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『核心』を包み込む

昨日、私のクラスの児童が隣のクラスの児童を怪我させる出来事がありました。
その子達は、いつもふざけ合っていつも危なっかしいため、どちらが加害者になっても被害者になってもおかしくない子達です。起こるべくして起こったことなんだと思っています。

それにしても、その私のクラスの児童はとにかく意地っ張りでトラブルが起こった時の事実確認では絶対に嘘をつきます。核心に迫られると涙をポロポロこぼして泣きますが、絶対に認めません。

何か心の中に、悲しい気持ちや、やるせない気持ち、辛い気持ち、認められたい気持ち…。だけど、抑圧されて捻くれてしまった、複雑な『核心』が彼の心の中にあるのだろうな、と思いました。

褒められると、その望ましい行動をしなくなること。口を開けば罵詈雑言や文句ばかり。だから、彼の周りにはいつも暴言で溢れています。「○○くんと遊びたくない」っていう児童もいます。本当は認められたいけれど認められる事が怖くて逆の行動をしてしまう。そして、注意され「ほーらまた注意された」と自分自身にマイナスな上書きをする。負の連鎖なのです。

以前、交流分析という心理療法を学んだことがあります。交流分析の「ストローク」は、一般に「プラスのストローク(褒めるなどの嬉しくなる反応)」と「マイナスのストローク(貶めたり悪口を言われるなど辛い気持ちになる反応)」があるとしており、人間は基本このストロークなるものを求めているのだそうです。もちろんプラスのストロークが溢れていれば良いですが、マイナスのストロークばかり浴びせられているとマイナスのストロークに慣れてしまうのだそうです。また、ストロークがなくなると「ストローク飢餓」という状況に陥り、マイナスのストロークでさえ欲してしまう、とのことでした。

浅学ですが、少しは学んだため彼の解像度が若干上がった気がしました。同時に、とてもとても悲しく、やるせない気持ちを味わってしまっています。

今朝、朝学習で彼に話をしました。
はじめこそは、いかにも余裕ぶってナメた態度を取っていた彼ですが、段々と勢いがなくなっていきます。そして、私とは目を合わせずに無視をしたような態度で表情だけはいっちょまえにツーンとしているのです。

あぁ。愛情が欲しいけれど。大人とうまく信頼関係も築けなくて。認めてほしいし構ってほしいけれど諦めてしまっているのかな。でも、虚勢で塗り固められた彼の態度の奥底から「助けてほしい」「僕を見てほしい」という叫びが聞こえたような気がしたのです。


これから言うことは別に聞いても聞かなくても良いよ、と前置きをし、いつまでも指をいじっている彼の手を握って伝えました。

人の行動には必ず理由があります。○さんが怖いこと(暴言)を言ったり友達に手を出してしまったら、それには○さんの最もらしい理由があるのでしょう。理由を生み出すのはあなたの感情、つまり心なんだけどね。先生には、あなたの心に何か悲しいものが詰まっているように感じる。そしてわかっているのに言ってしまう、わかっているのにやってしまう、そんな自分が嫌になって自暴自棄になってしまっているようにも見えます。でも本来の○さんは悪口をたくさん言っちゃう○さんじゃなくて、給食を等しく分けることができたり片付けを誰よりも残ってやってくれる○さんなんじゃないかな。

今、先生は○さんのことをわかったような気になってお話したから「全然違うし」って思ってるかもしれない。あなたの心の中には、もっともっと複雑な気持ちが絡んでいて「先生になんてわかりっこない」って心を閉じてしまっているかもしれない。

先生は○さんが怖いことを言うと、先生も怖い顔をして注意するよね。でも、それは言われた周りの子達のために演じているだけだというのを○さんに伝えておきます。先生は○さんのそのような行動の何もかもを「先生に何かを伝えたいんだな」と捉えます。先生は○さんの行動から○さんの心を知りたいと思っていますし、どのようなものであれ先生は必ず受け止めます。信頼できないかもしれないけど、先生は○さんがリラックスできる相手になれるように頑張るからね。


こんな内容のことを、彼の手を握りながら話しました。懇親の語りでした。朝から本当に疲れました。彼の心の奥底に入り込んだつもりです。

子どもらしい表情を失っていた彼の表情は少しだけ緩み、純粋に悲しそうな表情を見せたような気がしました。
少しでも愛情を欲している(ように見える)彼の心が少しでも暖かさを感じることができれば…と思います。


心に余裕がなくなった時、彼に対して慈悲を取り戻すために記した、そんな書き散らしです。

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