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「人類を裏切った男~THE REAL ANTHONY FAUCI(中巻) 」③ ポイント抜き出し 3/6~第5章 HIVに対する異論

 2021年11月9日に米国で発売された本書は、書店に置かれず、様々な妨害を受けながらもミリオンセラーとなり、この日本語版も販売妨害を避けるためか、当初はAmazonでは流通させず、経営科学出版からの直売のみになっているようだが、現在はAmazonで買うことができるようになっている。

 日本語版は1000ページを超えるために3巻に分けられた。

本書はその中巻「アンソニー・ファウチの正体と大統領医療顧問トップの大罪」だ。

 極めて重要な情報が満載で、要旨を紹介して終わりでは余りにも勿体ないので、お伝えしたい内容を列記する。

今回は第5章/HIVに対する異論。

エイズという病気の存在自体に疑問を投げ掛ける内容だ。

以下、抜粋。

 はじめに断っておくが、私はHIVとエイズの関係については何らの立場を取るものではない。
私がこのような過去の事実を語るのは、政治と権力がいかに「科学的コンセンサス」 を決定し続けるかを示す重要な事例を提供するためだ。
 こうしたやり方が、ガリレオ以来約400年、経験主義や批判的思考、あるいは確立された科学的方法の手順に取って代わったのだ。権威ある者が発した宣言への宗教めいた信仰を、医学分野における「真実」の源泉、つまり規律ある観察、厳密な証明、再現可能な結果として代用するのは、民主主義と公衆衛生を危うくする。
 合意形成(コンセンサス)は政治的には立派な目標かもしれないが、科学と真実には敵となる。
「解決済みの科学」という言葉は矛盾している。「専門家を信じよ」という忠告は権威主義の約束事である。科学は破壊的であり、不遜であり、ダイナミックであり、反逆的であり、民主的である。

 科学は波乱である。経験に基づく真実は、議論、つまり一般に、耕され、攪拌され、ひっくり返された土壌から生まれるものだ。疑いや態度保留、問題提起、そして異論がその肥料となる。進化論から地動説、相対性理論に至るまで、歴史上のあらゆる偉大な科学的進歩、変革のアイデアは、当初は「科学的コンセンサス」というお偉方から嘲笑を浴びせられた。

 特に、エイズに関する独自の仮説は、既得権益者(この場合はアンソニー・ファウチ博士)が、金と権力、さらに地位や影響力を使って、不完全な理論の上に立つコンセンサスをいかに形成し、その後、反対意見を冷酷に弾圧できるかを示す例だ。

 ファウチ博士が中心に据える学説は、HIVだけがエイズを引き起こすというものだ。

 ロバート・ギャロ博士がまずHIVがエイズの唯一の原因であると主張し、ファウチ博士が便乗した形だが、それ以来30年間、誰もその仮説を科学的に証明する研究を指摘できていない。ファウチ博士は自分が提案した科学的根拠の説明を頑なに拒んだ。のみならず、懐疑的な立場を表明している多くのノーベル賞受賞者など適格な評論家との議論も拒んできた。

 ファウチ博士は、批判者による常識的な質問に答える代わりに、自身の正統性を疑問視する行為は無責任で無知で危険な異端であるとして糾弾する神学を育ててきた。

 ファウチ博士は議論をかわすために多くの戦術を開拓した。マスコミを幻惑して混乱させ、彼の信条とするところを正当に調査させなかった。 調査しようものなら、闇に葬られ、誤った考えを植え付けられ、罰せられ、嫌がらせをされ、脅迫され、疎外され、中傷されるので、批判者は口をつぐむ。 新型コロナウイルスなど、その後のパンデミックに対する彼の誤った管理への疑金に意識を向けさせないようにしたのだ。
 したがって、HIVとエイズの根底にある論争に結論を出すのではなく、ファウチ博士が 「科学的」神学を打ち立てて強固にしようともがく中で磨き上げた武器の検証に価値がある。

 HIVだけがエイズの原因ではない可能性があるとする意見に、大きな影響力をもって、公然と、かつ粘り強く異議を唱えたのは、ピーター・デューズバーグ博士だ。
 1987年当時の彼は世界で最も優れた洞察力を持つレトロウイルス学者として名を馳せていた。デューズバーグ博士は、ファウチ博士がアジドチミジンで大量殺人を犯したと非難する。

 ディーズバーグに言わせれば、この毒性の強い化合物アジドチミジンは、我々が現在「エイズ」と呼んでいる免疫抑制状態を引き起こす原因であり、病気を治したりはしない。

 彼は、HIVはエイズの原因ではなく、悪い環境にさらされた結果として免疫抑制に苦しむ高リスクの人々に共通して見られる「ただ乗り」 ウイルスにすぎない、と主張する。

 まず、デューズバーグの指摘では、エイズを発症していない何百万人もの健康な人にHIVが見られる。逆に、明らかにHIVに感染していないエイズ患者が何千例と知られている。ファウチ博士は、これらの現象を説明できずにいる。

 他の多くの著名で思慮深い科学者たちは、HIVの正統性におけるこの不可解な亀裂を説明するために、様々な理にかなった仮説を提示している。そのほとんどは、HIVがエイズの発症に関与していると認めているが、他の要因もあるはずだという仮説だ。

 それでも彼(デューズバーグ)の主張は、世界で最も思慮深く優れた科学者たちを引き付けている。その中には、HIVを最初に分離したリュック・モンタニエを筆頭に、多くのノーベル賞受賞者が含まれている。

 権力者が人の舌を切るのは嘘をつかせないためではなく、真実を語らせないためなのだ。
 もし、デューズバーグ博士の新発見が確固としたものであるなら、彼の身の上話は今につながる重要な意味を持つ。彼が舌を切り取られたのは、製薬カルテルの力の表れだ。 利己的な技術官僚と結託して、ウイルスによるパンデミックを誇張して利用し、だまされやすい大衆に有毒で危険な治療薬を押し付け、利己的な計画を促進し、ひどい結果がもたらした。この流れに、科学的知識のないメディアが媚びへつらって加担した。ファウチ博士は、議論や反対意見の封じ込めによって、国民の恐怖を数十億ドルの利益に変えて製薬会社に利し、同時に彼自身の権力と権威主義的支配を拡大したと、デューズバーグや彼に同調する人々は告発する。

 HIVが原因であることは自明の理のように思われた。この仮説に異論があるとは考えてもみなかった。ところが昨今。HIVがエイズの唯一の原因であるとする説を多くのウイルス学者が騒ぎもせずに疑っていると知った。

 1981年7月、CDCは一風変わった病気の流行を報告した。 ロサンゼルス、ニューヨーク、サンフランシスコの乱交好きなゲイ男性の間に広がった免疫不全症候群だった。
 1983年5月、フランスのパスツール研究所のウイルス学者リュック・モンタニエが 『サイエンス」誌で、後にHIVと呼ばれるレトロウイルスを初めて同定した。 モンタニエは、自分で採取したエイズ患者のリンパ節からHIVの存在をはっきりと認めた。
 モンタニエの講演に参加した聴衆の中に、国立がん研究所 (NCI)の(中略)ロバート・ギャロ博士がいた。 ギャロは新しく発見されたレトロウイルスのサンプルを送るようモンタニエを説得し、『サイエンス』誌に働きかけてモンタニエの研究を早く出版させると約束した。
 ところがギャロ博士は、その発表を引き延ばし、モンタニエのウイルスを培養して成果を横取りする時間を作った。そして、他の保健福祉省(HHS) 職員の助けを借りて、ギャロはモンタニエから入手したウイルスを自分の発見だと主張し、想像力に富んだ狡猾な部下を使って、自分の窃盗を隠蔽するために複雑な詐欺を働いた。

 ごく自然に、ギャロはトニー・ファウチという強力で頼もしい味方を得た。エイズの原因はウイルスであり、有害物質への曝露ではないとギャロは「証明」した。

 この証明はファウチ博士のキャリアにとって重要な礎石となった。おかげで、 ファウチ博士は、NCIからエイズ・プログラムとそれに付随するキャッシュフローを奪い取り、 国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)を世界有数の医薬品生産帝国へと発展させるプロジェクトを開始できた。

 1984年4月23日、ギャロは自分の上司であるマーガレット・ヘックラー保健福祉長官に、この劇的な発表に信頼性と重みを与えてほしいと依頼した。 ヘックラーは、国際的な報道陣が詰めかける中、壇上に立ち、世界に向けて語りかけた。
「こんばんは、みなさん。エイズの原因であろうと思われるものが見つかりました。がんウイルス
に似たレトロウイルスです。今日、私たちはアメリカの医学と科学の長い歴史に新しい奇跡を加えました」

 ヘックラーがギャロの記者会見に参加したことは査読を受けていない理論にNIHという組織が権威を与えるという意味で、重要な演出であった。

 後で判明したことだが、NIHは、ギャロがHIVを検出できる抗体検査キットの特許を個人的に取得するまで発表を延期してよいと許可していた。彼は納税者の負担でこの検査法を開発したのだ。
 モンタニエも検査法を開発しており、ギャロの方法よりはるかに優れていたにもかかわらず、ギャロはCDCのジェームズ・カランと共謀して、いずれの試験法も同等の品質だと不正に認証した、とクルードンは書き残している。ギャロは、この技術革新によって億万長者になろうと企む傍ら、ウイルスは致死性かもしれないと恐怖をあおった。それが偶然にも売上につながった。その後、この詐欺行為に対してフランス政府から訴訟を起こされ、ギャロは売上の半分を没収された。

 ギャロの早まった発表は「プレスリリースによる科学」という新しい戦略の先駆けとなった。この戦略は、ファウチ博士の武器庫にある話術の主軸としておなじみとなり、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにおいて結実した。

 ギャロ博士とモンタニエ博士は、レトロウイルスの研究に専念してキャリアを築いてきた。2人ともがんの研究者だった。エイズが出現する前から、2人はレトロウイルスを白血病の原因として関連付けるべく無益な努力を続けていた。1975年、ギャロは、このテーマについての論文を発表する前に、白血病の原因となるヒトレトロウイルスHL-25を発見したと公表し、全米で大ニュースとなった。

 当時、白血病は爆発的に増えていた。

 米国の2つの研究グループが、HL-23 ウイルスはテナガザル、ウーリーモンキー、ヒヒに由来する3種類のウイルスが混入した実験室汚染だと証明した。

 こうした屈辱にもめげず、ギャロはHTLVウイルス(自分が発見したと言っているが、クルードソンによれば、日本人研究者の研究成果を盗んだ)がエイズの原因だ」と言い出したのだ。

 しかし、エイズ患者の血液からHTLVを検出したという主張を証明できず、ギャロのあからさまなノーベル賞への野望は打ち砕かれそうだった。そんな絶体絶命のときに、モンタニエの成功を知った。モンタニエに負けたと認めたくないギャロは、お人好しの彼をだましてサンプルを送ってもらい、別の科学者から盗んだ基質で培養した(これもクルードソンによる情報)。

 翌年の春、『サイエンス』誌にギャロの研究室から4件の論文が発表され、これによりギャロは「スーパーマン・オブ・エイズ」の異名をとるようになった。最初の論文は、ギャロがエイズ患者からいわゆる「新型」ウイルスを分離したとの報告だった(ギャロの研究室で、フランスのウイルスが培養され名前を変えられたものだ)。2件目の論文では、「4人の被験者から新種のウイルスが分離され」、このウイルスがエイズの原因であると証明するのに役立つ発見だと述べられていた。
「シカゴ・トリビューン』紙がギャロの実験ノートを調べたところ、ウイルスが分離された4例の形跡はなかった。

 アメリカとフランスの政府は、どちらの科学者がHIVを「発見」したかをめぐって争ったが、1987年に両国は「共同発見」とすることで合意した。

 ノーベル委員会は2008年にモンタニエに賞を授与した。ギャロの受賞があっさり見送られたのは、彼の非道徳な行為はすでに有名で、十分に証拠が残っていたからだろう。

 前述のような疾風怒涛の対立のために、両国のがん研究者が発見したレトロウイルスがエイズを引き起こす可能性があると示唆しただけの科学論文を発表した、という事実が見えなくなってしまった。
 モンタニエは、HIVがエイズの唯一の原因であることを証明したという自身の主張に常に控えめで、最終的にはこの理論を否定することになる。

嘘で固められた審査委員会

 ギャロも、ファウチ博士と同様、治験責任医師と報道機関という手駒を持っていた。
 医療業界はすぐさま、ギャロの仮説を受け入れた。(中略)報道陣はギャロの説を議論の余地のない教義として広め、ギャロを聖人として扱った。

ジャーナリストにして編集者でもあるマーク・ガブリシュ・コンランがギャロの記者会見を評した。
「ロバート・ギャロの記者会見はいつも文献が公表される前なんですよ。だから、他の科学者がレビューする時間も、エビデンスを調べる時間も取れず、質問する機会もありません。こんなやり方が正しいのでしょうか?」
ギャロの発表はアンソニー・ファウチにとって思いがけない幸運だった。エイズの流行をウイルスのせいにすれば、エイズ関連の資金の流れを国立がん研究所からNIAIDに振り向けて、あふれんばかりの財源にできるからだ。
ファウチ博士は、HIVに対する新しい抗ウイルス剤を開発するために、NIAIDに流す資金の水門を開いた。彼は、助成金を欲しがる治験責任医師たちを犬小屋から解き放ち、ウイルスを殺す新薬を作り、テストさせた。意外にも ファウチ博士は、HIVが実際にエイズの原因なのかどうかを調べて結論を出すための助成金を一度も交付していない。
 連邦法では、NIHの助成金審査委員会は、申請書の主題に精通し、独立した外部の科学者である真の専門家で構成されることを義務付けている。それは申請書の科学的価値を評価するためである。ファウチ博士はこの法律を無視して、 助成金審査委員会に自分の息のかかった治験責任医師を配置し始めた。

 NIHの審査委員会の前委員長を務めたグラファマンは、慢性疲労症候群の研究計画を提出した。慢性疲労症候群は微妙な課題だった。というのもファウチ博士が支配する宇宙に脅威を与える可能性があったからだ。そこには、 ファウチ博士を批判する者の多くが慢性疲労症候群はHIVに由来しないエイズと考えていたという背景があった。

科学の終焉

 マーク・ガブリシュ・ヨンランは、「HHSは今後、ロバート・ギャロの言う、ウイルスが原因であることを前提としたエイズ研究のみに資金を提供することを決定した。ファウチ博士は、他の可能性についての研究に資金を提供しない。したがって、ギャロの論文を批評しようと思った科学者たちは、その瞬間から研究ができなくなってしまう。 少なくとも連邦政府の支援が得られなくなり、事実上この国の科学は一本化された」と言う。

 ファウチは36年間、連邦政府の助成金をすべてエイズの単一病原体説に投入した。
 彼は、恐ろしいほどの影響力を行使して、エイズの要因が他にもないかを探る研究を思いとどまらせた。

 この「確証バイアス」に満ちた研究は必然的に、「エイズ」の定義の急速な拡大という結果をもたらした。 ファウチ博士が率いる科学者の大隊は、PCRを用いて、広範囲なHIV検査プログラムを実施した。
 
 この方法では無差別に、ずっと前に死んだ遺伝子の残骸であっても、その小さな鎖を何十億回も増幅することができる。 PCR検査では、今HIVに感染しているか否かを特定できなかった。この検査法を開発したマリスは、PCRを使えば、HIVに侵される心配のない人や、体内に生きたHIVウイルスが存在しない人の多くにおいて、HIVのシグナルを見つけることができると指摘した。

 当然、研究者たちは他の病気の人たちから無害なDNAの残骸をHIVとして発見した。 そして、これらの無関係な病気は、やがてエイズの定義に組み込まれていった。カンジダ症やカポジ肉腫がある人で、PCR検査が陽性ならエイズだ。その人がPCRで陰性なら、エイズではなく、カポジ肉腫かカンジダ症だ。

 このやり方で、エイズの定義は急速に拡大し、30種類ものよく知られている病気を包含するようになった。カポジ肉腫、ホジキン病、帯状疱疹、カリニ肺炎(ニューモシスチス肺炎)、バーキットリンパ腫、イソスポラ症、サルモネラ敗血症、結核などが該当するが、これらはすべてHIVに感染していない人にも発生する。

 『Rethinking AIDS(エイズ再考)』の編集者ポール・フィルポット理学修士は説明する。
「エイズは病気の集合体であり、医師が何らかの方法でHIV陽性と判断した患者がエイズと呼ばれるようになります。エイズというカテゴリーの病気は、すべてHIV陰性の人にも起こります。
どれもHIV陽性の人だけのものではありません。しかも、どれも原因や治療法がよく知られていて、HIVとはまったく関係ないものばかりです。ですから、どの病気も、HIV検査で陰性と判定された人の場合はもともとの病名で呼ばれ、HIV検査で陽性と判定された人の場合はエイズと呼ばれるのです」
 ファウチ博士が放った日和見主義の治験責任医師たちの手中で、エイズは定義が変われば名前を変える病気になった。昔からある複数の病気を併発し、HIV陽性となった人はエイズ患者となった。

 エイズの大流行は予想どおり爆発的だった。PCRを用いて診断が拡大し、WHOは、HIV感染者は7800万人で、死者は3900万人にのぼったと推定している。現在、3500万人がHIVと共に生き、毎年200万人以上が新たに感染している。

 この大雑把な診断システムと、どこでもエイズを見つけて報奨金をもらえるといううまい話は、ファウチ博士のゴールドラッシュと契約した機関や個人に富を約束するものだった。HIVを殺す抗ウイルス剤を売って莫大な利益を得ているグラクソ・スミスクライン社のような多国籍製薬会社は、ファウチ博士の正統性に異議を唱えようとはしないのだ。

アフリカのエイズで大儲け

 トニー・ファウチ博士の助成を受け、大胆不敵な研究者たちは、この伝染病が何らかの形でアフリカに到達し、誰も気づかないうちに2500万人ものアフリカ人が感染しているという実態をすぐに突き止めた。
 研究者たちは、 PCRの結果が陽性であった小さな集団の結果を推定の根拠とし、胡散臭い統計モデルを用いた。そして、いくつかの国では成人人口のほぼ半分がHIVに感染しているとの報告をあげ、 アフリカ大陸の人口が広範囲に減少すると予測した。
 しかし、驚くほどの人口減少は起きていないし、HIVに感染したアフリカ人の多くは、病気の兆候を示さなかった。 病気になった人に見られたのは、それまで診断されていたものとよく似た病気だった。例えば、マラリア、肺炎、栄養失調、ハンセン病、ビルハルツ住血吸虫症、貧血、結核、赤痢など、病原体や寄生虫で起きる、アフリカの医師がよく知っている感染症だ。

 アフリカでHIV抗体検査を普及させるには費用がかかりすぎるため、WHOは1985年以来、臨床症状に基づいてエイズを診断する「バンギの定義」を使用している。

 アフリカのエイズは、欧米のエイズとはまったく別の病気であることは否定できない。欧米諸国ではエイズは依然として麻薬中毒者や同性愛者の病気であり、欧米のエイズ患者のうち女性は1%にすぎなかった。一方、アフリカではエイズ患者の98%が女性で、55%は異性のパートナーを持ち、残りの15%が子どもだ。欧米では主に男性同性愛者に限られていた病気が、アフリカでは異性のパートナーを持つ女性が患者になっていることを誰も説明していない。
 「アフリカのエイズは、北米やヨーロッパのエイズとはまったく異なります」とデューズバーグは私に言った。「アフリカの人々が高価なPCR検査を受けることはまずありません。それで、原因不明の死がすべて『エイズ』にされたのです」

 アフリカでエイズと診断される所見は、高熱、咳の持続、30日間の軟便、 2ヵ月以内の10%の体重減少である。その定義に従えば、欧米の観光客の多数がアフリカ滞在中にエイズを発症していることになる。簡単な治療法がある。 飛行機に乗ってニューヨークに戻ることだ。ニューヨークには、その症状だけでエイズと診断する医師はいない。

 「経済的な理由でやむを得ないのだが、アフリカでは常にと言っていいほど推定診断が下され、HIV検査で『陽性』反応を示さなくてもエイズとされます」と科学ジャーナリストのセリア・ファーバーは、教えてくれた。
 「ビッグファーマ、研究者、診療所、WHOをはじめとする国際保健機関、地方政府が共謀して、アフリカにおけるエイズの臨床的定義を驚くほど広く一般的に適用できるようにしています。最初から資金調達のための意図があったと考えてもよい、仲間内で通じるブラックジョークのようなものです。というのも、前例のない国際的な資金がアフリカのエイズ救済に流れ込んでおり、これをかすめ取って自分たちの懐を潤しているのですから」

 WHOの元疫学部長のジェームズ・チン教授は、2006年に 『The AIDS Pandemic: TheCollision of Epidemiology and Political Correctness (エイズ・パンデミック ―疫学と政治的公正の不一致」を著した。同書では、数十億ドルの資金を維持するために、途上国のエイズ患者数が大きく操作されたときっぱり認めている。
元HIV研究者で、テキサス大学タイラー校の個体群動態・数理生物学教授レベッカ・カルショー博士も次のように語る。  「アフリカでの流行は、アメリカやヨーロッパでの流行とは似ても似つかない怪しげなもので、よくよく調べてみると、アフリカでの流行は純粋なでっち上げの可能性が高いのです」
 この不思議な病気の症状が多岐にわたり、WHOのエイズに関する記述が国境によって2種類に分かれていることを考えると、疑問は増幅するばかりだ。

 2003年、エイズ活動家のクリスティン・マジョーレは、ドキュメンタリー作家にこう語った。

1993年、この国では、エイズ患者数が一夜にして倍増する定義を採用しました。その理由のひとつは、初めて、病気ではなく症状もない人をエイズ患者としてカウントし始めたからです。 T細胞数が少なかった、ただそれだけなのです。 T細胞は1日のうちで100%変動するものなのです。その年にはT細胞数の低さをもとにカウントしたので、一夜にしてエイズ患者数が倍増しました。

 このように国によって診断が左右される病気は他にない。

相関関係は因果関係ではない

  重大な記者会見から1ヵ月がたった1984年5月、ロバート・ギャロはついにHIVを「発見した」とする論文を「サイエンス」誌に発表した。 また、エイズを患う数名のゲイの男性にHIVの痕跡を認めたとするレポートをまとめ、HIVとエイズを結びつけた根拠を詳述した。

 そのレポートでは、エイズ患者とエイズのリスクが高い人から(HIVが) 「検出され、分離される頻度が高い」と報告されていた。ギャロが調べた患者の血液サンプルにHIVのかすかな痕跡が見られたのは、72人のエイズ患者のうち26人でしかなく、これを知って科学者たちは愕然とした。
そんな薄弱な結果が、HIVをエイズの原因だと主張する唯一の根拠だった。 相関関係が因果関係の証明にはならないことは公理だ。

 ギャロは安易にエイズの原因を特定したが、エイズ患者にはもっと高い頻度で、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス 水痘帯状疱疹ウイルスなど、多くのウイルスが見つかるのだ。

1年前の1983年、リュック・モンタニエ博士も「サイエンス」誌に論文を発表した。 モンタニエは誠実な人柄で知られる聡明な科学者で、彼が検査した44人のエイズ患者のうち72%の人のリンパ節にHIVの存在を見出していた。
 モンタニエは、この弱い相関関係を根拠とするには、常に慎重だった。1992年には早くも、モンタニエは「HIVはエイズ発症に必要ではあるが、これを補助する要因がなければ、原因としては十分ではない」と「ネイチャー」誌で語っている。

蔓延するウイルス病にエイズのレッテルを貼る

 従来、病気は症状から診断された。だが、ファウチ博士は、エイズの診断では健康な人とそうでない人の血液検査を行うように医師に勧めた。

 エイズ危機が起きる前の10年間にPCRや解像度の高い電子顕微鏡などの新しい技術が次々と登場し、以前には科学者に知られていなかった何百万ものウイルスが激しく降り注ぎ、新たな窓が開かれた。

 分子遺伝学は生命科学に革命を起こしたのみならず、科学を途方もない利益を生む学問にした。
富や名声が誘因となり、ウイルス学においては混沌とした革命に火がついた。 志の高い若き博士たちは新たに見つかった微生物を昔からある病気の原因とするべく研究に邁進した。 そうした因果関係が構築できれば、若い生物学者も製薬会社も進取の成果が出せたとして一儲けできるからだ。

 新しい機器の導入によって、科学は高価になった。高価になりすぎて、大手製薬会社や大国の政府からの資金援助なしには研究ができないほどだった。研究者たちは、研究室を維持して繁栄させるために、次第にトニー・ファウチや製薬会社に頼るようになった。新しい研究には、まず長期的な資金が必要だった。 研究者は融資を受け、ファウチ博士と製薬会社は新発見の所有権を得た。研究者と研究機関とバイオ企業の利害が一致したのだ。

 資金が研究の方向性を決め、その結論を歪めてしまうことがあまりにも多かった。

 2001年には、科学の規律が急速に低下しないかと危機感を強めた1人の著名なウイルス学者が、「サイエンス」誌で先端技術を専門とする若い世代の研究者に向けて訴えた。 新発見のウイルスがどのように病気を引き起こすのか、そのメカニズムを理解せずに、相関関係だけでウイルスを病気の原因とするのはおかしいと、老科学者は若い世代に警告した。

 研究者がHIVを検出するために用いた特殊な検査は、独自の方法でさらなる欠陥があった。

 HIVに感染しているかどうか、つまりエイズかどうかを判断するために医師が用いる最重要な診断ツールは、以下のとおりだ。

1. HIV抗体検査
2. PCRによるウイルス量試験
3. ヘルバー細胞(T細胞そのもの、あるいはCD4による)のカウント

欠陥だらけの抗体検査

 ギャロは、自分で発明した「抗体」検査で、何人かのゲイ男性からHIVウイルスの存在を検出した。 しかし、彼の検査結果は実際に何を証明したのだろうか?
 ギャロの抗体検査の基になっているのは、免疫系は外来ウイルスと戦うとき、そのウイルスに特異抗体が産生されるという説だ。その特異な抗体を認識する検査法を使用可能とするためには、発明者は標的ウイルスを分離し、それをシャーレの中でヒトの細胞に曝露し、ウイルスに反応する特異な抗体を生成させなければならない。
 ところが、ギャロや他の研究者がHIVを分離できたかどうかは不明なのだ。彼はエイズ患者から採取した血液サンプルに大量の抗体が検出されたため、それがHIV抗体であるとあっさり信じ込んでしまった。
 遺伝学者によれば、これらの抗体は結核やヘルペス、他の多くの病原性疾患に関連している可能性があり、免疫システムが崩壊したときに増加するものだという。確かに、ギャロのHIV抗体検査は発熱している人、妊婦、結核に感染したことがある人にも反応する。

 抗体検査メーカーはこの欠点を認識しており、 添付文書に注意書きを記載している。「ヒト血液中のHIV-1およびHIV-2に対する抗体の有無を確定するための公認の基準は存在しない」

 最後に、最も重要なのは、ギャロのHIV抗体検査が従来の免疫学を覆すものだったという点である。医学の歴史上、抗体価が高いのは、その人がすでに病原体と戦い、病気から守られていることを意味していた。 他のすべてのウイルス性疾患では、抗体の存在は、その病気に対する免疫があるという歓迎されるシグナルである。
 しかし、ギャロとファウチ博士の治験責任医師は、突如として、抗体検査が陽性となれば死の宣告だと人々に告げ始めた。
 なぜ、そうなるのだろう? ファウチ博士はこの不可解なパラドックスについて、これまで一度も説明していない。

PCR検査の弱点

PCR (ポリメラーゼ連鎖反応)は、体内で実際に生きているウイルスではなく、HIVのものと考えられるDNAの断片を増幅して測定する。 しかし、これらの断片が本物のHIVのDNAから増幅されたものであっても、死んだウイルスに由来する可能性がある。さらには、ずっと前に死んだウイルスで、HIVと遺伝的に類似したものという場合もある。 数十年前にできた抗体によって抑制された感染の名残りかもしれない。
「HIV検査は有効性が確認されていない。 検査でわかるのは感染そのものではなく、ウイルス粒子だ。 検出されたウイルスは、数百万人に存在する可能性がある」と言ったのはキャリー・マリスだ。

 1980年代後半に、辛辣なマリスは、ギャロとファウチを激しく批判、いや、むしろ嘲笑した。
「PCR法では、完全なウイルスではなく、遺伝子(DNA、RNA) のごくわずかな痕跡が検出されることがあり、それが特定のウイルスから来たものか、他の混在物から来たものかまでは、わからない」とマリスは付け加えた。

 分子生物学教授で1978年にロベルト・コッホ賞を受賞したハインツ・ルートヴィヒ・ゼンガーは、「HIVは一度も分離されていない。それゆえ、HIVの存在を証明する基準として、その核酸をPCRウイルス量試験に使用できない」とのコメントを1999年の『アナルズ・オブ・インターナル・メディシン (Annals of Internal Medicine)』誌に掲載された論文(中略)に残した。
 以上より、すべてのPCRキットに、「このキットをHIV感染の検出の唯一の根拠として使用しないでください」といったメーカーの警告表示があるのは当然だ。

CD4検査も信用できない

 CD4陽性「ヘルパーT細胞」を数える検査でも同様の弱点に悩まされている。
 エイズ専門医は、CD4細胞数の少なさをエイズ診断の重要な指標として見ている。しかし、HIVのみがエイズの原因であるとする説の最重要原則、すなわち、HIVの感染によってCD4陽性ヘルパーT細胞が破壊される事例を確認した研究はひとつもない。
 さらに、すべてのエイズ研究の中で最も重要な1994年のコンコルド研究でさえ、ヘルパー細胞数によるエイズの診断検査に疑問を呈している。
問題は、不正確なことで有名な代用エンドポイント(訳注・臨床的効果を直接測定することが実際的でない場合に、その代わりとして用いられる評価項目)を使用している点だ。
多くの研究が懐疑論を補強している。そのひとつが1996年の論文 「Surrogate Endpoints inClinical Studies, Are We Being Misled?(臨床試験における代用エンドポイント我々は誤った方向に導かれているのか?)」だ。この論文では、HIV発症時のCD4陽性T細胞数は「コイン投げ」と同じくらい情報がない、つまりまったく意味がないと結論づけている。

HIVに感染していないエイズ

 HIVとエイズの仮説を批判する人々は、ギャロの理論の最も深い恥部として、必ず「コッホの原則」を挙げる。
 コッホの原則を 『The Journal of Investigative Dermatology』誌にまとめたジュリー・A・セグレは、次のように書いている。

もともと述べられたように、4つの基準がある。 (1) 健康な個体ではなく、病気の個体から微生物が検出されること、(2) 病気の個体から得た微生物が培養されること、(3) 培養された微生物を健康な個体に接種すると、病気が再現されること、最後に、(4) 接種して病気になった人から微生物が分離され、元の微生物に一致すること。コッホの原則は、1種の微生物がひとつの病気を引き起こすという科学界の合意基準を確立するうえで、極めて重要だ。

コッホの第一原則では、真に病原性のあるウイルスがその病気に苦しむすべての患者から大量に検出されることが条件だ。HIVとエイズの仮説はこの重要な基準を満たしていない。
 第一に、ギャロの主張では、採血したエイズ患者の半数以下からしかHIVウイルスは発見されていない。さらに、我々が現在エイズと呼んでいる30種類の病気はすべて、HIVに感染していない人にも起こっている。 
 実際、HIVが陰性でもエイズになることはよくある。もし、本当にHIVだけがエイズの原因なら、こうした状況は起こり得ない。

 ロバート・ギャロの歴史的な発表の直後から、全米の医師とCDCの職員は、CD4数が少なく、カリニ肺炎(ニューモシスチス肺炎)や免疫不全などのエイズ特有の病気を持ちながら、HIV検査で陰性とされた患者を診察し始めた。
そうした患者の多くは異性のパートナーを持つ白人女性だった。ファウチ博士とCDCはこの厄介な情報を秘密にしていた。

 1992年にアムステルダムで開催された国際エイズ会議の初日、『ニューズウィーク』誌の若い記者ジェフリー・カウリーは、HIVに感染していないエイズ患者が続出していると無邪気に報告した。 カウリーはその情報をファウチ博士の配下のエイズ研究者との静かな打ち解けた会話から得た。HIVに感染していないエイズ患者が相当数に上っていることに困惑していると、何人かの科学者がカウリーに打ち明けたのだ。
「患者は病気か瀕死状態で、そのほとんどが危険因子を持っている」と、カウリーは「ニューズウィーク』誌で報告した。 彼は、HIVに感染していない患者が、脳病変、それに伴う認知障害、ヘルペスウイルスの慢性的悪化、CD4細胞の枯渇、カリニ肺炎、免疫系の崩壊など、エイズに似た症状を呈した十数例について説明した。
「彼らにないものはHIVだ」
『ニューズウィーク』誌の記事は、タブーを打ち破った。会議参加者は、記事の発表をそれまで禁忌とされていた、HIVに感染していないエイズ患者について議論できるようになったシグナルとして受け止めた。

 ファウチ博士の締め付けから遠く離れたアムステルダムに集まった研究者たちが突然、 アメリカやヨーロッパ各地に存在するHIVに感染していないエイズ患者についての知見を語り始めたのである。

 公衆衛生当局、医師、研究者たちは、その事実を公にしなかったファウチ博士に憤慨した。エイズ患者を診ている多くの医師は、政府機関がHIVに感染していないエイズ患者について知らせなかったことに激怒した。

 「ニューヨーク・ネイティブ』紙のチャールズ・オルトレブは、「HIV陰性のエイズが慢性疲労症候群の患者にも発症している状況から、多くのウイルス専門家が、エイズと慢性疲労症候群は同じ神経免疫系の病気の一部ではないかとの疑念を強めている」とコメントした。

 HIVとエイズの関係について批判する不特定多数の人々 (ピーター・デューズバーグは別格だが)は、慢性疲労症候群とエイズはひとつの病気であり、どちらもHIVが原因ではないと主張していた。

 命取りになりそうなこの異論から衆目を逸らすため、ファウチ博士は、唾棄すべき慢性疲労症候群を「心身症」として扱えるように医学界の羅針盤を設定した。 ファウチ博士の指導に従って、 医師たちは慢性疲労症候群を「ヤッピー風邪」と名付け、プレッシャーのかかる会社勤めに適した遺伝子を持っていない女性たちの神経症状として位置づけた。

 1980年代に突然、エイズと慢性疲労症候群の大流行が足並みをそろえて女性たちを襲った。
 1992年9月6日の「ニューズウィーク』誌の記事で、ジェフリー・カウリーは「エイズか?慢性疲労か?」と尋ねている。 カウリーはこの記事で非難を浴びたが、 ファウチ博士の息のかかった治験責任医師の多くが内に秘めた疑念を口に出したにすぎない。彼らは「非HIVエイズ」は実際には慢性疲労症候群であり、慢性疲労症候群はHIV陰性で異性のパートナーがいる人に発症したエイズの単なる別名ではないか、と考えていた。

 ファウチ博士は厚かましくも、HIVに感染していないエイズという異常事態を説明するために、説明のつかないエイズの症例を新しい病気であると宣言した。

 この「新しい病気』が結局は慢性疲労症候群だという疑いを避けるために、新しい病気を「特発CD4陽性リンパ球減少症 (Gtfiopathic CD4+ lymphocytopenia)」と名付けた。
 しかし、彼の魔術師ぷりのせいで、誰もが何の疑問も持たずにそれを受け入れてしまった。

エイズを発症しないHIV

 また、コッホの第一原則では、疑われる病原体は病気の人にのみ存在し、健康な人には決して存在しないことも条件だ。
 PCRが広く普及してすぐ、病気の兆候のない何十万人ものHIV感染者が見つかり、HIVのみをエイズの原因とする説を愛好する人々を苛立たせた。
 ファウチ博士は当初、HIV感染者は2年以内にみなエイズで死亡すると予測した。その後、彼は感染者の平均余命を4年、8年と倍増させた。そして、後に悲劇となるこの話題について語るのをやめた。

 だが、そのような悲劇は起こっていない。実際、HIV陽性と判定された人の大多数は、何年も健康なままである。  

 ファウチ博士はまた、誰かが健康なHIV感染者数を調査することのないよう、予防策を精力的に講じている。 1996年7月、「ニューズディ』紙は、ファウチ博士が1600万ドルをかけた5年にわたるこの現象の研究を突然中止したと報じた。

ウイルスの分離にまつわる問題

 コッホの第二原則では、ウイルスは病気の個体から分離して純粋培養で増殖させることができるとされている。エティエンヌ・ド・ハーベンをはじめとする高名な科学者たちは、HIVは分離されたことも純粋培養で増殖されたこともないと主張した。モンタニエもギャロもこの欠点をたびたび認めている。

培養HIVでエイズを誘発できない

コッホの第三原則は、培養した微生物を健康な個体に導入するとき、病気が引き起こされなくてはならないというものだ。 デューズバーグらは、HIVはこの原則を完全には証明していないと、今に至るまで主張している。

1984年にモンタニエはこう認めた。「HIVがエイズを引き起こすと証明する唯一の方法は、動物モデルでこれを示すことである」

健康なヒトにHIVを注射してみた者はいないが、科学者はあらゆる種類のマウス、ラット、サル、チンパンジーに注射した。しかし、いずれもヒトのエイズに似た症状は観察されなかった。培養したHIVを健康な実験動物に接種してエイズを誘発させた人はまだいない。

病原体を再分離できない

 コッホの第四原則では、微生物を接種されて発症した宿主から再度その微生物が分離されなければならない。
デューズバーグは、HIVとエイズの関係の推進派がコッホの原則を満たそうと精力的に努力したが、すべて失敗に終わったと主張している。

 1996年に公開されたジャメル・タヒ監督のドキュメンタリー映画 『AIDS-The Doubt (エイズーその疑惑)」では、リュック・モンタニエ教授が、何年たっても誰も成功しなかったと認めた。
「科学的な証明はないのです」
 だが、結果としてモンタニエは「HIVがエイズを引き起こす」と結論づけた。

ウイルス量と病気は必ずしも一致しない

 ギャロの仮説にはもうひとつ厄介な点がある。ウイルス量の問題だ。
 細菌またはウイルスによる病気の大半は、病原体量が増加すれば、病気が進行し、患者の健康は衰える。もし、HIVがエイズの唯一の原因であるならば、身体的な悪化が進むにつれてウイルス量が増加するのだから、それを測定して追跡できるはずだ。 ヘルペス、インフルエンザ、天然痘など、古くから知られているウイルスは、感染した組織の1立方ミリメートルあたり数千から数百万という非常に多いウイルス量がなければ病気を引き起こさない。
 それに引き換え、HIVは病気の末期にあるエイズ患者でもほとんど見つからない。
 さらに不可解なのだが、ファウチ博士もギャロも、HIVのウイルス量が感染直後の数日間に最大となるという事実について、これまで信頼できる説明をしてこなかった。論理的には、ウイルスが壊滅的な病気を引き起こす可能性が最も高いのはこの時期であろう。しかし、エイズの症状が現れるのは、ほとんどが数十年後(ウイルスへの曝露後平均20年)であり、ウイルス量がごく少なくなった時期だ。

 『ランセット』誌に、毒性の強いエイズ治療薬を組み合わせて服用している人々にとって、いわゆる「ウイルス量」の減少が「死亡率の減少につながらない」ことを示す研究成果が発表された。

 1995年から2003年にかけて、欧米の12カ所の施設で、治療歴のあるHIV陽性者約2万2000人を対象に、ファウチ博士の抗ウイルス剤の効果の追跡調査が実施された。この種のものとしては最大かつ最長の多施設共同研究だ。この研究では、HIV治療薬が寿命を延ばし、健康を増進させるという一般的な主張を棄却している。

本当に致命的な病気を引き起こすのか?

 同じように謎なのは、捕らえどころがなく、数が少なくて発見困難なウイルスが、なぜこれほどまでに殺戮を繰り返せるのかという問題だ。

 もし、HIVが感染を引き起こしているのであれば、「人が『感染している』かどうかを『診断する』ために、HIVの断片を10億倍に増やすPCRという機械は必要ないでしょう」とピーター・デューズバーグは私に言った。
 ローリツェンは、「HIVは10万個に1個というわずかな数の細胞にしか感染せず、その上、感染した細胞を殺すこともない」と主張する。
 HIVが感染する細胞は非常に少ないとなれば、その少数の感染した細胞を除去するために、ファウチ博士が開発したアジドチミジンなどの抗ウイルス薬の投与によって、多くの健康なT細胞を殺してしまっていることを意味する。

 さらに、HIVが実際にT細胞を殺したというエビデンスは見つかっていない。HIVはむしろ、T細胞と相性がよいように見える。

 HIVの正統派に対して率直な異議を強く唱えるオーストラリア人がいる。パース・グループに所属する生物学者のエレニ・パパドプロスとバレンダー・ターナー医師だ。パパドプロスとターナーは、ギャロがHIVと特定した粒子はレトロウイルスですらなく、むしろ完全に人体の内部から生成される一群の細胞残骸であると確信している。

 イギリスとドイツの研究チームは2006年に、「世界で最も致死性の高いウイルスの構造がついに解読された」「かつてない3D品質でHIVを撮影することに成功した」と誇らしげに報告した。
しかし、独立した科学者がこの論文を検証した結果、映された画像は、大きさも形もバラバラな、何の特徴もない破片の集塊のようだった。この研究は、ウェルカム・トラストの資金提供により行われた。ウェルカム・トラストは英国版の、NIAIDとビル&メリンダ・ゲイツ財団をハイブリッド化したような団体で、英国の製薬会社による利益追求を促進する研究に資金を提供している。

ファーの法則で感染拡大を予測できる

 ウィリアム・ファーはイギリスの微生物学者であり、新しいウイルスが病気になっていない人の間でどのように広がるかを予測する方法を考案した。
 ファーによれば、「新たな」 ウイルスの流行はいずれも同じ堅牢な法則に従っており、最初の感染からせいぜい数週間で指数関数的に広がり、その後、感染できる宿主がいなくなるにつれて指数関数的に減少するという。
 HIVが新種のウイルスであるというファウチ博士の仮説を受け入れた科学者たちは、当初、未感染の人々の間における破滅的な広がりを正確に予測できると確信していた。
 しかし、これらの予測はすべて間違っていた。毎年末に、HIVによる死者数はがっかりするほど少ないため、CDCは予測を大幅に下方修正せざるを得なくなった。CDCは1986年から2019年の間、HIVに感染したアメリカ人の数を毎年推計しているが、感染者が急増するどころか、約100万人とほぼ一定である。
 広く予測されていた人口減少はまったく起きていない。

1985年以降のアメリカにおけるエイズの広がり

 欧米では、エイズはもともと同性愛の男性や麻薬中毒者が中心であり、そこから外れる患者はいなかった。 患者群は限定されるわけだが、エイズは歴史上のあらゆる感染症や性感染症のパターンに反している。

 定義上、リスクグループ(ドラッグを常用するゲイや中毒性の高い違法薬物に依存して頻繁に使用する人々)から外れたエイズは存在し得ない。特にHIVについては、ファウチ博士を信奉する者たちが主張するように、これは「これまで存在した中で最も感染力の強いウイルス」であるはずだからだ。
 仮にそうだとすると、このウイルスは性的接触を介して女性にも広がる機会は多く、世界中のすべての人々に等しく影響を与えるはずだが、そうなっていないのは不可解である。娼婦にはエイズは広がっていない。ただし、点滴などで薬剤を静脈内に直接投与された女性たちにはエイズが生じている。
 人類が知っているすべての伝染病が確実にたどる経過がある。エイズがその経過に従わないのは、HIVが「病気の原因ではなく、たまたま居合わせただけのウイルス」との証明に他ならないとデューズバーグは言う。

渦巻く異論の中での合意の強制

 マスコミはとうの昔に異議を唱える人々の声を報道しなくなった。

 1987年に、生理学者でマッカーサー・フェロー受賞者のロバート・ルート=バーンスタインは、HIVがエイズ発症に不可欠だとも唯一の原因だとも考えていないと、ABCの通信員ジョン・ホッケンベリーに語った。「私に露骨な話をする人がいます。 「HIVに感染していなくてもエイズを発症する、HIVのみではエイズを発症しないだろう、おそらく、他の要因が関係している、というあなたの視点はごもっともですが、私としましては、そんな話をして100万ドルの研究資金を逃すリスクを負うつもりはありません….….』と」

 私はどちらかの味方につくことを目的としていないし、ましてや数十年来解決に至らなかった論争に決着をつけようとも思っていない。どちらかと言えば、幾ばくかの人に知っておいてほしいことを共有しているつもりだ。
 それは論争が存在し、その論争を解決するための研究をトニー・ファチが認めていないという実態だ。
 何年もかけて、ファウチ博士は科学的な論争をゆがめ、科学の定説を似非宗教の教義に変換し、異端審問のようなやり方で異議を唱える者を罰して黙らせた。  

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