのではと常に不安で、35歳にもなったことだし、一度くらいは受けておこう…と決意したのだった。

胃カメラまではせめて健康に気を遣い、酒は控えて…などと思っていたが注文しておいたコニャックが届いてしまったのでやむなく毎晩飲酒していた。コニャックは香りが良く、カカオ成分高めのチョコレートと合わせると天国が見えた。これは飲酒もやむなし…。

人間ドック前日の夜は9時までに食事を終えて、この日はさすがに禁酒することにした。別に飲んでもいいかなと思ったけれど(実際午後9時までであれば飲酒は恐らく禁忌ではない)、特別な事情がない限り絶対に飲酒してしまうので今日くらいは我慢しよう…と涙を飲んで禁酒した。

朝起きたら禁食、朝起きたら禁食…とお題目のように唱えながら起床。子どもの朝食を準備しなければならないので、うっかりごはんや焼き魚を口にしないように気をつける。白湯を飲んで空腹を誤魔化してから家を出た。

緊張しながら病院に到着。採血など他の検査を回った後、とうとう内視鏡室に入室。まずは喉の麻酔をやることになった。冷やして固めた麻酔を舌の上でゆっくり溶かして飲み込む。お腹がぺこぺこだったので麻酔の味も美味いような気がしたが、しばらく飲んでいるとわざとらしい甘さが際立ってウプ……となり、まだ検査も始まっていないのに不安が募った。

今回鎮静なしの胃カメラを選択したのだが、担当の看護師さんに"鎮静をしないなんて、こいつ正気か…?"みたいな顔をされ、その後内視鏡室に入ってきた担当の医者にも"本当に鎮静しなくて良いんですね⁈"と10回くらい念を押された。

鎮静オプションがあるのにつけないのはそんなにおかしいことなのか…?一度は鎮静なしでやってみたかったんです…と必死に弁解するが、却って困惑されるばかりで逆効果だった。ものすごいマゾヒストだと思われたかもしれない。違うんです…ただ私は胃カメラを受ける患者さんの気持ちを理解したくて…。

喉の麻酔が効いてきて、抜歯する時みたいに口から喉のあたりの感覚が鈍麻する。喋りづらいし飲み込みづらい。マウスピースを噛まされてとうとう検査が始まった。

"リラックスしてくださいね〜"と言われたしもちろんそのつもりだったが、カメラが喉のあたりに来た瞬間即、オエー!!(AA略)となった。

なんだこれ、キツすぎる!鎮静不要と言い切った手前、必死で嘔吐反射と戦うがひとつの波を乗り越えても次々とオエー!!の波がやってきてめちゃくちゃしんどい。

私がオエオエしている間にファイバーはするすると奥の方まで入ってだいぶしんどさの波が去る。スムーズだったので上手な先生だったんだと思う。胃の辺りまで先端が入ってしまうと、ものすごく固いうどんが喉の奥を通っている感じが残るだけで、なんとか耐えられるレベルの違和感まで苦痛が軽減した。

鼻呼吸を繰り返し、家にいる文鳥のことなどを考えて喉奥から意識を遠ざける。喉奥のことを考えてはならない。文鳥よ、私は頑張っています…などと思いを馳せて意識を逸らす努力もむなしく、カメラの角度の具合でファイバーが喉奥の上の方を擦ると再び即オエー!!であった。

途中からは余裕が出てきて、モニター画面を眺められるようになった。毎晩飲酒しているから胃がめちゃくちゃなんじゃないかと心配だったけれど、驚くほど綺麗な胃の粘膜が見えて感動した。消化器の教科書に正常例として載ってるやつじゃん。色も綺麗だしキメが細かいなと思った(消化器専門ではないので適当なことを言っています)。

モニターを見て余裕をかましていたが、十二指腸までカメラが到達するとかなりの圧迫感があり、オエー!!が復活した。幸い十二指腸潰瘍などもなく、引き抜きながら胃の観察、この機を逃すまいとモニターを見続ける。胃の観察が終わると次は食道、段々ファイバーが引き抜かれて、高速道路のトンネルを通っている時みたいに映像にスピード感が出る。食道も異常なし。食道のトンネルを抜けた後、声帯と喉頭蓋が見えて、あー!これが教科書で散々見た喉頭蓋!と思った。自分のを見るのは初めてだった。

終わった後、同じドックを受けにきていた同僚と合流したが、同僚は以前鎮静ありの胃カメラを受けたことがあり、今回は鎮静抜きにしたところ地獄を見たと言ってしばらくぐったりしていた。
確かに初めての経験で面白さが勝ってあまり意識はしなかったけれど、オエー!!がかなり頻繁で苦しかった。鎮静で何も気づかない間に全てが終わるならその方が良いのかもしれない。胃カメラにエンタメ性を求めるのは間違っている…。

インターネットで内視鏡に関するサイトを見ていたら、鎮静なしの口から>鎮静ありの口から>鎮静なしの鼻からの順で苦痛が大きいと書いてあり、"患者さんは当然、苦痛が少ない方を希望されますよね😄"と記載があった。そもそも鎮静剤が使える体質なのに使わないなんて意味不明だったっぽい。看護師と医者が困惑するわけだ…。普通にしんどかったので次回からは鎮静あり、もしくは鼻からにしてもらいます。次はオエー!!なしの検査にするぞ。


Big Love…