見出し画像

フランスでタイヤがパンク 〜承〜

フランスからオランダへの帰り道。パリから約100km辺りで突然左後ろタイヤがバーストしてしまい、何とかレッカー車を呼ぶところまで漕ぎ着けたのですが、時刻は既に夜の21:00過ぎ。
※詳しくは前編をご覧下さい。

こんな名も知れぬフランスの一角で、レッカー車を待つなんて、とんだ長期戦になるだろうと予想し、運転席のシートを倒してちょっとリラックスと思った矢先、パトカーがやって来て、フランスの警官が何やってんだ?と言わんばかりに横付けして来たので、運転席の窓を開けて、ズタボロになった左後ろタイヤを指差すと、「あ〜、なるほどね」と、特に免許証やコロナの陰性証明や、夜間外出許可証などの提示を求められることもなく、(当時フランスは夜間外出制限が敷かれていました。)そのままパトカーは行ってしまいました。

ホッとするやら心細いやらw ヨーロッパの夏の陽が長いとはいえ、さすがに辺りは段々薄暗くなってきつつあったのですが、それから数分でレッカー車が到着しました。

「早っ!何かの間違いでは?!」と一瞬疑ったのですが、レッカー車を運転するおじさんにはちゃんと話が通っており、ズタボロの左後ろタイヤを確認すると、手際良く車をレッカー車の荷台に載せる段取りに入りました。

レッカー車のおじさんがおそらくフランス語で何やらしゃべって来たので、イングリッシュプリーズと言うと、カチっと英語に切り替えてくれ、どうやら荷台に積んだ車に乗り込めということだったので、素直に乗り込みました。
#ヒアリングは雰囲気
#英語フランス語バイリンガルかっこえー

そのサービスエリアを縦断し、出口付近にあるガソリンスタンドに差し掛かると、そのレッカー車はそこで一時停止。

おじさんがトイレにでも行くのかな?と荷台の車の中から様子を伺っていると、そのガソリンスタンドに先に停まっていた小さいワゴン車に乗っていた黒人系の若者数名とおじさんが何やら会話し始めました。

僕は想像力を振り絞り、その若者達はどこか近辺の車の修理屋で、レッカー車を運転していたおじさんはその小さなワゴンで家に帰り、若者達はレッカー車を自分達の修理場へ運転して行く、そんな交代劇をイメージしました。

よく見るとその黒人系の若者は5人もおり、小ちゃいアジア人のおじさんなんて一瞬でなぶり殺せるぐらい凶暴な集団に見えて来てwレッカー車の荷台の身動きがとれない車の運転席で背中に冷たいものが流れるのを感じました。

しかし、よく観察していると、若者達が乗るその小さなワゴン車はエンジンがかからなくなってしまったようで、そのレッカー車の後ろに牽引する形で、皆でセッティングする音が聞こえて来て、そもそも偶然、先に同じサービスエリアの違う場所で、レッカー車を要請しており、たまたま後からレッカー車をお願いした僕がサービスエリアの入口付近で待機していたので、先にピックアップしてくれたということを理解しました。

これでレッカー車が到着するのが早過ぎたのも説明が付きます。

かなりタイミングが良かったんだなということで、これがもう少し遅かったら、かなり長時間レッカー車の到着を待ったのではないか?と考えると、パンクしたのは不運ですが、レッカー車タイミングは幸運だった訳です。

そのサービスエリアはフランスの高速道路の有料区間内だったこともあり、レッカー車のおじさんが、僕に高速代10ユーロを渡すよう要求して来たので、言われるがまま10ユーロ紙幣を渡し、替わりにという訳ではありませんが、おじさんが持って行った僕の車のキーを一旦返してもらい、少しでも車内でスマホを充電することに。

2台の故障車を載せたレッカー車は、フランスの夜の高速を、赤と青のランプを点灯させながら、どこへ向かうのか?しばらく走り続けました。

その間、なけなしの電池残量を気にしながら、音声アプリClubhouse内で、得意の?!ハプニングであるこのフランスでのパンク実況を楽しんで頂きながら、この後どういう展開になるのか、皆固唾を飲んで見守って(聞き守って?)下さいました。

そう言えば、今朝妻からの「一応モバイルバッテリー持って行ったら?」という忠告を「フランス往復するだけやねんからいらんやろ」と聞かなかったことを今更後悔w

車のエンジンをかける手前までキーを回し、スマホに電気を注ぎます。

音声アプリClubhouse内で、この場合、車両保険でパンクの修理代やホテル代などがカバーされるのではないか?という議論が交わされる中、レッカー車の荷台から外の暗闇とレッカー車の頭上で点滅する眩しいランプを眺めながら、時間が経つにつれ、一体どういう結末を迎えるのか?不安も膨らんでいきました。

いつしか高速を降り、街灯もほとんどない郊外をひた走ること十数分、レッカー車は巨大なRENAULT(ルノー)のディーラーの入口に到着し、レッカー車のおじさんが車を降りて何やらゲートをいじっていたと思ったら、そのゲートが自動で開き、レッカー車は迷わず中へ滑り込みました。

画像1

大きな建物の裏手に回ると、真っ暗闇で、その一角に若者5人組のワゴンを駐車させ、そのイカツイ5人組のリーダー的な男性がレッカー車のおじさんと何やら話をした後、その5人組は建物に沿ってどこかへ歩いて行きました。

その後、僕の車も敷地内の一角に降ろされ、おじさんが、待機所があるからそこに居れるのと、キーは俺が預かるから、車の中の必要なものは取り出しておくなりしておけというような事を言った(と思う)ので、積んでいたカバンと、おやつと飲み物と、スマホの電源ケーブルを回収し、このディーラーの建物のどこかにある待機所へ向かうことになりました。

この時点でどう考えても、一晩明かすことは確定しており、見知らぬ外国の土地でホテルを探したり、タクシーを呼んだり、その費用を保険会社に請求出来るのか?など、音声アプリClubhouse内でのアドバイスにあれこれ思考を張り巡らしながらも、やはり不確定要素が大き過ぎるという判断で、このディーラーの待ち合い室で一晩耐え忍ぶことにしました。

待合室は一体どんな感じなのか?
ソファなんかがあって寝そべることはできるのか?
とにかく雨露が凌げれば、それだけで充分だと自分に言い聞かせて、おじさんに促されるまま、ディーラーの入口付近に向かいました。

すると、暗がりの中に佇む、そのRENAULT(ルノー)のディーラーの入口付近に、入る時には気付かなかった簡易小屋があり、そこだけ明明と明りが灯っており、あそこが待合室かと、若干の期待外れ感は押し殺し、暗がりに白い蛍光灯が光々と点く、その6畳程度の広さの待ち合い小屋に近づいて行くと、何とその中に、先程のイカツイ黒人系5人組の若者達がイスに腰かけたり、机に突っ伏していたり、床に寝そべったりと、思い思いの格好でひしめき合っているではありませんか!

「ゲッ!?この中にアジア人の小ちゃいおっちゃん一人でヅカヅカ入って行き、朝まで耐え忍ぶの?!」と戦慄が走りました。

その間、レッカー車のおじさんが仕切りに何か忠告してくるのが理解出来ず、音声アプリClubhouse内で固唾を飲みながら僕の動向を聞き守ってくれていた在オランダの先輩が通訳して下さり、どうやらこの待合小屋は中からは施錠出来ず、外から施錠するしかないが、一旦中から開けてしまうと、もう施錠出来なくなる仕組みらしく、こんな郊外であっても何があるか分からないから、どうする?ということで、時刻は既に夜中の12時過ぎで、レッカー車のおじさんは翌朝9時にまた来るとのこと。

蛍光灯が明々と点いたその待合小屋の無駄に大きな窓から見える一角には、トイレと思しきドアが一つ。

あとは簡易なテーブルが一つ、折り畳みパイプイスが10脚程度と、電源を入れると空気が送り込まれ、ムクムクと膨らむディーラーのキャラクターのバボットがグシャグシャに押し込められたカゴがあるぐらい。

翌朝レッカー車のおじさんが戻って来るまでの約9時間、怖そうに見える黒人系の若者5人とこの狭い待合小屋で朝まで過ごす・・・

そのイカツイ若者達には施錠の件を聞いたのか?まずは独りぼっちの小ちゃいアジア人のおっちゃんに気を遣ってくれたのか?

いずれにせよ、施錠の件は自分一人で決める訳にもいかず、かと言って「その若者達は何と言ってるんだ?」と聞き返す英語力ももちろん持ち合わせておらず、Clubhouse越しに在オランダの先輩に、鍵は閉めなくて良い旨を伝えてもらい、いよいよ意を決して、黒人系若者5人が既にリラックスしているその待ち合いへ侵入することに。

ビビっていることを悟られまいと、「俺はこんな修羅場、何度も潜り抜けて来たぜ」顔で、あえて太々しい雰囲気を懸命に演出し、いざ中へ入りました。

若者達の数名はこの小ちゃいおっちゃんを一瞥したものの、特に興味を示さず、再びテーブルに突っ伏したり、スマホをいじったり、リーダー的な一人は、誰かと電話で話したりと、まずは第一関門クリア。

この時点でスマホの充電は後僅か数パーセントしか残っていなかった為、Clubhouseの部屋は閉じ、妻にLINEで、電池が後僅かだと伝え、電源が確保出来るまで不要な消耗は避けることにしました。

実は少し前から僅かながら便意をもよおしており、まずは自分の居場所を確保する前に、すぐトイレへ行くことに。

屋根とトイレさえあれば、最早天国。
9時間なんて人生におけるほんの僅かな時間と心の中で言い聞かせながら、特に掃除も行き届いておらず、染み付いた悪臭が漂うトイレで用を足そうとしたその時、なんとトイレットペーパーがないことを発見してしまいました。

棚的な所はなく、小さなゴミ箱があるだけのそのトイレのどこを探しても、予備のトイレットペーパーは見当たらず、自分もポケットティッシュは持ち合わせておらず、小さなゴミ箱に紙的なものがないか物色するも見当たらず、幼い頃に何度か経験した、トイレットペーパーでお尻を拭くも何も付かないという奇跡を期待するしかない状況が確定w

それが分かった瞬間から便意は引っ込み、小だけ済ませて、後は無駄にお菓子などを食べて大腸を刺激しないように努めることを自分に課し、トイレから出ました。

相変わらず5人の黒人系の若者達は各々過ごしており、その中でもリーダー的な一人はずっと電話で誰かと話し続けていたので、そんな勢いでスマホの充電を減らして大丈夫なのか?と勝手に心配していました。

持って来たのはスマホのUSB充電ケーブルだったので、小屋のどこかにUSBの差し口がないか見渡すも見当たらず、特にそれらしい機器も見当たらず、暖房ヒーターが備え付けてあるだけだったのと、その若者達の誰もスマホを充電している様子はなかったので、ひとまずUSB探しは保留しました。

その狭い待合小屋のどこに陣取ろうか?辺りを見回すと、小屋の端に置いてあるテーブル付近に座っている若者の二人の内の一人が、近くの空いているパイプイスを軽く動かし、僕に「ここに座りなよ」と目で合図をくれたので、小さく「サンキュー」と言い、とにかくそのパイプイスに腰かけました。

念の為、貴重品の入ったバッグは体に斜めにかけたまま、頭の後ろに両手を回した格好で、しばらくボーっとしてみましたが、眠い訳でもなく、頼みの綱のスマホの電池あと僅かな為、最後の緊急時用にと、依存症と戦うかの如く、イジりたい衝動を抑え込みました。

あと8時間程をどうやり過ごすのか?
明日パンクの修理はうまくいくのか?
そもそもオランダには帰れるのか?

複雑な想いが交錯する中、待合小屋で突如動きがありました!

つづく・・・

オランダサポート_ONLINESHOP
ドライバーサービス_20201123



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?