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介護福祉事業所の人事労務戦略室 ~次世代リーダーを育てる 連載第40回 「福利厚生⑧=106万円の壁(キャリアアップ助成金)」

こんにちは。ラボ事務局の杉田です。
今週もラボ代表及川による「介護新聞」連載企画(第40回)をお届けしてまいります。
第40回のテーマは「福利厚生⑧=106万円の壁(キャリアアップ助成金)」です。

 前回の「年収106万円の壁」について色々お伝えしましたが、今回はその対策として新たに設けられた「キャリアアップ助成金」に焦点を当てます。
 この助成金は、社会保険の適用を受ける短時間労働者の手取り収入減少に対応し、企業にとって重要な戦略ツールとなり得ます。具体的な活用ケースや最大50万円の助成内容、申請手続きのポイントなど、ビジネスにおける新たな福利厚生戦略を、実例を交えて詳しく解説します。
 この助成金を上手く活用し、従業員と企業双方にメリットをもたらす方法を探りましょう。

介護福祉事業所の人事労務戦略室 ~次世代リーダーを育てる
連載第40回「福利厚生⑧=106万円の壁(キャリアアップ助成金)」


 106万円の壁については社会保険適用促進手当とともに、キャリアアップ助成金に社会保険適用時処遇改善コースが新設されました。助成金の詳細は厚生労働省のWebサイトに掲載されており、または社会保険労務士に確認するのもよいかもしれません。

 簡単に説明すると、短時間労働者が社会保険に加入した際の手取り収入減少に対応するため、賃上げや所定労働時間延長などの取り組みを行った場合に最大50万円の助成が行われます。
 典型的な活用ケースとしては、以下が挙げられます。
①週20時間、年収106万円(時給1016円)
→ ②16万円の社会保険適用促進手当を支給
→ ③賃金の15%以上を追加支給という要件に該当
→ ④1,2年目はそれぞれ20万円(10万円×2回)支給
→ ⑤3年目に時給を1199円に引き上げた場合は10万円支給(賃金の18%以上を増額)。

 ざっくりと計算すると、このモデルではトータル50万円の助成金が支給されますが、1年目と2年目は助成金で手当額をまかなうことができるものの、3年目の賃上げになると10万円では実質、持ち出しになってしまうため、完全に助成金でカバーできるわけではありません。
 4年目以降は助成金がなくなり、それ以前に3年目の賃上げ要件は1年目、2年目の手当要件よりはるかにハードルが高く、十分な試算と判断が求められることになります。
 したがって、実際には助成金があるから手当を支給するという発想にとどめるのではなく、それ以降のパートさんのキャリアアップや時間延長、正社員化を視野に入れていくのが自然といえます。

 今後は従来のようにたくさんのパートを雇用して分業するという働き方から、選ばれたパートを正社員化して現場をまわしていくという時代に移行していくことになります。とはいえ、当面2年間は社会保険適用促進手当を補填する有効な手だてとなりますので、効果的に助成金を活用したいものです。

 この助成金を申請するにはキャリアアップ計画書を事前に提出する必要があります。特例として、社会保険適用時処遇改善コースについては、2023年10月1日から24年1月31日までの間に手当の支給等を就業規則に規定する等の措置を講じた場合には、24年1月31日までにキャリアアップ計画書を事後提出が認められます。通常、1事業所当たりの申請人数の上限がありますが、当該コースの利用にあたっては人数の上限がありません

 働き方の問題として、労働時間の延長や手当等支給額の拡充などさまざまな切り口から対応できると考えており、当該助成金のメニューとして、労働時間延長及び手当等支給、これらを併用するメニューなど事業所の実情に応じて選ぶことができます。

 ただし、助成対象者が各コースで定める措置を講じた以降に、雇用保険の被保険者である場合が助成の対象になりますので、社会保険加入=雇用保険加入を忘れずに手続きしてください
 また、入社後間もない人は対象にならず、社会保険適用前の期間6か月を超える雇用期間が必要となります。したがって、業務請負契約、委託契約の方が適応できないこともお気を付けください。

 実務的な注意点としては、短時間労働者の場合、雇用保険に加入するかどうかのラインがギリギリで、実際は加入していないことがあります。適用が微妙なラインの場合は、管轄のハローワークにご相談してください。
 一般的に雇用関係助成金は、事業主都合の離職(例えば解雇や退職勧奨など)、一定の期間申請ができないなどありますが、当該コースには、事業主都合の制限要件は設けられていません

 106万円の壁は厚生年金被保険者数が100人以上の法人から出た話題ですが、当該助成金はそれに該当しない事業所も活用することができます。いくつか注意点がありますので、労働局助成金センターまたは社会保険労務士にお問い合わせください。

介護新聞11/17付「介護福祉事業所の人事労務戦略室―次世代リーダーを育てる!!」
http://wwu.phoenix-c.or.jp/~medim/kaigo/2023/202311kaigo/kaigo20231117.html

今週もご訪問いただきありがとうございました!
また次回、第41回の記事でお会いしましょう!

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