キモい事書いたら即終了日記なのだ

キモい事(例)
政治関連←当然キモい
いじめ、ジェンダー関連←お気持ち表明でキモい
仕事の話←どう考えてもキモい

https://note.com/chueimoon/n/nccf12a857a50

 朝起きて、noteを開いたのだ。

 相互フォローの、年下の男の人が、結婚したというタイトルの記事を公開していたのだ。ははぁエイプリルフールだなと勘付いて読んでみると、どうやらマジらしいのだ。いっしょに指輪作り工房みたいなところに行ってる画像があるのだ。恋愛観を披露しているのだ。自分は幸運でした笑みたいな謙遜をしてやがるのだ! 投稿日時を確認するのだ。4月2日なのだ。胸がきゅっとなったのだ。息が詰まるのだ。呼吸ができないのだ。頭が痛むのだ。手足の先が震えるのだ。苦しいのだ。苦しいのだ。苦しいのだ!

結婚したということはもう30歳独身男性の気持ちを完全に理解することはできないのだろう。
そんなの体験しなくていいだろと言われたらそうなのかもしれないけど。

https://note.com/chueimoon/n/nbb2a8646c654

 この引用した一節に出くわしたとき極まった防衛本能が働いてそっとフォローを外したのだ。幸せな顔した人が憎いのはどう割り切ったらいいのだ? 満たされない頭の奥の化け物みたいな劣等感。

 ただ、そうだな、長年の相互フォロワーで、その人の書いてきた文章を楽しく読んだ身なので、ぜひ幸せになってほしいのだ。嘘なのだ。そんなこと1ミリも思ってないのだ。人の幸せなんて今さら祈れるはずがないのだ。ややもすれば書く言葉はすべて悪口やヘイトスピーチが涙といっしょに流れそうになるのだ。でも人への悪口はキモいのだ。お気持ち表明は嫌われるのだ。そこで、キモいことを書いたら即終了という縛りを設けて、どうにか悪態をつく心を自制するのだ。勝手に引用したけど嫌われたくないのだ。嫌わないでほしいのだ! こちとら現実でも嫌われているのにネットでも人から嫌われたらいったいどこに居場所があるのだ? ご結婚おめでとうなのだ! 夫婦仲良く幸せになるのだ! とってつけたように祈ってみせるのだ。どうかみんな嫌わないでほしいのだ!

 それにしてもいつからインターネットは結婚報告をする場所になったのだ? ニュースサイトやtwitterを開けば知っている人知らない人の別なく結婚の報が流れてくるのだ。苦しいのだ。twitterの言語設定をいじってトレンドをインドのそれにしたのだ。それでも時おり言語の壁を突き破って『ご報告』と流れてくるのだ。このたび誰それと誰それは入籍いたしました。うるさいのだ。そうしてブロックするのだ。昔のインターネットはもっと殺伐としていたのだ。幸せなんて圏外だったのだ。それが今はどうだ、なのだ。

知らない人が知らない人を愛するたび、私の中からも愛が減っていく気がしていた。

最果タヒ「天国と、とてつもない暇」所収「おやすみ」より

 結婚するひとは勝手に結婚すればいいのだ。けれども少しだけ、結婚される側の気持ちを考えてほしいのだ。インターネットは結婚報告の場所じゃないのだ。望まない結婚報告、いわゆる受動結婚報告によって、こちらの愛が減ってゆくのだ。人の幸せを垣間見るたび自分の幸せの取り分が減ってゆく気がするのだ。不健康になるのだ。望まない受動結婚報告の防止を図るため、特に影響が大きい独身中年男性に配慮し、多くの方がインターネットの一定の場所を除き結婚報告を禁止するとともに、管理者の方が措置等を講ずるべきなのだ。

 とはいえ結婚したいのだ。結婚したら何をするのだ? 決まっているのだ。未婚の人たちにこう言ってやるのだ。いやあ今のご時世は結婚だけがすべてじゃないのだ笑。子どもができたら子なしの人々に言うのだ。いやあ今は子供がいない人たちも多いからそういう夫婦関係もいいんじゃないかなのだ笑。子どもが小学生になったらピアノを習わせるのだ。そうして言うのだ。習い事ってお金がかかってたいへんなのだ笑。子どもを私立の中学に入れて言うのだ。学費が多くて大変だから公立にさせておけばよかったのだ笑。子どもが名門高校に受かったら言うのだ。学習塾の値段もばかにならないのだ笑。そして子どもは早稲田大学の理系に合格するのだ。言うのだ。入学金が多くててんてこまいなのだ笑。あなたのところのお子さんはどこの大学なのだ? はぁ、北海道大学なのだ笑。知らない大学なのだ笑。学部は……文学部なのだ笑? それはそれはなのだ笑。札幌までお引越し大変でしょうなのだ笑。そして子どもは官庁に内定が決まるのだ。最後に言うのだ。今どきは民間じゃないとお給料も少ないのに困ったものなのだ笑。これをするのだ。したいのだ。コンプレックスが過ぎるのだ。いい加減にするのだ。はい。

 そういえば結婚したらお給料の税金が少なからず控除されるって聞いたことがあるのだ。扶養控除なのだ。結婚なんて今や実家の太い人間しかまともにできない制度なのに、そのうえ税金まで減免されるというのだ。羨ましいのだ。まあ、一生独身が確定している自分にあっては、不要●●な控除なのだ。ここ、精一杯の笑いどころなのだ。笑ってほしいのだ。笑ってくれているのだ? 笑ってほしくないのだ。人の独身を笑うな、なのだ。なにがおかしいのだ。独身中年男性の気持ちの何がわかるのだ? え? 何がわかるというのだ?


 何もわからないのだ。


結婚したということはもう30歳独身男性の気持ちを完全に理解することはできないのだろう。
そんなの体験しなくていいだろと言われたらそうなのかもしれないけど。

同上

 ほかならぬ29歳独身男性自身が、30歳独身男性の気持ちがわからないのだ。いったい、ひとを完全に理解するって、なんなのだ? あと数十日で30歳独身男性になるのだ。なるまでにわかるとも思えないのだ。なってもわかるとは思えないのだ。自分というこの不可思議に、我ながらいつもいつも手を焼いているのだ。突然発情期を迎えたようにマッチングアプリを始める時期があって、もう女なんてクソくらえと開き直る時期があって、今は後者なのだけれども、まあこんなハチャメチャ、体験しなくていいだろというのは真理なのだ。できれば自分も体験したくなかったのだ。でも体験しているからにはこのまま生きていくしかないのだ。気がふれるような悲しみに、ぞっとするような淋しさに、どんなに逃げようとしても逃げられない自分自身に、向き合って生きていくしかないのだ。

 日記なのだ。朝、起きてnoteのフォロワーが結婚報告をしていたのだ。心はそれから曇って、そのくせ今日の札幌は快晴、晴れ晴れとした空とわだかまりばかり積もった心の折り合いをつけきれずに、仕事はろくたら捗らなかったのだ。くさくさした気分で家路について、買いだめしていた酒を飲みながら世迷言を書いている現在なのだ。そういえば、聞いたことがあるのだ。30を過ぎて独身の人間は狂ってくるという風説。我が身はまだ20代の崖っぷちだけれども、デッドラインはすぐそこに迫っているのだ。ただでさえおかしい頭がこれ以上おかしくなったらいったいどうすればいいのだ? ああ、まだ、人間の、まともな人間の言葉を書けるうちに、せめて、書いておくのだ。

 ご結婚おめでとうございます、末永くお幸せにあられますようご祈願申し上げます、なのだ。

 言えたのだ。そうなのだ。君が幸せならそれでいい、そうだ、そういうことを書きたかったのだ。こっちはこっちで好き放題に独り身のまま生きていくのだ。不要控除、なんちゃってw! なのだ。持ちネタにするのだ。ともあれ、他人を完全に理解する、なんてことはありえないのだ。理解しあえないという現実だけを受け止めて、しゃにむに生きていく以外に、人の生きざまはないのだ。

 年上からの説法はキモいから終了。

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