2018年5月5日の自分へ

すっかり忘れていたけど、noteを始めようと思った時の下書きがiphoneのメモ帳から見つかった。
その時が「過渡期」だと言う。今も悩みは尽きないが、当時も相当いろんなことを考えていたようで、その葛藤を記録するためにnoteを使おうと思っていたみたいだ。
それはこんな風にはじまる。

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過渡期の記録としてのnote

noteをご覧になっているみなさま、はじめまして。
holo shirts.(ホーローシャツ)という屋号でオーダー専門のシャツ屋を営んでおります、窪田健吾と申します。

なんでこのタイミングでnoteを始めようと思ったかというと、今が『過渡期』だと感じているからです。
2014年に開業して約3年半、毎年、毎月、いや、毎日変化を続けてきました。そのため明確に『過渡期』なんて存在しないのかもしれませんが、そのように感じるくらい大きな変化を迎えようとしています。
正確には、成長をしようともがいていると言った方がしっくりくるかもしれません。
そのもがきを記録していくことで、holo shirts.がどんな考えを持って営まれているのか知っていただければと思っています。一人で始めた個人事業が『やりたいことをし続けながら』大きくなろうとしている姿を見守っていただければ幸いです。

なぜシャツ屋をはじめたのか

そもそも、なぜこの仕事をはじめようと思ったかについて話すところからはじめないといけません。
この『オーダー専門のお店を持たないシャツ屋』というアイディアが形作られていったのは、新卒で入社した繊研新聞での経験が大きく影響しています。

高校を出るくらいから、自分で着る服を中心に作ることは独学でしていましたが、「デザイナーになりたい!」とか「アパレルメーカーに就職したい!」という考えには至りませんでした。
専門学校も行っていないし、ファッション業界のことを何も知らないやつがいきなりその世界で活躍できるはずがないと勝手に思っていたんだと思います。

ならば、立場上様々な会社や人に会いに行き、自分の知識も深めながら仕事ができる新聞社に入りたいと思ったわけです。
そんな職場でファッションの世界の情報にたくさん接していると、一つの考えが浮かんできました。
『この世界で大きく儲けるには、世界を見て大事業を展開しないと難しいのではないか…?』と。でも自分でやるとしたらそんな大きな規模のことはイメージできないなと。

着るのはもちろん、物としての服が好きは僕は、やっぱり自分で作りたい。自分の目の届くところで服が完成される様子を見ていたいとの思いを強くしました。
その時点で『大きくは儲からないけど、細すぎず長く続けられる』ことを前提にこの形を考えたのですが、今、この『細すぎず』を実現するために頭を悩ませています。

自分にとって理想のシャツ屋

シャツは、ベーシックなアイテムで身体に近いところで着る服なのに、サイズが合わない箇所が多い難しい服です。
既製品ではサイズが合わないという方は結構多いと思います。そうなると自分の身体に合わせて作るオーダーという方法を選ぶ他なくなってきます。
オーダーにも様々な形がありますが、僕が理想とするのは、面と向かってお客様とお話をして、採寸だけでなく服の好みや悩み、自分をどう見せたいかなどたくさんの事を伺いながらデザインを決めていく形です。

幸せなことにholo shirts.のフルオーダーでは、それが実現できています。
シャツをオーダーしてくださったお客様が『楽しい』『嬉しい』『発見がある』を感じられるように、採寸、カウンセリング、型紙作り、縫製と真剣に向き合っています。

「今までシャツは似合わないと思ってたけど、holo shirts.でオーダーしてから他のシャツ選びも楽しくなった」

「考えたことがなかった部分をどうするか決めることで知らなかった服の面白さに気づいた」

「このシャツ、よく褒められる」

そんな声を聞くと、自分がワクワクしてきた『服との付き合い方が更新される体験』をしてもらいたくてこの仕事をしているんだと感じます。

一人の限界と売上の天井

お客様との距離の近さがこの仕事の最大の楽しみなのですが、だんだんと作る量が増えて一人の手に負えなくなってきます。
そして、『細すぎない』利益は、思っていたよりも少し細く、金銭的にも時間的にも余裕の小さい状況が続くようになっていました。
ここで、たくさんの選択を迫られることになります。

・仕様を簡略化して工場に仕事を出すのか?
・一人が作れる量で売上の天井が決まるのであれば、価格改定をするのか?
・自分のアトリエで人を雇うのか?

これらをどうするのか考えた(考えている)事も、これから書いていけたらいいなと思っています。

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ここで下書きは終わっていて、結局進まなかった。

あの時の自分へ

結論から言うと、全部やったよ。
そして、それをやってなかったら今頃このブランドはなくなってたかもしれない。

2018年1月:アトリエに今も来てくれているスタッフを迎え入れる
2018年10月:『セミオーダーシャツ』を発表
2020年2月:価格改定
2020年6月:フルオーダーの一時休止

そして、今はセミオーダーシャツを自宅で試せる『ORDER at HOME』をスタートして、スタッフには在宅で縫製をしてもらえるように準備している。

ちょっと「過渡期」と言うには流れが早すぎて溺れそうにもなるけど、ここで倒れては今までの努力と、みなさんの期待が無駄になる。
「会うこと」こそよしと思ってやってきたけど、それも柔軟に考えないといけない。あの時の悩みをバネに、たくさん変化した。

でも、はっきり言えるのは稼ぐためだけの「やりたくないこと」はやってないよということ。
「やりたいことをし続けながら」成長しようともがいてた自分は無駄じゃないよと。

突然の外的要因にもめげずに歩を進められているのは、あの時もがいたおかげだなと、下書きに思い出させてもらった。あの時の自分、ありがとう。

そして、いつもシャツを楽しみにしてくださっているみなさま、本当にありがとうございます。こんな状況ですが、もっと楽しいこと考えますよ!

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熟成下書き

オーダーという業態を選んだ時点で「無駄なものを作らない」が頭にありました。これまでもこれからも、ちゃんと袖を通して着倒してもらえるシャツ作りを続けていきたいと思います。