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観光客が行かない長万部(おしゃまんべ)巡り・後編

長万部のはじまり シャクシャイン古戦

シャクシャインロード


長万部の歴史は古く、1669年、国縫川を挟んで松前藩とシャクシャインが率いるアイヌ民族の戦場となった場所です。
15年ほど前に長万部町役場で、アイヌと松前藩との戦いで「シャクシャインの戦場」となった場所を聞きに行ったことがありました。
ところが役所の各部署の方たちは、戦いの場所がどこなのか分かりませんでした。結局教育委員会に回されましたがこちらでもダメでした。
その代わりに砂金場を教えてくれました。

ところが、白老町で国立アイヌ博物館(後のウポポイ)問題が浮上すると、誰が決めたのか、この戦場跡が設置されます。
更に、慰霊碑建設を記念して、国縫から静内のシャチ跡までを行進するイベント「シャクシャインロード」も行われニュースになりました。

この「シャクシャイン古戦場跡」を訪れてみると国道230号の国縫から「せたな町」に向かう入口にありました。小学校廃校跡地のグラウンドの一角に慰霊碑を建てていました。
しかし、実際の戦場は国縫川をさかのぼり松前藩の砂金発掘現場でしたから、古戦場とはほど遠い場所でした。
戦いがあった頃の長万部はアイヌ人の集落で、オットセイ漁を行っており松前藩はユウラップ場所で小規模な交易だったようです。

1855年南部藩は警備のため、この地に分屯所を設けており今も陣屋跡が残されています。翌年、開墾の目的で二人の移住者が定着し旅宿や馬追いを経営していました。これが最初の和人の定住とみられています。

1857年に竹内弥兵衛という人が亀田(現在の函館)から移住し、旅宿や馬追いを営み、後に初代の副戸長となりました。
同年、箱館奉行所の募集に応じて、関東・越後の農民が100名ほど移住し、栗木岱他3か所に御手作場を開きました。明治24年、それまで拾い漁のみが行われていたホッキ漁でしたが、佐藤佐太郎がホッキ貝捕獲機を使い始めました。
明治29年には倉光和吉が水田を開き、熱心に稲作に取り組んでいました。
戦後は酪農を奨励。昭和33年には乳牛飼育頭数が千頭に達し、町営牧場も備え、漁業は平成5年にしゃれたワイングラス型の国縫漁港が完成しカレイ・ホッキ貝、ホタテの養殖も盛んです。

直木賞作家・和田芳恵

和田芳恵

国縫は直木賞作家・和田芳恵(昭和38年受賞・小説『塵の中』)が生まれた土地です。生まれた場所は国縫駅前で、樋口一葉の研究で知られ、読売文学賞、日本文学大賞、川端康成文学賞なども受賞しています。
荒物雑貨商を営んでいましたが一家が没落する中で、厚田の佐藤正男の奨学資金制度で私立北海中学に学び、ついで上京します。故郷を書いた小説やエッセイが多くあります。松本清張の資質をいち早く見抜き、地方新聞記者だった松本清張が作家の道を歩む第一歩は和田芳惠との出会いでした。

国縫川を挟んで、シベチャリ(静内)の酋長シャクシャインと松前藩の軍勢が戦い、シャクシャインの軍勢が松前藩の鉄砲二百挺に撃ちたてられて敗退したのは寛文九年夏のことであった。 

生まれ故郷からの作品から

長万部町立町民センター


長万部の町

長万部の町役場は、JR長万部駅の南口にありますが「町立町民センター」は駅の北側になります。機関区があるため、町が二分されており大変分かりにくくなっています。

国道37号と国道5号の交差点から右折してJRの踏切を渡り、すぐに左折すると長万部駅の北側になります。
このあたりは、まず通らないので気がつかないのですが「平和祈念館と植木蒼悦記念館」もあります。 長万部町教育委員会が管理していますが、とても田舎の記念館とは思えないほど素晴らしい作品群と展示品が並んでおります。
町民センターの郷土資料室には「和田芳恵コーナー」があり、原稿や著書・遺品などが展示されています。この建物の両隣りに平和祈念館と植木艙蒼悦記念館があります。更に、近くには幕末の徳川幕府直轄時代に造られた南部陣屋跡もあります。

平和記念館

嵐の中の母子像

長万部町で43年間開業していた医師の故工藤豊吉氏が、私財を投じて建設した美術館で、昭和58年(1983年)の終戦記念日に、展示品の数々が長万部町に寄贈され、人類の平和を祈念して開館しました。 反戦と平和を願う心が生んだ、さまざまな美術工芸品が展示されています。
展示作品は、総数588点。前庭は彫刻の庭となっており、北海道出身の世界的彫刻家・本郷新氏の作品「嵐の中の母子像」「わだつみのこえ」ほか3点が展示されております。

植木蒼悦(うえき そうえつ)

1896(明治29)~1982(昭和57)享年86歳 
植木蒼悦記念館(長万部町教育委員会)
蒼悦は、函館で生まれ17歳の時に大下藤次郎画伯の門下生として日本水彩画研究所に入所。
その後函館に戻り、独自・独学で水墨画を始めました。 河童を題材とした水墨画は特異な境地を開いたものです。
長万部の記念館では常設されておりいつでも無料でみることができます。 



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