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歩けばやっぱりお腹は空く

金曜日。夜8時に車に乗り込んで、山梨県富士河口湖町に位置する三つ峠へ、昨夜開幕したWBCの二回戦を観ながら向かう。

節約の為に高速は使わない。運転は夫と代わりばんこで、「今ね、ツーストライク」「大谷が打った!」「満塁だよ」なんていいながら状況を伝え合い、奥多摩を超え、大月を超えて登山道入口に着いたのは午前1時前。

この時点で標高は1200m越えだが、この時期になると車中泊でも寒すぎず朝まで熟睡できる。

駐車場

いつもの目覚まし(6:05)と共に起床し、朝日を見逃したのを悔みながら歩き出す。

駐車したのが坂道だった為に自然と足が上がる体勢で寝たからか、なんだかいつもより軽快に進んでいけるなあと思ったのも束の間、だんだんといつもの調子に戻っていき、夫に置いていかれる始末だ。

それでも頑張ってスピードを速めたりしないのが登山である。頑張りすぎて足を痛めるのも、美しい景色を見逃してしまうのも勿体無い。
自分のペースで進んでいくのが一番いい。

それにしてもこの登山道は日当たりが悪いせいでなかなか所々雪が溶けず、氷となって地面に張り付いていて歩きにくい。
チェーンスパイクやアイゼンを付けた方が安全だよなあなんて思いながらも、端のまだ凍っていない雪の上を鹿の足跡に沿ってサクサクと歩いて行く。
時にコケそうになりながら、お互いの手を取りあい登っていく。自分の生きる世もそうでありたいと思いながら。

凍った道を歩く夫

歩き始めて1時間弱、山荘が見え樹林帯を抜けるとたどり着いたのが、ミツ峠山の3つの山頂の一つである【木無山】、そして目の前に現れたのはこれぞ日本の代表作、というくらい堂々と構えた富士山がお目見え。
思わず「うわぁ〜きれ〜い」と言ってしまうくらい。
どの山域から見ても目を引く富士山だが、やはりここまで近いと圧倒される。
もし富士山が日本で二番目に高い山で、日本一の山が連峰の中のひとつだったら、この富士山はどう思われていたのだろう。
日本一で、独立峰で、どこから見ても美しい円錐形だからこそなのだろうか。

木無山からみた富士山

ミツ峠山荘を越えるとミツ峠山の最高峰【開運山】と【御巣鷹山】を望むことができる。
ここから両山頂まで、どちらも5〜10分程度、富士山をバックに歩みを進め、先に開運山山頂へ。

山頂には誰もおらず、恥を捨て、各自好きなポーズで写真も動画も撮り放題。ちなみに夫はあくびをし、私は上腕二頭筋を膨らませた。まだ朝の8時半だからか、霧もなく遠くに見える南アルプスも息を呑むほどの美しさだ。
登山歴1年ちょっとの浅い知識を絞り出し、「あれが北岳だ、いやあっちか」「駒ヶ岳も見えるねえ〜」なんていいながら、御巣鷹山へ向かう。

御巣鷹山は他2つの山頂とは違い、ゆっくり景色を楽しむスペースもなく、電波塔が立っているだけだった。
もしベンチでもあれば朝ごはんを食べようと思っていたのでちょっと残念。
記念撮影だけして三ツ峠山荘まで戻ることにした。

ミツ峠最高峰、開運山山頂

富士山を目の前にしてやっと朝ごはん。今日の山ご飯はトマトリゾット。お湯を沸かしてシェラカップに注ぐだけでできるし、ちょうどいい量で持ち運びもかさばらないので楽。
よし、食べようと思ったものの「ちょっと!箸がない!」との大ピンチ。
そういえば前回の山ご飯で使ったのが最後の一膳だった…。
さてどう食べよう。
手で食べる?いや熱い。ふと目に止まったのはクッカーの取手部分。取り外し可能なことに気がついて、「これならかき込めるね」と念入りに消毒をして使用。とりあえず一安心。

お腹を満たした後は無心に下るのみ。またあの凍った道をゆっくりゆっくり歩いていく。

11時前には駐車場に着き、ささっと着替えを済ませて車に乗り込み、夫が行こうと決めていた天下茶屋へ。

天下茶屋へは車で2分ほど。少し坂を登るとすぐに見えてくる。
まだ昼前なのもあり店内にいたのは2組ほど。縁側が空いていたので迷いなく縁側へ座り、ほうとうと食後にコーヒーを注文した。
さっき朝ごはんを食べたばかりなのに、ハイキング程度の登山でもやはりお腹は空くのだった。

天下茶屋の縁側席


ほうとうは味噌が濃すぎず、具材もしっかり食感が楽しめる大きめのざく切りでとても美味しい。
「食べ終わる5分前に教えてください。コーヒーが一番美味しい時にお出しします。」
とのこと。豆も挽き方も淹れ方もこだわっているそう。

あ、ちなみにこちらの天下茶屋、太宰治が滞在し富嶽百景の舞台にもなっていたらしく、2階は太宰治文学記念館となっていた。
ミツ峠に登らずとも、ここから見る富士山も十分に美しく、ほうとうもコーヒーも美味しいのでぜひ訪れてみてほしい。

ほうとうと、きのこほうとう

ゆっくりさせていただいて、登山の疲れも少しばかり取れたところで観光がてら河口湖に向かうことに。
そのことはまた次のnoteにて。

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