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人が大好きになっていく。

仕事中のマスクをとりました。
レジ業務をするうえで、そのタイミングにいつも迷っていました。

店長からはずいぶん前からもう許可は出ていて、自己判断となっていたのですが、私は年相応の顔なのでマスクをはずしたとたんお客様に「あの人結構年だったんだな」と思われるのが嫌だなあと思うところが正直あり、
「顔をさらす」という事に戸惑っていたのです。
お客様も、まだしているし・・などと自分に言い訳をしてマスクをはずすことを伸ばし伸ばしにしていました。

でも昨日はすごく暖かくて、夏を思わせるような陽気だったため、真夏には確実にもっと多くの人がマスクをとり、はずさざる負えなくなる日が近々来るであろうことを感じました。

この顔に慣れていただかなくては。
そもそもだれも私の顔なんて気にしちゃいない!
今日からはずしてみようと決めました。
朝礼では私一人がマスクをしていませんでした。


大型店がたくさんある中で、私の働いているスーパーマーケットはどうにか必要なものは揃えられるというような小さな店なので本当に近所に住んでいる方が、便利にしてくださっているような存在なのですが、
そういう客層ということもあって、同じ方が何度も訪れるため、たいていの方と顔なじみになります。

いつもめちゃくちゃ優しい口調で必ず声をかけてくださる高齢の男性のお客様がいました。
「今日は出勤の日なの?えらいねえ」と決まり文句のように始まり、あきらかに「若い子」に言うような口調だなあと、もし勘違いされていたら申し訳ないなあといつも思っていた方が、その日は朝早くからご来店されギクッとしてしまいました。
ちょっと目があった時、そのお客様が明らかに驚いているような表情をされたような気がして、うわーやっぱり勘違いしていたのかもなあ!とトホホな気持ちになりつつ、「いらっしゃいませー」と一生懸命ニコニコしながらお買い物カゴを受け取ります。

いつものように
「今日は出勤なの?」とまた言ってくれるかなあ。
なぜかそんなことを考えつつドキドキしていると

「髪型変えたのー?」

ああお客様も戸惑って、何言っていいかわからなくていつもと見た感じがちがうことを年のせいじゃなくて髪型のせいにしようとしてくれたんだ!と、そのあたたかなお気持ちに感謝しつつ、しかしなんて答えたらよいのかと頭の中がぐるぐるしてしまい、マスクはずしてみましたとか言ってみる?いやそこわざわざ避けてくれてるのにその話題はまずいでしょ。えへへみためちがいますよね、とか?お気遣いありがとうございますとか?いやだから・・・とバカみたいに自意識過剰になってしまい、

「え?いえ、変えて、ないです。あは」というのが
精いっぱいでありました。あは

必要以上に人の目を気にしている自分にうんざりしながらも、でもマスクをとったらこのお客様にお会いするのが一番怖かったかもしれなかったので、そのお客様をクリアしたことでちょっとホッとした自分を感じました


自分がお客として良く行くスーパーマーケットのとても感じの良い人をふっと思い出しました。
それは笑顔がとても素敵な人で、ナチュラルな丁寧さとお心遣いを感じるような明るさがあるのです。他の方だってもちろん嫌な雰囲気なんてないのに、その人はあきらかに良いオーラをまとったかのような雰囲気で、どこにも過剰さがなく、対面しただけでこちらも笑顔になってしまうような接客をしてくださる方なのでした。

その人のことを考えていたら自然にニコニコしてきました。
ニコニコすると自分の気持ちもニコニコしてきます。
ニコニコするとお客様もニコニコしてくださいます。
そしてその日はなんだかいつもよりたくさん話しかけられました。

「今日はたけのこごはんにしてみようと思うのよ。」
「これおいしいのよ。あなたも食べてみて」
「酒ばっかり飲んでアル中は困るねえ(たしかに一日に2,3度お酒を買いにいらっしゃる・・・)」
「これ孫に買っていってあげるの。大好きだから」
「おたくのやきいもがこの辺では一番おいしい!大好きです」
「あなた八重歯あるのね。」
「息子がね重いものを運んでくれるって一緒に来てくれたのよ」
「ポイントがたくさんつく日って明日よね?」

「綿菓子」を買われていたお客様がいて、袋の柄もかわいかったので会計をしながらこれもお孫さんにかなとふと思っていた時、そのお客様が言ったのです。
「これね、懐かしいなとおもって。孫に買うわけじゃないのよ。自分でテレビとか見ながらちょっと食べてみようかと思って」
そんなことをお話しされるとは思っていなかったので、ちょっと返答に迷い、そんなふうに思って綿菓子を買うなんてかわいいなと思いつつかわいいですねともいうのも変かなと思いながら、「ふわふわしていて甘くておいしいですよね」と言ったら「だといいけど」と照れたように笑っていらっしゃいました。
夕方その方のことをまたふっと思い出して
でもどうしてそんな話をわざわざ私にしたのかなと考えました。そして亡くなった一人暮らしだった母のことを思い出し、母もそんなふうに子供の頃食べたお菓子を買ってそっと一人で食べたことがあったかもしれないなと思いました。そして、そんな時には誰かと話がしたいと思ったり一人を寂しく思ったかもしれない…
あのお客様はきっと「綿菓子」はおいしいから食べたかったのではなくて昔を思い出したから食べてみようと思ったのではないかな。きっと、ご両親やご兄弟との楽しかった日々を思い出されたにちがいない…
ああ、あの時私は
お客様にもっとちがう言葉をかけてあげれなかっただろうか・・・・。


いつもなんとなく、目でやさしく挨拶してくださるような方がやはりマスクをはずされていて、私をみるなり、「あ!そうよね。」と照れたように笑われました。きっと「あ、マスクをはずそうといつも思いながら、でも今日はずしてみようと思ったのよね。あなたの気持ちわかりますよ」と言ってくださったような気がして、私も「あ、はい」と言いながら、なんだかくすぐったいような気持になったのでした。


また、私が働いている店は、チャージをして払う支払方法があるお店なのですが、残高が足りない時ポイントと組み合わせると本日のお支払いは問題ないことや、ちょっとしたお得情報などをお伝えすることでとても感謝され、「あなたみたいに親切に言っていただいたことはない」と喜んでいただけた時には、そんな風に言っていただけたことに驚き、お店の仕組みをもっとよく理解してどんどんお客様のサービスにつなげていこう!と思いました。


たかがマスクされどマスク
この1枚のマスクをはずしたことで、思っていた以上にいろいろなことを思うきっかけになりました。
この一枚の隔たりを無くすことで、人の気持ちを近づけることが出来るのかもしれないと感じました。

そして、お客様にとっての「適度な」あたたかみや優しさ嬉しさというのはどういう時に感じていただけるのだろう。ということを改めて考え、
このことを常に意識し「自分の接客」にもっと磨きをかけていきたいと感じました。

声をたくさんかけていただいたぶん私もたくさん声を出し、またたくさん笑ったように思います。
そして、そうするとどんどん人と接することが楽しくなり、人がどんどん大好き人なっていくんだなあなんてことを改めて感じました。

それは言葉にするとなんだかきれいな話みたいになるだけですが、驚いているというのが実感としてあります。

お客様の笑顔にすごく幸せを感じるということに驚いているのです。
ここまで感じたことは今までありませんでした。
対面や電話やらの接客を経て、「接客業」の深さに気づいてきたのかもしれません。

人が大好きになっていくって、なんだか嬉しいなあ。




最初の画像にもちづき ちぃさんのステキな作品を使わせていただきました。ありがとうございました!


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