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何処からついて来たのか子供の幽霊




2020年1月某日ー


先生
『お前とはもう会わない。いや、会えない』

小野
『何でだよ先生!』

先生
『言っても理解出来ねーと思うぞ』

小野
『言わなきゃ理解出来るものも出来ませんて』

先生
『…』

小野
『先生っ‼︎』


数刻の沈黙の後。先生は重い口を開く…。

そして、俺はそれに対して発した言葉を恥じる…。





先生
『俺、笑うと死にそうになるぅ〜』


小野
『ハァ⤴︎何スカソレェ〜⁉︎笑』


先生
『ぶはぁっ』


先生は口から何かを吐き出し


崩れ落ちる。


小野
『?先生?どうしました?先生?』


何が可笑しかったのか?

先生は勝手に『自爆』した。


その時の自分には電話口向こうの状況を何も理解できていなかった。


先生はその時『死』にかけていたのだ。



原因不明の『奇病』



『笑う』と身体の力が一気に抜け落ち、立っていられなくなる。それどころか、呼吸も出来ない場合があるらしい。

2度程、自宅の風呂場で奇病(思い出し笑い)を発症し、溺れかけた事があるそうだ。

無呼吸症候群である事は以前から知っていたが、その辺と繋がりがあるかどうかは分からない…。だが、その『奇病』が事実だとすれば、これは相当ヤバい病気である…。



ー夏の千田邸ー

連れの2人は呆れ返っている。

自分は事前に事情を把握していた為、先生の不自然さが直ぐに見て取れていた。


そして、悟る。


先生は真実だけを俺に伝えていたと言う事を…

小野
『マジかよ…』


先生はその場では何も語らない。



そういうお人なのだ…。

先生との共通の趣味『怪談』



ー裏話ー


劇団天体望遠鏡による公演『賛成の天体』
その本番が明日へと迫った10月22日金曜日。
仕込みに追われ、他のことなど目に映らず、明日の本公演の重圧に耐えながら参加者は各々の仕事に着手し舞台を作り上げている…。

1人の男を除いて…。

俺の事である。


目の前に千田先生が居る。


崩れ落ちて倒れている。


…。


そんな先生に問う。


何故に此処に来たのか?


先生はまだ痙攣を起こし倒れている。


その日、すでに4回目のことである。


大小数えて、これで4回目である。


…。


邪魔である。

明日の公演で『小原嬢』と『琳子姫』のオッパイをいかに事故に見せかけて揉みしだくかを考えている自分にとって、これ以上の問題ごとは正直言って迷惑でしか無かった。

先生の善意。

仕込みを手伝ってくれるのは嬉しく思う。

自分の事を後回しに考え、行動する。

そういう人間だという事は重々承知している。

俺も先生の『奇病』を俺なりに理解した上で、俺から近寄っていく事はしない。

なのにー、

目の前に先生は倒れている。


そう、全ては『自爆』なのである。


己で振って己で笑う。


全てはヤツの自業自得によるものなのである。


明日からが不安である。

公演の不安ではない。

明日から千田邸に公演期間中お世話になる事になっているからだ。

俺は先生を笑わせない自信があった。

何せ『死』ぬかも知れないと知っていて近づくことはしない。


では何故、俺は千田邸に泊まるのか⁉︎


お金が無いからだ。


貧乏人は人間社会を生きて行く上で、銭の出費を出来るだけ避ける習性を持つ…。

俺は『ホテル代』と『先生の命』を天秤に掛ける…。


…。




明日からが不安だった…。

賛成の天体2021仕込み




仕込みもあらかた済んだ21時30分頃…。

俺は誰に挨拶するわけでもなく帰った。

頭の中は『オッパイ』でいっぱいオッパイだったからだ…。

絶対に『揉みしばいたる!』と『何か』に取り憑かれたかのように『オッパイ』に固執していく自分。


自宅で入念にシュミレーションを重ねていく。


『ポニョのオッパイ揉みしだき計画』は誰に悟られる事なくここに完成した。


『よしっ』


何が『よし』か…。俺は狂っていた。


気付けば時刻は午前3:00をまわった。

集合時間は午前9時。

さすがに寝なければと急ぎ床に就く。

寝付きの悪い自分であるが、その時『眠れるな』と実感としてあった。

仕込みの疲労もあったのかも知れない。自分はこのまま深い眠りにつくものだと思っていた。

しかし、それは唐突に訪れた。

『金縛り』である。

突然の金縛りであるが、自分の場合は何度か経験のある金縛り。

疲労からくる金縛りと思い、そのまま眠りにつこうと考える。


何処からか『声』がする…。


それと同時に、俺の首に手をまわし、抱きつく者がいる。


『遊びましょー』『遊びましょー』


子供の声がする。


『ママ〜』



『?』俺の頭は突然の子供の声に混乱していた。



今まで金縛りにあった事はあったが、これ程ハッキリとツッコミを入れた事はない


小野
『ママではない』



次の瞬間、俺は瞳を開ける事が出来た。

すると目の前には子供の『顔』があった。


これまでに霊体験は何度か経験はあるが、ここまで自分にコンタクトをとってきた霊は初めてだった。


子供の幽霊と思われるその『顔』は消えていった。何処となく笑っていたと思う。

金縛りは解けていた。

すぐさま携帯の時計に目をやる。

午前3:05だった。


床に就いて約5分。


夢かとも思ったが、そうではないという自覚が出てきていた…。


これは何を予兆しているのか⁉︎


俺の身に何か起こるのか?


それとも千田先生の身に何かが起こるのか?


まさか…『小原嬢』『琳子姫』の『オッパイ』に何かが起きてしまうのか?


小野『おっきくなったりして…』


…。


今日は本番当日。

『何』が起こるか分からない。それが『舞台』
である。


子供の幽霊が何を示しているのかは分からない。


俺は『不安』と『期待』をお胸に抱き、



2度目の就寝についたー。




続くー

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