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シンデレラファイトを観て。

勝負は、ガラスの靴を履くまでわからない。

シンデレラの象徴であるガラスの靴の主を、牌は最後まで決めかねているような決勝戦だった。

ガラスの靴の主となった新榮有理プロ

内容については、それぞれ紙一重の差だったように見えた。
特に決勝2回戦については、各プレイヤーの勝負リーチがことごとくツモ和了に結びつかなかった。
誰かが抜け出そうとすれば、全員が止めに行く。
技術云々ではなく、全員の気持ちがぶつかり合えばこその現象だったと言えよう。

しかし、勝負は決した。

新榮有理と木下遥の死闘。
ガラスの靴は、選手たちを翻弄するように居住まいを改め続けた。

新榮の執念と、木下の前に出る勇気。
思いと思いがぶつかり合って大きな火花が飛び散るような、鮮やかで派手な決着。

シンデレラファイトらしい結末の迎え方だったように思う。


ガラスの靴の主は牌が選んだ。

シンデレラのガラスの靴を手にした新榮が、インタビューを受けていた。

「勝つという言葉を人前で言えなくて、トイレで一人つぶやいていた。」

「勝つ」という言葉を発し続けた「陽」の木下。
「勝つ」という言葉を隠し続けた「陰」の新榮。

このコントラストが、鮮やかに二人を分かつのが実に面白かった。


新榮の手によって2ソウが場に放たれた時。
牌に試された「陽」の木下は死線を超えても自ら勝負を付けに行くことを良しとし、4ソウを河に置いて新榮の執念の炎に飛び込んだ。

勝負の女神は、最後の最後で新榮に微笑んだ。

しかし、それには「今日のところは…」という枕が付く。

ゲーム後のインタビュー。
もしも、「選択に悔いはない」という言葉を木下が発したなら。
成長もなければ、独りよがりな麻雀に固まっていって、自ら道を踏み外していたかもしれない。

「今まで、あの1牌をこらえられたからここまで来たのに…。」

大きな悔恨の情を吐露した木下の言葉。
勝負の向こう側を見つめている彼女の伸びしろの大きさを感じる。

次こそは…という捲土重来の思いを新たにしたことだろう。
大切なのは、今日のこの気持ち。
熱しやすく冷めやすい「悔しさ」というものを、どうか心に深く刻んでほしい。

呆然とする木下の姿に、僕はそんなことを願った。

ゴールは通過点。その先へ。

決勝戦は終わった。
コンマ1秒の差で決勝線をトップで踏み越えたのは新榮だった。

しかし、それとて通過点。

ほら、100m走だってゴールの向こうへ駆け抜けろって習ったでしょう?
勝ち負けはあくまで通過点、ということ。

本当に大切なものって、その向こうにある。

それは、時代が変わっても、人が変わっても、永久不変なもの。
自分に老害の自覚はあっても、これだけは曲げられない。
だから、時代遅れと言われても、喉がつぶれるまで叫んでやろうと思う。


最後に。

それぞれに大きな糧を手に入れた決勝戦の4人。
これからどんな風に成長し、美しくて大きな麻雀を見せてくれるのか、楽しみでならない。
今後の活躍を心から祈念いたしたい。

そして、そんなプレイヤーたちを美しく紹介してくれたシンデレラファイトの関係各位に敬意を表したい。

本当に面白かった。


あ。
もう一つ叫んでおきたい。

ベストドレッサー賞はあやちー。
メガネ、可愛すぎw


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