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カ タ チ ア ル モ ノ

ボクはデザイナーです。

デザイナーには資格がないので、デザイナーと言えば

みんなデザイナーになってしまいますが。

一応これで長年メシを食っております。


一言にデザイナーと言っても色んなデザイナーがいます。

服や車などデザインするプロダクトデザイナーや、

ボクのようにカタログや広告を作るグラフィックデザイナー。

Webを作るデザイナーも動画を作るデザイナーもいる。

建築や標識、ヘアメイクだって言ってしまえばデザインだ。

漫画だって、かなり高いデザインセンスが必要とされると

漫画家の嫁を持つボクは思う。(そしてうちの嫁は高いと思う)

こんな仕事してるから想うことなのかもしれないが、

世の中にデザインされていないモノなど存在しない。

そんなことをよく考える。

カッコいいと思うモノは勿論、

みんなが何気なく見ているモノや買うモノ、

すべて誰かが必要に応じてデザインしたものだ。

ボクは時々思う。これは何故このようなデザインになったのか。

デザインとは、理由があってカタチ作られたモノだと思う。

今着ている服だって、あなたの好きなモノや嫌いなモノだって。

あなたが悩んで買った気持ちだって。

そのケータイやパソコンだって、もっと言えばこの文字だって。

言語のチョイスや改行の位置や行間だって。

使い易さやわかり易さを追求するのは、やはりデザインである。

「これはここにあった方が便利だ」「四角より丸い方がカッコいい」

デザインです。

「このコマ割だと、吹き出しはここにあった方が読みやすい」

デザインです。

例え困っている人を救えなくても、

大地震の時になんの役にたたなくても、

日本の経済を救えなくても、

真っ先に制作費の予算を削られても、

好みと違っていても、

人の数だけ好き嫌いがあって、

デザインの可能性は無限で、

コツはあっても正解はなくて、

気に入られようが気に入られまいが、

ボクにとっては決して何でもいいモノではなくて、

見た目や使い勝手にこだわりを持つことは、

人が持つ素敵な才能だと思う。

きっと犬や猫はデザインなんて気にしない。


恒例の余談ですが、ボクが会社員デザイナーだった頃、

女性ファッションのカタログを制作していて、クライアントに

「カッコいいけど、男っぽいのよねぇ。女性のデザイナーさんに

お願いしたいわ」と言われた事があった。

ボクは「へい。わかりました」と会社に持ち帰り、自分で直し、

「女性スタッフに直してもらいました」と伝えたところ、

「これこれ。こういうの。やっぱ女性の感性だわ」と

言われたことがある。

デザインって面白い。

デザインって情報なんです。情報を具現化したモノで、

そこには先入観とか、主観とか色んな感覚で見方が変わる。

人が持つあらゆるイメージを想定し、それらを組み合わせて

ひとつのカタチを作る。

それがデザインだと、ボクは思っている。


ボクの好きな一昔前の長編アニメーション『オネアミスの翼』で

主人公のシロツグが人類初の宇宙飛行に挑む直前、

叫んだ台詞が子供の頃からずっと印象に残っている。

敵国に攻め込まれて、ロケットの打ち上げを断念した上官が

「諦めよう。くだらん事だ…」と言った時

「俺たち立派だよ! みんな歴史の教科書に載るくらい立派だよ!」

と叫んで強行したシーン。

なんてカッコいいのだろう。

ボクもそんなこと言ってみたい。

歴史の教科書に載ることはないだろうが、

きっと大事なのは

誇りと責任。

そして愛。

愛なんて言うと笑われるかもしれないケド、

愛のないデザインなんて

なんの価値もない。

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