【本】「天才」は学校で育たない 汐見俊幸 ⑤

要約終わり。この章には励まされた。

・第5章

江戸時代までは身分に従って職業選択をする世の中だった。明治になると、日本は欧米に追いつくために、階級・階層的な人材政策を採らず、農民の中からでも、意欲と能力のあるものを社会の重要役職にリクルートするシステムを採用した。しかし、選択肢は少なく、努力が報われる若者は限られていた。

こうした状況が大きく変わったのは戦後、特に高度経済成長期である。新しい産業国家を作るため大量の労働力をリクルートするシステムが日本の歴史上初めて大規模かつ合理的に整備され始めた。

学校で点数と偏差値を高めると銘柄の学校に進学でき大企業へ就職できる。一生が保障され、若い頃の投資へのリターンも見込むことができる。そして、科学技術の発展、生産力の発展が、そのまま人類の幸せ度につながると信じられていた。庶民の子が世間に出る可能性と幅が広がり、夢が多様にある時代になった。この世代は「高偏差値→銘柄大学→大企業」が成功の方程式として刷り込まれている。

バブル崩壊前後から、年功序列、終身雇用、企業別組合、学歴重視といった日本型の雇用システムが崩れつつあり、こうした方程式が崩壊している。世界規模でも、豊かさを求めた結果、地球環境や生物多様性の破壊を引き起こし、深刻な事態を引き起こしているという問題がある。

生産力の発展ではなく、生産力をあげなくとも、身の丈にあった持続可能な生活で人間は幸せになるという考え方がスタンダードになる。

そうした視点から見ると、地位やお金にこだわらず、小さくてもいいから自分の納得いく人生を送りたいという新しい価値志向を持った「草食」の若者が時代のポジティブシンボルになり得る。

「天才」肌の子どもの可能性を支配的教育の外で伸ばすことで成果を出したように、支配的教育のもとでネガティヴに評価されてきた草食系も、新たな可能性の芽を見出し、上手く伸ばせば世界は変わるはずである。

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