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ヒマラヤユキノシタとユキノシタ

「ヒマラヤユキノシタ」という花を知っているだろうか?
そろそろ3月、花が咲き始める頃だ。
私の住む地域でも民家の脇などに生えていたりする。
しかしいわゆる日本の「ユキノシタ」とは葉っぱに産毛があるところ以外、全然似ていない。
キャベツみたいな野太い根茎に団扇のようなハリのある大きな葉っぱ。
空っ風の吹き晒す雨もほとんど降らない西関東の乾燥した寒い墓地でも、春になると必ず葉は伸びて花を咲かせてくれる。
おばあちゃんが植えたかおばあちゃんが好きだったからとかでおばさんが植えたとか聞いた気がする。
どんなに過酷な土壌でも、冬に真っ黒に枯れたように見えても、根茎を横に伸ばしながら繁殖するたくましさがお化けのようにも見えて、親戚にはあまり好まれてないみたいだ。
でもお墓に植えたこと、私はひそかに正解だったなと思っている。
とても丈夫で、ほとんどお手入れしなくても、ご先祖のうち、ふたりの命日には必ず咲いて色を添えてくれるから。
先日、お墓参りに行ったら、蕾が膨らみ始めていた。
3月になると、鮮やかなピンク色の花を咲かせ始める。
さみしい墓地にも春を告げる花なのだ。

茎がぴゅーと伸びてきて満開に。
こちらは「ヒマラヤユキノシタ」


祖母が好きだった花だと聞いていたが、それはユキノシタだったのか、ヒマラヤユキノシタだったのか。
私は、この墓地の花を昔から「ユキノシタ」だと聞いていたので、本家の日本の「ユキノシタ」は違うものだと知ったのは、実は引っ越してきてからなのでごく最近のこと。

ヒマラヤユキノシタは冒頭でも言ったように、全然ユキノシタに似ていない。
「ユキノシタ」は「ユキノシタ科ユキノシタ属」で、岩などに細い根と丸く小さな葉を張らせて、5月頃に突如として背筋を伸ばし楚々とした白い花を咲かせる。
湿った日陰を好むようで、私の住む鎌倉周辺の山道や道の脇にそっとしっとりと咲く姿がなんともきゅんとする。
私はこの花を見ると「銀河鉄道のメーテル」を思い浮かべる。
実際のメーテルは黒いコートを着ているけど、ユキノシタの花は白いロングコートかロングスカートで、凛とした表情と細くて繊細で危うい艶っぽさがなんだかメーテルを思わせる。
この感覚、花を見れば誰かは共感してくれるはず。

メーテルのよう?「ユキノシタ」

それに対して、「ヒマラヤユキノシタ」は「ユキノシタ科ヒマラヤユキノシタ属」とされ、属が違うだけでこんなに植生も異なるものなんだと感心する位、花も葉も咲く時期も違う。
特徴は冒頭に書いた通り、全体的にどっしりとした風貌に可愛い花が咲く。
名前の通り、ヒマラヤ山脈周辺が原産とのことで、耐寒性も乾燥耐性もあり、過酷な状況下でも生き延びるたくましさがある。
ヒマラヤ山脈の雪解けとともに顔を出す花、という意味では、本当の「雪の下」はこちらなのかもしれない。
こういう妄想を繰り広げていると、昔、植物の名前を付けた人達の話を聞いてみたいな~という気持ちになる。
名前の由来を聞くともっと植物に対して興味が湧いてきて、面白い。

そんなこんな考えていたら、知人から「牧野植物園がやってきた展」という展示が都内であると教えてもらい、最終日ぎりぎり滑り込みで拝観することが出来た。
牧野富太郎さん。今春のNHKの連続テレビ小説で主人公のモデルとなっている方だそうだ。
そもそもテレビを見ない民の私は、まったく疎かったのだけれど、「牧野富太郎」さんという方は、「日本の植物分類学の父」と呼ばれる程、著名な方だったようだ。
展示を見ていると、彼の植物への愛や好奇心が筆使いにも言葉にあふれていた。
彼は日本の数多くの植物を命名した学者だそうで、ユキノシタについて書いているかはわからないけど、ひとまず一冊彼の本を手に取ってみた。
植物の愛人と自称される牧野さんのエッセー、読んでみてまた何か発見があったらシェアしたいな。

これを筆で書いたというからすごい
AIで立体分析すると、いかに正確に描いていたかが分かるそうだ。
すごい観察眼。





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