日記なのだ!!

 こんにちはなのだ。今は11月27日、日曜の夕方なのだ。夜にはサッカーの試合があるのだ。みんなサッカーを観るのだ? 我が家はテレビがないので観られないのだ。別に観たくもないのだ。ルールもよくわかってないのだ。オフサイドって何なのだ? そのレベルなのだ。ジーコくらいしか知らないのだ。けれどみんなが熱狂しているならばその尻馬に乗りたいのだ。「鬼滅の刃」とかもそれで全巻集めたのだ。ミーハーなのだ。友だちとかと共通の話題が出来たらいいのだ。でも友だちなんていないのだ。何のために流行りものを追いかけているのかわからくなってくるのだ。

 誰しもに流行りものや有名どころに対するスタンスがあると思うのだ。乗っかる人もいるのだ。逆張りする人もいるのだ。素知らぬ顔で我が道を行く人もいるのだ。各人の生き方なのだ。当方は乗っかる人代表なのだ! 鬼滅も集めたのだ。呪術廻戦も劇場版を観にいったのだ。最近ではすずめの戸締まりももちろん観たのだ。だからある年はラグビーを観たりまたある年は大谷翔平の活躍を追ったり、今はサッカーのベストシーンを眺めたりしているのだ。芯のない生き方をしているのだ。自分の明るくないジャンルならば、流行りものの後にひいこら従っていくのは苦でもないのだ。

 けれど分野が小説などの文芸方面に移ると、途端にへそ曲がりになるのだ。芥川賞? 芸人やタレントの小説? 映画化原作? 村上春樹? ハッ、っていうこのスタンスなのだ。悪い癖なのだ。大学生のころ、文芸サークルに所属していたのだ。上から下まで物書き志願が集まっていたのだ。新入生が先輩方から好きな小説家を訊かれたのだ。伊坂幸太郎や宮部みゆきが挙がったのだ。太宰治もいたのだ。そんなありきたりな作家の名前を挙げるような軟派な人間ではないのだ。そう勢い込んで、番が回ってきたとき、一息に答えたのだ。永井龍男なのだ! 「青梅雨」がとても好いのだ! 場はしぃんとなったのだ。特に反応もなく次の人に移ったのだ。西尾維新、とその人は答えたのだ。先とはうってかわって先輩たちは盛り上がっていたのだ。永井龍男がかわいそうなのだ。

 それから好きな作家はという問いに対するほどよい答え探しの旅が始まったのだ。小林多喜二、長塚節、七月隆文、鮎川哲也、赤染晶子、そのほか様々な名を挙げて、最終的に三島由紀夫に落ち着いたのだ。無名すぎず軟派すぎず、通ぶっておらずニワカっぽくもなく、実にほどよいのだ。じっさい好きなのだ。たまに、俺も三島好きだよ、と話が続くのだ。好きな作品は、と次の段階になるのだ。ここでも悪癖が災いして、「金閣寺」とか「仮面の告白」とか言えばいいところ、「午後の曳航」と答えて、会話が終わるのが常なのだ。この性分は治りそうにないのだ。いったい何の意地を張っているのだ?

 人みなにそんなへそ曲がりな一面があると思いたいのだ。どうしても鬼滅を好かなかったり、サッカーの熱狂に乗れなかったり、めいめいがめいめい培ってきた譲れない部分だとか信条だとかがあってしかるべきなのだ。幸か不幸か小説以外だったらへそ曲がりな面があまり出ないので、人から何か勧められたり推されたりしても素直に受け止められるのだ。SixTONESがいいと言われたら聴いてみて、東京卍リベンジャーズが好きと言われたら全巻集める気になるのだ。

 最近、彼女ができたのだ! うれしいのだ。スマホの壁紙を彼女の写真にしたのだ。カメラ目線でいつも見つめてくれるのだ。彼女とは共通の話題があまりないのだ。困りものなのだ。せめて話せるジャンルを増やそうと、サッカーに目を付けた次第なのだ。相手がサッカーに興味あるかどうか知らないけれど、あったらもっけの幸いなのだ。こんどのデートの話題が増えるのだ。もしサッカーが好きなら家で一緒に見られるのだ。まずはテレビを買わないとだめなのだ。買うのだ。一緒に観たいのだ。お酒を飲みながら観戦したいのだ。今年はふたりで観るのだ。四年後のW杯では、三人になっていればいいのだ。2ldkの部屋に住んでいるのだ。1歳の子どもがいるのだ。男の子なのだ。お母さん似なのだ。さらに四年後、2030年、子どもは5歳なのだ。親子そろってまたいっしょにW杯を見るのだ。日本のシュートが決まってゆくのだ。子どもが親以上に熱くなって応援しているのだ。パパ、ぼくね、大きくなったらサッカー選手になりたいのだ! 息子が言うのだ。かわいいのだ。応援するのだ。髪の毛をわしゃわしゃ撫でるのだ。それからさらに年を経て、自慢の息子がコンサドーレ札幌に入団するのだ。決まったのだ。未来が今、定まったのだ。札幌ドームで息子の初陣があるのだ。銀婚式を終えた彼女と一緒にその試合を一等席から観戦するのだ。これがいいのだ。この将来のためにサッカーに詳しくなるのだ。頑張るのだ。

 とりあえずはそんな華やかな将来のために今日のコスタリカ戦は日本に勝ってほしいのだ。そうしたら明日のデートで日本勝ったねと話題に出せるのだ。勝ってもらわないと盛り上がらないので困るのだ。みんなサッカーを観るのだ? 観るなら日本をすべからく応援するのだ。こちらの将来がかかっているのだ。もうシナリオはできているのだ。あとは日本が勝つだけなのだ。

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