自動筆記/2023.06.30(5分間)

さてこれはもうびっくりしたことになにもできないのだ、僕は東京タワーに上ってそれきりだった。床に散らばったたくさんのおがくずを拾い集めて果たして何になるのだろうか、イルカが血まみれになっていた、そこだけに光があった。何も考えられないことに対して人はなにも怒らなかった、僕だけが怒っていた、許せないことにトマトをひとかけら食べた後、星屑のように舞い散る雪が僕らの頭上に降り注いでいた。世界が祝福していた。なにもかも綺麗だった、綺麗という言葉の意味を考え始めるときりがないので、ご飯を食べてみた、世界に雪が広がっていた。この世界は真っ白で真っ暗で闇の中にさす光のようにささやかな愛がラッパを吹いて僕らを静かに見下ろしていた。神様なんかいないと思った。ささやかで小さなチャペルの中で白い人たちがずっと笑っていた。笑いながら駆け抜けていく、静かな海の中、だれひとりいない世界でただ星だけが輝いている。どうしようもないほどただ寒かった、寒い世界に取り残されて生きているのが不思議なくらい踊り狂ってギターの音を響かせていた。ランプの明かりだけが頼りだった。オレンジ色、一面のオレンジ色、どこまでも光り輝く、美しい鳩の群れに気を取られてもう一ミリも動けないと思った、意思が介在している。行方が分からなくなっていた姉がそのときばかりは静かに笑っていた。微笑みに意味があるのか僕はただそれだけを知りたかった。なにもしないでいることと考えないでいることは別物であると神様が言っていた。友達はそれを真に受けて死んでしまった。どうしてこんなふうに生きていけないのか誰もわからない。空気は澄みやかでひとしく平等に世界中を見守っている。ささやかで甘く優しく静かな喜びがただそこにあった。聖人のようにそのひとはそこでただぼくを。
ただゆるやかに時だけが流れ、静かな山の中で君の声だけが響いていた。

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