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寓話:桃太郎みたいなものの話

とあるところに桃太郎みたいなものがいて、老夫婦に拾われたわけではないけど、そこそこパンチの効いた生い立ちをしていた。

桃太郎みたいなものは大人になってなぜか立ち上がった。ひとりぼっちだったけど、鬼退治をすると息巻いていて、面白い話し方をするものだから、多種多様な仲間たちが集まってきた。

ただ、その桃太郎みたいなものは鬼ヶ島に行こうにも船すら持っていなかった。そこで仲間達と船を作ることを始めた。

彼らは毎日船を作っているので、周囲の人たちは一生懸命船を作る集団だと思うようになった。その後仲間に加わる人たちはもはや鬼退治のことなど知らないので、船を作るためにその集団に参加したし、それで穏やかに生活をしようとするものもいた。

みんなが船を作っている間、桃太郎みたいなものは、なぜか日本中をまわってみたり、拠点を増やしてみたりもした。そして、その時も、全て鬼退治のためにしていることだと思っていたし、ふるいたったりもしたりしてた。

鬼退治をかかげてもうかれこれ15年以上が過ぎようとしていた。仲間たちが鬼退治のことなど忘れても無理もない。そもそもテーマ知らない人たちもいるし。仲間たちはは船にモーターをくっつけたりして船の性能を良くしようとしている。桃太郎みたいなものと仲間との間には少しずつ、そして確実にずれが生じ続けていっていた。いなくなるものもいた。

桃太郎みたいなものは船作りの棟梁として評判になっていたし、いい暮らしができるようになりそうだった。なんかモヤモヤした日々が続いていた。彼は船作りがしたかったわけではないし、船作りの棟梁で立派になりたかったわけでもない。仲間たちだって元々船が作りたかったわけでもなかっただろうが、いつの間にか目的と手段がごちゃごちゃになってしまっていた。

とうとう桃太郎みたいなものは仲間たちとお別れし、別の道を歩むことにした。桃太郎みたいなものはいつもとても一生懸命だったのに、なぜこうなってしまったのかわからなかった。とりあえず全てを失った。

桃太郎みたいなものはまたひとりぼっちになった。そしてまた少しずつ歩き始めた。


そしたら、鬼退治なんて最初からウソで船で大儲けしたくせにって言われるような出来事が連発した。あと普通になんか自分ダサいと思えることがあって、久しぶりにスイッチが入った。

やっぱ鬼退治いかないで終われない。

気づけば時代は確実に変わっていた。飛行機もあればドローンだってある。

桃太郎みたいなものは今度は間違えずに飛行機やドローンを作るのに夢中になるのではなく鬼退治をしようと心に誓った。結構辛かったし。

そして、彼はなぜ長いこと船のことに囚われていたのだろうとさえ思うようになった。昔の仲間たちは今も船を作っていると聞くし、仲間も増えているそうだ。それはとてもいいことだとすら思う。グッドラックを願う。

彼らはいい船を作ればいいし、桃太郎みたいなものはまた1から仲間を集め、鬼ヶ島を探して、鬼退治をする。どう考えても後者の方が頭おかしいけど、そうしたいのだから仕方ない。


本当は鬼ヶ島なんてどこにもなくて、とっくに鬼なんて存在もなくなっているのかも知れない。そんなの思い込みでしかないのかも知れない。この世の中には悪者なんていなくて、すでにとっても安全で幸せなんだったとしたら妄想癖の単なるヤバイやつでしかない。

でもそうじゃない気がする。やっぱり鬼達はどっかで汗もかかずに何かを奪っている。笑いながら高いだけのダッサイ服着て高い酒でも飲んでるはずだ。だから、この命をかけて、次の世代の人々がもっと暮らしやすくなるための社会のために、桃太郎みたいなものは戦い続けたいと思う。

また仲間をたくさん集めようと思う。今度は間違えないように。

安心や安定なんてものはないし、とても危険な命がけの旅に出るんだよ。を、彼はどうせ間違えてまた楽しそうに話してしまうだろうけど。


ふと思いついた生まれてはじめて書いた寓話。


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