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『文鳥・夢十夜』

The 7th of 7Days Book Cover Challenge.

“7Days Book Cover Challenge”7冊目。
ついに最終日。

7冊と限定されるとかなり悩んだが、最後はバタンを渡す方と、このバトンを受け取ったとき、真っ先に浮かんだ本にした。

『文鳥・夢十夜』
夏目漱石 著

表題だけでなく『永日小品』『倫敦消息』『自転車日記』『京に着ける夕』が収録されており、改めて読み返すと、やはり面白い。淡々とした文章でありながら、そこかしこに漱石らしい諧謔が見受けられ、彼の抱えていた自己嫌悪や無常感が各作品から伝わってくる、非常にお得な本である。しかも表紙のデザインと手触りが良い。

『夢十夜』は私と夫が初めて本のことで話があった作品である。私が貸したサローヤン『パパ ユーアクレイジー』を読まずに車のトランクで色あせたさせていたときは殺意を覚えたが、
「いや、しかしこいつは漱石が好きな奴なのだから、いつかわかりあえる」
と我慢したこともある。

中学受験をすることになった息子が、
「ぼく、この夢十夜が好きなんだよね」
と言い出したときには、まさか、国語の問題で恋のときめきを「心肺機能の異常」と答えたこの息子に、そんな感受性が⁈と、夫婦して驚き喜んだものである。

夏目漱石といえば、国語の教科書でしか読んだことがない、それもいきなり暗い『こころ』であったので、まったく好きになれない、という方は少なくないかもしれないが、本来、教科書にはこの短編集に収録されている作品を掲載して、日本語の美しさ、楽しさ、漱石という偉大な文豪であり、卑小な人間であった人に触れることが大切なのではないだろうか。
『文鳥』に出てくる鈴木三重吉が児童文学に生涯をかけたのは、やはりこの魅力的な師である「元祖ダメ人間」漱石の影響が強かったからではないか、と、『文鳥』最後の、

「可愛想なことを致しましたとあるばかりで家の人が悪いとも残酷だともいっこう書いてなかった」

という一文に、ふと思った。

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