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【無料で楽しめる美術・博物館】分解して、それをまた新しいかたちに。東京理科大学数学体験館

おもしろいものが観れて、無料だったら!
東京にあるそんな美術館や博物館、ギャラリーなどをご案内させていただきたいと思っております。

今回ご紹介するのは東京都新宿区にあります、
東京理科大学数学体験館です。


きっかけはこの一冊の本でした。

北斎の有名な作品「冨嶽三十六景」の一つである「神奈川沖浪裏かながわおきなみうら」が表紙裏表紙を飾っています。「グレート・ウェーヴ」として世界的にも有名な作品です。
この本では、北斎が意図したと思われる偶然ではない構図を数学的に分析し、同時に「数学とは何か」といった著者の研究や考えが併せて紹介され、興味深い内容となっています。

著者のプロフィールをふとみたところ東京理科大学理工学部数学科卒業とあり、この大学にたしか数学の博物館みたいなところがあったようなと思い出しました。
調べてみたところ、数学体験館という場所があるということがわかりました。おもしろそう!しかも無料です!
行ってみることにしました。

東京都新宿区神楽坂1-3
東京理科大学二村記念館近代科学資料館地下1階
03-5228-7411
開館時間:水・木・金12時から16時・土10時から16時
休館日:月・火・日・祝・大学の休業日
入館無料

「数学体験館」は大学の校舎とは少し離れたところにある建物地下一階にありました。
会場内は下記の図のような配置で様々な数学原理を体験できるようになっています。

受付を済ませ、会場に入ると、私はすぐに1人では展示の意図が全く理解できないことに気づき、あわてました。さきほど受付で「会場内にいる人に聞いてもらえれば展示物について説明いたします」と言われていたことを思い出し、すぐそばにいた若者にすがりつく勢いで声をかけました。

その日は若い人たちが10人くらいいました。彼らは理科大学の生徒さんだそうでここでの会場案内はアルバイトなのだとか。校舎はすぐ隣で、「この後も授業に行くんです」と笑っていらっしゃいました。
まず数学科の女の子が説明してくれたのは「サイクロイド滑り台」というものでした。

画像はサイトよりお借りしました

直線、円弧えんこ、サイクロイド曲線、楕円弧だえんこの4種類の滑り台があります。
学生さんは「どのレーンが一番はやく玉をころがすと思いますか?」と言います。「うーん。やっぱりまっすぐな坂道がはやく玉が転がって一番にゴールするんじゃないですか?」と私。
「ではやってみますね!」
さて、結果はどうだったかというと・・・
是非皆さんもこの会場に行って実際にみていただきたい!!
これは、最速降下問題と呼ばれる問題で、ヨハン・ベルヌイやオイラーなど17世紀から18世紀の数学者によって研究されたのだそうです。

私はもうのっけから驚かせていただきました!
こ、これが数学か!と。

もうすべてそんな調子で私の数学体験は続きます。
サイズ8×5の長方形の缶ケースがあり直径1の缶はいくつ入るかという問題がありました。もうすでにきれいにケースの中には40個の缶が入っているのです。そばに缶が一つ置いてあります。
え?だって8×5の入れ物に40個の缶だよね?それしかないよね?という私の思考。きれいに詰めてあるそれをこわすことができません。
そう、できなかったんです。そのままその場所を離れました。
そのあとお父さんと来ていた小学生くらいの少年が「できたできた!」と言っているのが聞こえました。え?できた?どんなふうにしたの?と思いました。こっそりのぞいたら・・・ええっ!
いや、これも是非皆さん会場でお試しいただきたい!(笑)
隙間ができる方がたくさん入るなんて!
ちなみにパッケージに詰まっているたばこもこれと同じような状態になっているのだそうです。

おなじような考え方で「正方形の詰め込み」というコーナーもありました。
一辺の長さが3.9の正方形の箱に単位正方形(一辺の長さが1)を最大いくつつめこむことができるでしょうかという問題なのですが、うまく詰め込むと11個入るというのです。
これもやはり私にはできず、先ほどとはちがう少年ができたできたと喜んでいました。これはほんとにほんとにぜんぜん予想もできなかった結果でした。(これもこっそり見た(笑))いや、ははは。さっきの缶だって予想できなかったのですが、結果をみたらそれなりに納得できるような形だったんです。でもこの「正方形の詰め込み」は、結果をみても???が続きました。なんじゃこりゃ?という見栄えなのです。でもこれはしっかり計算で導き出せる答えなのだというのですから驚きです!

面積や体積についてはそのもの自体を広げたり小分けにしたり、円を三角の図形に変えたりと、分解させてほかの形にすることでわかりやすく説明してくれる装置がいろいろありました。これは私にもすごくわかりやすく、なるほどなあ!と心底関心しました。本当に分解するとちゃんとその大きさになってるんだとわかることも驚きました。
そして、私には今までこういう考え方がまるでなかったなあとつくづく思いました。

会場で男子学生さんが言っていたのです。
高校まではこの数字のかたまりはどうやってできているのかということを知るために勉強している感じだったけれど、今大学ではぜんぜん今までとはちがう学び方をしているという気がします。
新しい数字のかたまりを作っている感じなんです。
わあ、なるほどなあと思いました。
まさに今まで習ってきたことをまたこわして新しいものを作っているってことなんですね!具体的には全くわからない世界ですが、スマホができたことみたいに、まるでみたこともなかった想像すら出来なかった世界を作るって、習ってきたことを利用するのはもちろんのこと、ある意味それを「こわす」ことも必要なんだなと思いました。「こわす」ことでその原理がわかって、さらに高みへ、さらに進化していくんだろうなあと。
それこそがまさに「応用」ということなんだろうなあ。


北斎の作品を見た後の訪問だったため、黄金比とかフィボナッチ数列などのキーワードが気になっていて、学生さんに説明を聞きましたが、私があんまりにも目が白黒して理解できてなさそうにしているのを瞬時に理解してくれたのか(笑)「ここはちょっと専門的な話になるのでつまらないかもしれません。あちらが楽しいですよ」とパズルや知恵の輪コーナーをすすめてくれました。(笑)

しかし私はまたこのパズルや知恵の輪が大の苦手で(笑)。でもこういうことが出来る人をみるのが大好きなんです。それこそまた私の思考にはないことをみせてくれるんですよね。ええっそうきたか!みたいな。

3人の子どもたちのうち次男が特にパズル類が好きみたいだときづいたのは次男が幼稚園生の頃でした。パズルといってもジグソーパズルのようなものではなく、マッチ棒のパズルとか知恵の輪とか数独のようなもので最初は子どもたち皆楽しく遊んでいるのですがそのうち2人は飽きてしまって、次男だけがいつまでもいつまでも夢中になってやっていました。おりがみも字が読めなくても図解で難しいものを折れるようになりそのうち妹のためにオリジナルで創作したものをつくってあげたりしていました。当時パズル道場という冊子がありあまりに楽しそうにやるので私もおもしろくなって他にもパズルのドリルを与えてみたりルービックキューブやロンポスなどもやってみせて!と頼んではすごいすごいと驚きました。
そして3人の兄弟の中で一人だけ、いや、家族の中で一人だけ理系の人になりました。現在物理を専攻して「楽しい」といいます。
我が家に数学好きな人がいるようになるなんて思ってもみませんでした。こんな結果になるなんておもしろいなあとつくづく思います。
物理なんて私にはまったく理解できない世界です。


学生さんに案内してもらったパズルと知恵の輪コーナーで、やっぱりどれもできませんでした。(苦笑)
知恵の輪の一つで、木で出来た両手がありました。それぞれの手首にかけられている紐がからまりあっていて、それを外すのです。挑戦しましたが、何度も同じことを繰り返しては解決にいたらず。(できないっちゅうに何度も同じこと繰り返しちゃうんですよね・・・なんでだろ)でも答えがどうしても知りたくて学生さんに種明かしをおねだりするおばさん・・・ごめんなさいねえ。
「えーっと、できるかなあ。たしかこうだったと思うんですが・・」と学生さんもおそるおそるやってくださり、その紐をですね、またもう思いがけない手順でくぐらせたり通したりしながらからまりをあっという間に離してしまいました!がーん!
意外や意外なやり方でした!
うひゃー。そんなとこ通してそんなことするんだったんですかー!!と、アホな驚き方しかできない私。
いやあでもホント驚きました!


私は大の数学嫌いな学生でした。
いつからわからなくなったのでしょう。くもんで計算をどんどん問いていた時はあんなに楽しかったのに、文章題でつまづきました。
でも、それは別に文章題が苦手だったということではなかったんだなと今回改めて思いました。計算をしている時だって、算数や数学の考え方が出来ていなかったのです。そしてそれは算数や数学に限ったことではなく、教えられたことしかできないということであり、結局それはいつか行き詰まるのです。

教えられたことはできるので最初は賢そうにみえるのです。でもその先伸びていくにはどうしたらよいのでしょうか。
それは「こわしてみる」ということをするかしないかなのではないかと今回思いました。
いや、ちゃんと理解しながら進めば、自然に「こわしてみたくなる」「こわさざる負えなくなる」はずなのだと思います。
やりながらどうしてこうなるのだろうと思った時ひとつひとつ丁寧に順をおっていけば分解することになるでしょう。こわしたことで四角形はいろんな三角形の形からできているのだとわかるように、難しい問題の仕組みの中に「前やったアレみたいなところがある!」と気づくのだと思います。
(今回の数学体験館のなかにもまさにそのことを図形に表したような模型がありました。「三平方スライド」というものです。ピタゴラスの定理を視覚的に証明した作品で、大きな正方形の構造を分解してみせてくれます)
それに気づかなければ、まるで太刀打ちできないまっさらな問題みたいに思えてあきらめてしまう。
私はまさにそのあきらめがはやかった(笑)
だから最初のとっかかりだけでしか問題を解けず、そこ止まりだったのです。それを繰り返しているうちに算数や数学が苦手だと自分で自分にうえつけていったのだと思います。

なんだかこれって、いろんなことにあてはまりそうですね。人間関係もある一面しか見なかったらトラブル続きかもしれません。
一人の人はたくさんの性質を持っているのに、ある一つのことでその人を決めつけてしまったら、それだけでこの人苦手だなあと思ってしまうようなことがあったら、きっと誰ともうまくやっていけないし、
誰彼もすぐに「悪人」にしてしまう可能性があります。
いろんな角度からみて考えを深めていかねば、間違った判断になりかねない。
数学の問題を解くという行為をとおして、「考える」ことの意味を考えさせられました。


この会場にはほかにもたくさんの興味深い数学を理解できる装置があります。私は結局のところ2時間半(!)会場にいました。(あっというまでした!)装置はすべては体験できませんでした。まだまだ理解できないことがたくさんありますが、数学のおもしろさのほんのスタート地点を垣間見たように思います。

会場では問題が書かれた用紙が用意されていて、自由に挑戦することができます。
問題は全て会場で遊んだり学べば答えられます。
答えをかいたら受付に持っていくと正誤をたしかめてくれます。私は一問間違えてしまいました。
それでもいただけた理科大学のミニタオル。うれしいー

理科大学ってこういうマークなんですね!

家に帰ってからもよく考えてみたくて図録も買いました。会場の展示の説明が写真とともにしっかりと説明され、私のような数学まるでダメな人にもわかりやすい作りになっています。

大人の方にももちろんお勧めしたいのですが、お子さんがいらっしゃるご家族様に是非ともオススメしたい!この日もたくさんの親子連れの方々がお見えになっていました。お時間がたっぷりある時などに是非皆様も行ってみてください!

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